エピローグ

 

 

「ここかな?」

 オフィス街の外れにある、人のよりつかなそうな廃ビル郡の中に、そのビルはひっそりと建っていた。

 3階の窓に『羽佐間探偵事務所』とある。

「間違い無いわ!」

 なぜか拳を握って気合を入れる美奈。まるで道場破りかなんかだ。

 あれから一週間が過ぎた。

 事件は、連続誘拐殺人犯が、警官隊と争って射殺されたことになって、一応の決着を見る。

 美奈は、あの時の記憶があいまいで、『あの犯人が口からなんか出したような気がするんだけど、その辺から思い出せないのよね〜』とぼやいていた。

 しかし、事件の真相を話すと、さすがに泣き崩れた。

 いや、本当の真相は話していない。話せない。

 彼女は検査のため少し入院したが、特に怪我もなかったので今は学校に通っている。

……いつも通りとはいかないが。

 事件のあと、浦木は羽佐間から『真相』を聞いた。

『俺とお前は人間じゃない』

 単刀直輸入に言われてしまった。

『妖怪、悪魔、ダークザイド……色々呼び方はあるが、俺達は『獣魔』と呼ばれる存在だ』

 なんとなくだが理解した。世界の伝承やおとぎばなしに出てくる怪物とかは、その獣魔とやらのことなのだと。

『飲みこみが早いな。お前の場合は、おそらく先祖の中に龍神の血が入った事による覚醒遺伝だろう。そして、お前が倒したあのクモ男……あいつは『妖魔』の類だ』

 どういう違いがあるのだろう。

『生物としては、特に違いは無い。ただ、『人間』側か、そうでないかの違いだ。やつら妖魔は、人間を対等の存在としていない』

 話によると、人間の常識では説明の付かない事件なんかは、妖魔が起こしているらしい。そして、獣魔はそれから人間を守っているのだと。

『お前にはまだ選択の余地がある。このまま獣魔である事を忘れ、ただの高校生として生きるか。それとも……』

 少し考える時間をもらって、その日は別れた。

 家に帰ってから、布団の中で、もう一度、泣いた。

 2日ほど学校を休んだが、立ち止まっていてもなにも変わらない事に思い当たる。

 そんな事は、弓も天田も望まないだろう。

 そして事件から一週間。羽佐間のもとに向かうというと、美奈が強引についてきた。

「計画通り、助手にしてもらうのよ!」

 といきまいている。一応、先日のお礼をしに行くという建て前なのだが。

 何かしていないと、辛いのかもしれない。

 あれから一度も映研にはいっていない。もう少し、時間が必要だろう。

……あそこは、思い出が在り過ぎる……

 そう思うと、浦木は美奈を強く止められなかった。

「さあ、いきましょ!」

 前と同じように明るくふるまう美奈。そんな彼女を見ると、自分が守った事を誇らしく感じるのだった。

『このまま獣魔である事を忘れ、ただの高校生として生きるか。それとも……』

(ボクには守りたいものが在る。守る力が在る。なら、答は決まっている)

 浦木達は、新しい一歩を踏み出した……