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Doukeshi Original Novel


飛べない鳥たち


プロローグ

by 道化師




僕は、「フツウ」の人間だったと思う。

幼稚園、可愛らしく子供びた仕草が似合いすぎるぐらいの演技でもしているかのような幼児で、小学校はテストはいつも100点、先生にも褒められるのもしょっちゅうあった。中学校、クラスの中でも人当たりがよく、頼られることも多かった。―――そして今高校生になる。
言ってしまえば無難でまともに「らしく」成長した。僕、なんて言いかたよりも私は、とか俺は、の方がしっくりくるかもしれない。

でも、違う。

僕は、まだ子供なんだ。なりたいものがある。「普通」はイヤだったんだ、一人で何処かに逃げ出して行きたくなる。それで、思ったんだ。
何か、特殊な力が欲しい―――と。ゲームや小説、映画の主人公ってのは皆過去を持ち、特殊な力が備わった上で、信じられないような生き方をしている。僕もそうしたい。超能力とか、霊能力なんて言った嘘っぱちな力じゃなく、本当にれっきとした『能力』が欲しいんだ。

そんなこと言ったって一笑されるだけだろうし、誰にも言う気はない。あくまで僕の勘なんだが、僕にはその資格があると思うんだ。選ばれた、と言ったら言い過ぎだろうか? でも、先が見えているんだ。僕は、特別になりたいし、なれるだろうということを。

だから、願うんだ。力が欲しい―――全てを変えてしまうぐらいの能力が欲しい。

いつか、手に入るんだろうか? 





私は、自分を認めていない。……認めたくない。

だって、どうしようもなく、『女』だから。女の子だから、とか女性として、だとか皆は勝手なことばかり。私がどう思っているのかも知らないで。自分の考えすら持たない、可愛いだとか綺麗だとかどうでもいい容姿で競ったり、仲間と居ることで安心してたり、弱弱しい上に助けを待っているだけじゃない。

そんなこと言ったことはないけれど、常に「つまらねぇ」って思ってるから女の子の友人なんて全然できなかったけど。男の子との友達が多かったのはそれはそれでいいんだけど、男の子も何考えてるか知ってる? 分かるんだよ、そんなまるで『女』を見る目をしていれば。
何? 誰かが可愛いとか付き合いたいとか言うわけ? ………冗談じゃないっ。そんな目で見られたって気持ち悪いだけ。

女として見るなよ、見られたくないんだよ。だから、私は男になりたいんだ。別に、性転換したいとか、そういう意味じゃない。ただ言ってみればもし産まれるとき性別が選べるのなら、男に生まれたかったなあってことなんだ。それが今まで生きてきた中での私的結論。

容姿なんてどうでもいいよ、性格なんて適当でいい。私は女としての自分を認めたくないだけだから。

何ていうか、『女』なんてない『ヒト』になりたいよ。





僕らは、僕らでない、何かになりたい―――。



平成16年、遅咲きの桜に涼しげな風が吹く、春。葉桜でもなく、八重桜でもなく、山桜でもなく、一般に普通に平凡に桜と呼ばれるソメイヨシノが満開に咲く頃、ここ霞ヶ丘高校でも形式どおりの入学式が行われていた。
県内でも有数の進学校でもあり、一定値の偏差値をクリアした生徒が集められている。特に身の無い話を聞きながら新しい制服に袖を通すことで生徒らは自分たちが高校生になったのだと言うことを実感する。

入学式も滞りなく終了し、ここ機Aクラスでもまだ緊張感が拭えない中、担当教官の早良崎が姿を現す。

お決まりの生徒の自己紹介、簡単なガイダンスが行われる中、彼―――兵藤慎一(ひょうどう しんいち)と、彼女―――絹崎亜矢(きぬさき あや)はどこか浮いていて、つまらなさそうに眺めていた。彼らはまるで、丁度今の季節にぽっかりと浮かぶ孤独な雲の欠片のように、この空間内に浮いているのだ。

これが、二人の物語の始まりとなっている。




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