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Original Novel kaeru Presents



Me・Her


エピローグ



 一礼すると、俺と三鷹は職員室を出た。
 最後に見えた担任の複雑な表情が印象的だった。
「後味悪いな。西紀くん……どうして」
 三鷹は未だショックから立ち直らず、青ざめた顔をしている。
 西紀の身柄が警察に引き渡されて1日。
 いずれにしろ、彼らは中毒者専門の更正院に送られることだろう。
「俺たちが気に病む筋合いはない。ヤツらは法を犯し、自らの体を冒した。それだけのことだ」
 俺は淡々と告げた。
 俺としては、ショックなんてこれっぽっちも感じてはいないのだ。
 ただ、やるせないだけだ。
「トオルくんは冷たいよ」
 三鷹が俺を見上げて言う。
 その通りだ。俺は、人なんてどうでもいい。自己中心野郎だからな。
「西紀くん、同じクラスの友達なんだよ? どうしてそんなに、平静でいられるの」
「さあね。俺の頭、配線がどれか切れてんのかもな」
 同じクラスの友達だろうと、見ず知らずの他人だろうと、同じ事なんだ。
 そう言っても、三鷹は納得しないだろう。
 三鷹に限らず、血の通った人間なら、みんながそう思うはずだ。
 だから、俺は冷たいヤツなんだ。
「? ……トオル、くん?」
 三鷹が、怪訝な顔で俺の右腕に触れた。
「触るなよ」
 制服の下、俺の右腕は、今、包帯に巻かれている。西紀に切り付けられたときの傷だ。
 思いの外深かった。
 三鷹は触れた感触で気づいたらしい。
「やっぱり、ケガしてたんだ……それでも、警察には何も言わなかったよね?」
「三鷹。もういいよ、その話は。忘れろよ」
「トオルくん……どうして言わなかったの?」
 俺は、その質問には答えなかった。
 喉の奥が熱くなってきた。
 瞼が熱くなってきた。
「泣いて……るの?」
 一体何だってんだ。
 チクショウ。
 チクショウ。

『君! 制服が切れているようだが、ケガをしているんじゃないのか!?』
『大丈夫です。切れたのは制服だけです』
『この少年に切られたんじゃないのか? いいから、診せなさい。袖に血が付いて……』
『大丈夫です。ケガなんかしていません』


――了――



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