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Studio B-ROOM 雛鳥の囀



月の雫と太陽の欠片




by まろびー



よく通る声が風に乗って伝わってくる。
「普通じゃない生活をしていた私達には昼のイメージよりも夜のイメージの方がしっくり来てたって事なんだろうね。」
「・・・それでも、あの人がいれば夜の闇でもかまわなかったのでしょう?」
「あんたも、きつい事をはっきりいうねぇ。」
本当だ。
溜息ひとつまで聞こえてきそうだ。
「私はかまわないですから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ふと、後ろを向いて一服つく。回りに紫煙がたなびいて、風に飛ばされていく。

「あーあ。何かどーでもよくなるわ。あんたと話していると。」
「そうですか?私は、楽しいです。」
「・・・・あんたね。」
「どんなにつらい事があったあの頃でも私達はそれなりに仲が良かったから、ひとりじゃなかったから、私は、又、アイシャに会えた事がうれしくってそして楽しいんです。」
「なんだか、あんたの意外な一面を見た様な気がするわ。」
「いつもいつも、感情を表に出すのは、苦手ですから。」

なんだか、今日は新鮮な発見が多いな。人生もまだまだと言うところか?
しかし・・・・・。

「まあ、ホントの呼び出した理由はね、最近、あの人がうちの店の子に手を出しているから、近い内にあんたの所へ行くと思うから、よろしく頼もうと思ってね。」
「いい子だから、少しだけフォローしてあげたくってね。」
「・・・・・そうですか。」
「むっ、としたあ?」
「別に、そうではありません。あの人が何処で誰をつかまえようと、変わりませんから。」
「・・・一度、私も聞きたかったんだ。あんたの願いってなんなの?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「わたしを」
「ん?」
「あの人が、ただ、わたしを、見つめてくれる事です。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「だから、なのかな?あんたなのは。」

「ふう。なかなか、今日は面白かったわ。捨てたもんじゃないね。
やっぱり帰ってきて良かったと思えるわ。・・・あんたも非番な時はうちへ飲みにおいでよ。
あんたなら、おごりにしとくからさ。」
「ありがとう、ございます。」
「リースにもよろしくいっといてよ。」
「ええ、確かに。」
「じゃ、私は帰るわ。きっと、エミットがてんてこ舞いしてるだろうからね。」
「アイシャも、頑張って下さい。」

二人が離れる気配がする。アイシャが店の方へ戻っていく。姿が見えない様に木陰へ隠れた。
彼女の方は、まだ座っている。

「フォスター。」

突然声がした。心臓を掴まれた様な気がした。

「こちらに来て、座りませんか?」

いつから????

「気が付いていたのか。」
横へ腰をおろす。
「あまり、感心しませんね。立ち聞きというのは。」
「・・・・・・・・」
月明かりに照らされた、彼女の顔を見つめる。月の光が似合う女だとあらためて思う。
今日はしかも、屋敷の中ではなく、彼女はメイド姿でもないのだから・・・だから・・・。
「すまなかったな。」
彼女を引き寄せると、そのまま唇をあわせる。長く、愛おしむ様に。
そして、少し離れると瞳を見つめた。
「・・・・・私を呼んで下さい。」
彼女が上気した顔でいう。
たまには、こんな日が、こんな夜があってもいいだろう。
だから、私もつぶやく事にした。

「すまなかったよ。 クレア・バートン。」

風が舞う。月が私達を照らす。
月がもっとも美しい夜は、きっとこんな夜なのだろう。

                <FIN>



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