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Studio B-ROOM 雛鳥の囀



月の雫と太陽の欠片




by まろびー



 滔々と毎日は過ぎていく。
 横で寝ていた女が、ふと、口を開いた。
 「明日は町に行きます。」
 私は、何を言うでもなく彼女の瞳を見る。唯一の安息日に何をしようと彼女の勝手なのだから。
 「ひとに会うのです。」
 そう彼女は言った。私の心を見据える様に。
 「酒場で、待ち合わせをしています。」
 私の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。まあ、良く知っている顔だ。
 「そう、そのひとです。」
 彼女はそう言うと私の腕の中で眼を閉じた。話は終わりと言うことか。
 しかし、心の中まで見透かされているのか?

 翌日、夕方頃彼女は出かけて行った。
 しばらくして、私は他の働く者の一人を呼んだ。すると、赤い髪の女が現れた。
 「お呼びでしょうか?」と彼女は短く聞いてきた。
 「少し、用事が出来た。町へ行って来る。2、3時間程だ。後を頼むぞ。」
 「かしこまりました。お気を付けて。」と答えると彼女は下がって行った。

 町へ来ると酒場へ向かった。自分でも何をしているのかわからないのだが・・・。

 夜の帳が降りれば、そこは庶民達の楽しみの場の一つだろう。
 酒場とはそんな所だ。
 酒場を覗く。いつもの看板娘が必死で働いている。・・・主がいないな?
 店に入るのを躊躇った私は、川沿いの道を歩く事にした。
 水辺を涼風がぬけて行く。
 先の方のベンチに人影を認めて私は立ち止まった。
 宵の口の薄暗さの中でベンチには二人の女が川の方を向いて座っている。

 ・・・・・声が聞こえてくる。風に乗って。

 「久しぶりだね。あんたと会うのも。」
 「二年ぶりですね。」
 「そっちは変わらない?・・・あの人も変わらなかったけど。」
 「・・・・私は私ですから。」
 「あいかわらず、だけど、笑える様になっただけましか?」
 「あなたも、あまり変わりない様ですね?・・・でもどうして?」
 「この町に帰ってきたのかって?いうんでしょあんたは?」
 「ええ。」
 「どうしてだとおもう?」
 「ご主人が出来たからとは聞きましたが。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・お姫様になり損ねたからよ。」

 風が舞って、沈黙が訪れる。



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