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Original Novel AOi-K Presents



forbidden heart




始末書&レポート



廃工場の重い鉄の扉が突然、爆音とともに崩れ、もうもうと土煙が上がる。
「な、何だ?」
中にいるはずのない技師達が一同、声を上げる。
「・・・今日もバイブレーションの調子は良好、と」
扉を爆破した男が、マントのようなコートをなびかせ、巨大な剣を一降りした。
「格好つけてる場合か、リック」
一緒にいた、髪の長い美女が冷静に言う。
「つれないなあ、レイチェル」
軽く肩をすくめるリックに小さく「馬鹿」とだけ言い、レイチェルは辺りを見回した。
工場には十数体のアンドロイドが並べられている。
「どうやら、署の読みは的中のようだ」
レイチェルは懐から黒い手帳と一枚の紙を取り出し、技師達に向かって突き出した。
「私たちは『ヴィシュヌ』の捜査官だ。今からこの工場を違法シールド売買所の疑いで強制捜査する!」

シールドとは人型アンドロイドの総称である。
外見、性能ともに人間とほとんど変わらず、識別法は右手の甲に書かれた『フォビドゥンハート』のみだ。
丸の中に斜線の引かれたハートマーク。開発当時、シールドが労働力として使われた象徴だ。
『第二の人間』であるシールドはその利点を悪用され、兵器として使用される事件が後を絶たない。
『ヴィシュヌ』はその違法シールドの回収を任務とした特務機関である。

「全員動くなよ・・・って言う前に動くかフツー!」
すでに技師達は数体の戦闘用シールドをブートさせていた。
リックは再びバイブレーションブレードを構え、レイチェルも腰から長銃を抜いた。
「これは・・・やるしかないのか?」
「仕方がないな・・・」
離れた距離からシールドが剣を構えて向かってくる。
「来るぞ!」

キインッ!

単色のボディスーツを身につけたシールドが剣で切りつけてきた。
リックはV・Bで難なく受け止める。
シールドはものすごい力を剣にかけてくる。
目と目があった瞬間、リックはシールドの目に感情のないことがすぐ分かった。
「チッ・・・エモーションシステムが取り外されてるってことは、話し合いは不可能か!」

ドッ!

そのままの体制でリックはシールドの鳩尾に蹴りを入れる。

ザグッ!!

一瞬よろめいたシールドの肩口めがけ、リックは剣を振り下ろした。
体を両断されたシールドはすでに機能を停止していた。
「悪いな・・・」
それだけ言い、リックは再びV・Bを構え、次々と襲い掛かるシールドを斬りふせた。
レイチェルは的確な銃さばきで遠距離のシールドの両手両足を打ち抜き、行動不能としていった。
しかし、壊しても壊してもシールド達は次々に現れる。
当然である。
ここはシールド密売所。戦闘用シールドは倉庫にごまんとあるだろうし、二人が戦っている間に技師達は次々に
シールドをブートさせてくるからだ。

「・・・応援が遅いと全体相手をする必要が有りそうだ・・・」
少し息を切らせ、レイチェルが言う。
「マジかよ・・・また・・・課長に・・・どやされるな・・・」
レイチェルの後方支援があるとはいえ、リックは最前線で戦っているため、バテバテである。

 
―― 小一時間後 ―

 
「バカものっ!」
案の定、二人は『ヴィシュヌ』検挙課課長に現場で怒鳴られることとなった。
年は30過ぎで、いつも気さくな人柄も仕事となるとやはり違う。

結局、応援が来たのはあれから40分も後のことであった。
と言っても応援が遅れたのではなく、二人が踏み込むのが早すぎたのだ。
ちゃんと指令書にリックが目を通していなかったのだ。

「証拠となるはずのシールドを破壊してどうするんだ、ええ!」
所長は工場内に散乱するシールドの残骸を見回して言う。
「全く・・・たった二人で戦闘用シールド50体を、たいした負傷もなく破壊するとは・・・恐ろしい・・・」
「全機エモーションシステムが取り外され説得にも応じず、技師達は逃走、やむを得ない状況でした」
レイチェルがよどみなく言う。
「だから・・・指令書通りにすればそんな状況にならなかっただろう・・・」
「・・・申し訳ありません・・・私も指令書に目を通していれば・・・」
所長は小さくため息を吐いた。
「・・・とにかく、作戦は一応解決だ。逃走中の技師の75%は捕縛、流通ルートに関する書類も手に入ったしな」
「え・・・じゃ成功ですか?よかった・・・今回は始末書・・・」
「始末書はたっぷり書いてもらうぞ」
浮かれるリックに所長は目をつぶって言う。
「えー・・・そんなぁ・・・」
「当然だ。オマケとしてシールドと戦ったことについてのレポート100枚もつけてやろう」
所長はレイチェルのほうを向く。
「無論、レイチェルにもな」
「わ、私も!?」
「それじゃ、私は事後処理があるのでね」
そう言って所長は車のドアを開けた。
「あ、言い忘れたが、期限は8日間、きちんと提出しないと降給処分にするから覚悟しろ」
笑いながら所長は車に乗り込み、行ってしまった。

「リック・・・」
レイチェルはうつむき、小刻みに震えている。
「どうした?何か面白いことでもあったのか・・・ゲッ!」
レイチェルは短銃を抜き、銃口をリックに向ける。
「貴様ーーっ!殺してやるーっ!!」
「ち、ちょっと待てーっ!!銃はよせって!!」
「問答無用!!」
「だーっ!!悪かったってー!!」

 
 
−とぅびぃこんてにゅうど−



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