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Kanon Another Story



永遠の煌き


プロローグ〜

by 幻



 プロローグ〜

 
 
 春の日射しが降り注ぐ丘の上。
 丘を覆う雪が消えてから、もう随分たつ。
 草原は青さを取り戻し、木々は若葉色に染まる。
 山の雪解けはまだまだだが、やわらかな風の運ぶ土の香りは、春の訪れを告げていた。

 風が丘をかけ登り、草が波打つ。
 その様はまるで丘全体が緑色に燃ているようだった。

 そこに季節はずれな紺のデニムと白のタートルネックのセーターを着た少女がひとり、身を投げ出して、寝ころんでいた。
 あたたかい風に吹かれて、その顔はとても穏やかだった。

 やがて、ゆっくり瞼をひらく。
 青空に輝く太陽と目があって、きゅっと瞼を閉じる。
 右手を額に当て、左手を支えにして上半身を起こす。
 見下ろす丘の下には、春の光を浴びて鈍く銀色に輝く街並みが、まるでミニチュア細工のようにひろがっていた。

 少女は、立ち上がる。
 どこから来たのか、白と茶色のブチの子猫がその足にまとわりついた。
 少女には記憶がなかった。
 しかし、その横顔には不思議と不安は感じられず、むしろ、誇りと確信に満ちていた。まるで、この先には約束された明るい未来が待っているかのように……。

 そして、うららかな陽光の中、少女は歩き出した。




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