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Original Novel kaeru Presents



Me・Her2 ↓平沼家の人々↑


1.約束します



 最近なぁんかへンだと思ったら、やっぱりそうですか。
 やるじゃん、みやびネエ。
「お義父(とう)さん。これは、責任をとるとか、そういう言い訳のような決断ではなくて……娘さん、雅さんを本当に愛しているからお願いしているんです」
 そうは言っても、言い訳にしか聞こえねえよなあ。
 ね、未来の義兄(にい)さん。
「君の、娘を大事に思う気持ちは……分かってやりたい」
「は、はい」
 すげえ重い空気。小さなリビングのテーブルを、両親対、姉とその恋人が向かい合ってると言う状況。
 俺は俺で、イッコ上のなごみネエとその側面に座っている。
 逃げようとしたんだけど、父さん母さんに止められちまった。
『大切な話なんだから、あなた達もしっかりと聞いて置きなさい。思うことがあったら、遠慮なく話しなさい』
 ……そうは言われたって、口を挟める雰囲気じゃないんですが。
「しかし、娘はまだ大学2年なんだよ。これからまだ2年、大学で学業に勤しまなければならないんだ」
 父さんの口調からは、その胸中に渦巻く感情を、直接的に察することは出来ない。それが逆に不気味だ。
 恋人の横で額に汗を浮かべていたみやびネエが、久々に口を開いた。
「お父さん。子供を産んで、その1年は休学します。休むのは……1年だけです。大学は卒業します。だから……西原さんと、結婚させて下さい」
「お願いします!」
 みやびネエのフィアンセ、西原鉄平(さいばらてっぺい)が頭を深々と下げた。
 お世辞にもたくましい人ではないが、誠実で優しいのは確かなようだ。
 父さんは2人の必死な様子に少したじろぐが、手で待ったをかけた。
「雅。お前の決意の固さは分かった。しかし、子供を産んで、大学に通い続けるのは、どういう事か分かっているよな?」
「私が大学に行っている間は、図々しいです……本当に、図々しいんだけど。父さん、母さん。子供の面倒を見てやって下さい。お願いします」
「お願いします!」
 フィアンセの西原さんは、もはや頭を下げるしか選択肢はないようですな。
 子供をハラマセル役割の男って、こーいう点では意外と不利だなあ。
 俺はこういう状況には立たされたくないね。
「……そうか」
 父さんが沈思し、しばしの沈黙。
 対面では、愛する2人が、花道へのゴーサインを待っている。
「幸い……そう、幸い、西原くんは銀行員という、しっかりとした職について、誠に頼りになりそうな青年だ。雅の、伴侶を探す目は、確かなものだね」
「ありがとうございます」
 西原さんが応える。
 するといきなり、母さんが、隣で涙を流しはじめた。
 ……勘弁してくれよ。まだウェディングドレス着てねえんだからさ。
 父さんは姿勢を正し、西原さんに向き直った。
 これは、来る。来るぞ。
「西原くん。娘を、雅を……幸せにしてやってくれ。幸せにすると、私と……娘に。約束してくれ」
 ホラ来た。
 西原さんは、これまた目を潤ませて言った。
「約束します。雅さんは、僕が絶対に幸せにします。約束します」
 側面に座る俺となごみネエをほっぽって、4人は涙を流しはじめた。
 もらい泣きしそうになった自分がスゲェ恐かった。
 場の雰囲気って、恐ろしいモノがあるね。
 それにしても俺、素直じゃねえなあ。
「お義父さん、約束します」
 男に二言はないよな、義兄さん。


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