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ToHeart and Kanon CrossOver Story



Schnee Traum


幕間 1月17日

by あるごる


 時は少々遡る。
 浩之が旅立った街の一角を占める、壮麗な豪邸。
 日本で五本の指に入る大富豪、来栖川家の邸宅である。
 その屋上に、一つの影があった。
 
 
 
 
 その日の天気は悪かった。
 蒼鉛色の空からは、雪が間断なく降ってきている。
 彼女は太陽があるはずの方向に、背を向けて立っていた。
 手には魔術の道具らしき、印(ルーン)のついたフーチがある。
 その目は、遠い空を見つめている様であった。
「芹香お嬢様、ここに居られたのですか」
 背後の入り口から、白髪の、体格のいい執事が現れた。
「こんなところにいては風邪を召されてしまいます、ささ、御戻り下さいませ」
 薄く積もり出した雪に足跡をつけつつ執事は近づく。
 しかし。
 芹香は、動かなかった。
 ただ黙って、重い空を見続けている。
「お嬢様が風邪を召されては、私どもが大旦那様に叱られてしまいます、お戻り下さいませ」
「………」
「お嬢様?」
「北が、荒れています…」
 ぽつりと、芹香は漏らした。
「は?」
「セバスチャン」
「はっ!?」
 執事セバスチャンは驚愕した。
 芹香が、誰にでも聞こえる声で、喋ったのだ。
 彼の長い記憶の中でも、それはいかほどぶりのことであっただろうか。
「今から、飛行機を一機チャーターできますか」
 唐突な願いに、彼は2度目の衝撃を受けた。
 しかし驚いてばかりはいられない。彼は執事なのだ。主人の要求は、いかなるものでも叶えるよう働かねばならない。
「は……ははっ、直ちに!」
「お願いします……」
 言葉を残すと、セバスチャンは場から走り去る。
「姉さん…?」
 入れ違いにやってきた綾香も、予想外の事態にあからさまに驚いていた。
 姉の真意が、全く掴めていないようだった。
「一体、どうしたの…?」
 そう言い出すのがやっとだった。
 
 
 
 
 屋上を、凍てついた風が駆けた。
 風は降り注ぐ雪の方向を、垂直から水平へと変える。
 地に積もった湿り気の多い雪さえ、巻き上げた。
 芹香の艶やかな黒髪が、舞う。
 
 
「……浩之さん…」
 
 
 
 

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