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Original Novel
AOi-K Presents



死という沈黙の中で・・・・






 ザクッ!!
 
体に深深と異物が入って来るのがはっきり分かった。
そして俺は、そのまま地面に崩れ落ちた。
 
大量の液体が体からあふれてくる。
 
 ・・・・・・・血液だ・・・・・・・・
 
周囲が乾燥してきた。
おそらく城に火を放たれたのだ。
 
 
(・・・・・これが、死か・・・)
 
 
剣で斬られたはずの体に、不思議と痛みはなかった。
あるのは言い様のない気だるさと、そして後悔。
 
 
 (後悔だと・・・・なぜ?)
 
 
思えば、この城に騎士志願して7年。
表向きでも裏でも、数え切れないほどの殺しをした。
 
いつしか血の匂いで、殺しに微塵のためらいも無くなっていた。
相手を殺す覚悟をしたとき、殺される覚悟もできていたはず・・・
 
 
 
「・・・・・・ろせ。殺せ!!」
すでに取り囲んだ反乱農奴の一人はまだ抵抗を続けていた。
そして当時まだ新米だった俺は、切っ先をその男に向け・・・
「う・・・・・・ああああああああああああああっっ!!」
 
 ずっ・・・・・・・・・・・・
 
手にした剣から伝わってくる、肉を貫くイヤな感触。
そして、剣を引き抜いたときにした血臭と、服に付着したどろりとした返り血・・
 
 
そのときの感触を忘れる事はない。
そして、そのときから・・・・・・俺は全てから逃げ出した・・・・・・・・
 
 
 
 (全て・・・・・?)
 
 
 
 (全てって・・・・なんだ・・・・?)
 
 
 
・・・・思い出した・・・・・・
そうか・・・あの夜・・・
 
 
「どうして出て行くの!!」
「・・・・・・・」
俺は旅の準備を済ませ、フェリアの家から黙って出て行くところだった。
「俺は・・・・強くなりたい」
「だからどうして出て行くのよ!!」
フェリアの声がいっそう大きくなる。
「・・・・俺じゃ、君は守れない」
そのころの俺は、田舎から出てきたばかりで、にわか仕込みの剣術で何度か
フェリアを危険な目に合わせていた。
「いいの!!」
俺はフェリアの声から、泣いているのがはっきり分かった。背を向けているにもかかわらず。
「あなたがいないと・・・・・・・・私、また一人に・・・・・・」
心が重くなった。
しかしここで振り向けば、俺はまたズルズルと甘い道に逆戻りだ。
「こっちを向いて・・・・・・・・お願い・・・・・・」
涙で声の出なくなったフェリアに、俺は近づき、目と目を合わせた。
「・・・・・・・!!」
言葉の代わりに、俺は軽く唇を重ねた。
 
そして俺は再び背を向けて、こう言った。
「必ず戻ってくる・・・・・・自分と、守りたい君をこの手で守る力を手にして・・・」
 
・・・・そんな事忘れていた。
 
世間はそんな戯言を言っていられる余裕はなくなった。
戦乱の世の中となり、訓練を受けた兵はひたすら殺戮を繰り返すよう命じられた。
守りたい物を守るための剣は、他人の守る物をただ破壊していくだけ・・・・
そして俺はいつも、血の匂いの中にいる・・・
 
 
 
 死んでもいいはずなのに・・・・・・
 
  ・・・・・・・・・シニタクナイ・・・・・・・・・?
 
 そうだ・・・・・死ねない・・・・・・・
 
  ・・・・・・・・・・アレダケコロシテ、ジブンハ・・・・・・・?
 
 そうだ・・・・・絶対に・・・・・まだ、守る物が・・・・・・・
 
 
 
 
意識を失いかけたとき、頭上から光が降りてきたのが、はっきり分かる。
 
 (光・・・?)
 
答えはない。
 
 (もう目は見えないはず・・・・・)
 
その答えもない。
 
 (暖かい・・・・・・・)
 
いつか感じた・・・・
 
 (懐かしい・・・・・・心地いい・・・・・)
 
氷の体をやさしく包む。
 
 (フェリア・・・・・なのか・・・・・?)
      
答えはない。
 
  (・・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・)
 
 
 
 
(・・・・・・・・・・・・・・・まだ、意識がある・・・生きている・・・?)
 
(人の気配・・・)
 
 
「おい、この男まだ息があるぞ!!」
「早く医者に!!」
 
 
 
(・・・・・・・・フェリア・・・・・・・・)
 
                            −END−



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