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Kanon Another Story



〜あの日から〜




by Sesiru




 …名雪
その名を呼んだのは、実に七年振りだった
毎年、雪の降る季節に行っていた
あの街のいとこの女の子

正直最初は嫌だった
あの街に行く事が…
自分の中の"なにか"が歯止めをかける
けれどその"なにか"は記憶の底……

だがこの街に来て、今は良かったと言える
七年前に名雪と交わした約束が守れたから
自分の気持ちがわかったから
そして俺は本当に名雪のことが
好きみたいだから……


 「なぁ名雪、この荷物はどっちだぁー?」
 「その荷物は、あっちー」
 「おう、わかった」

――話は1週間前にさかのぼる――

 「祐一さん、それに名雪」
 「なぁに、お母さん」
 「何ですか? 秋子さん」
 「実は二人に話があるんだけれど、夏休みは暇かしら?」
 「うん、暇だよ」
 「やる事と言ったら受験勉強ぐらいだから、暇と言えば暇ですね」
 「そう。なら一緒にキャンプにでも行きませんか?」
 「キャンプですか」
 「行く行くっ!」
 「実は会社の人がコテージを貸してくれたんですよ」
 「へぇー」
 「すごいよっ」
 「では、皆で行くということで良いですね?」
 「はい!」
 「もちろん!」

――ということがあったわけさ
今回は家族(もちろん水瀬家のという意味で)水入らずで過ごせそうだ
何より名雪と一緒だからな
嬉しくないわけがない――

――今日は祐一と一緒に過ごせるよ嬉しいよ
そういえば祐一とこういう風に過ごすのって初めて…
何か変に意識しちゃいそう、お母さん感が鋭いから――

 「名雪っ」
 「きゃっ」
 「どうしたんだ、ぼぉっとして?」
 「祐一、驚かさないでよ」
 「いや、あまりに隙だらけだったからな」
 「もう…」
 「それよりジュースだ。飲むだろ?何がいい?」
 「イチゴジュース!」
 「…持って来てない」
 「えーーっ……じゃぁ、りんごジュースでいいよ」
 「ほらっ、いくぞ」

と、缶を放り投げる

 「あっ、とっとっ…」
 「ナイスキャッチ!」
 「もう、いきなり投げないでよ」
 「さすが陸上部。 運動神経だけはいいな」
 「話をずらさないでよ」

――そんなこんなで時間は流れ――

 「おいしいですね。 こうやって外で食べるっていうのも」
 「うん!」
 「ええ、そうですね」

あたりが静かであることが
ここがいかに良い場所であるかを物語っていた
聞こえてくるのは虫の音の音と木々の葉のこすれる音…

夕食も食べ終わり後片付けを手伝うと言ったが
「私一人でも大丈夫ですから、名雪と散歩でもしていてください」
と言われ、その言葉に甘えることにした

 「いいところだな、ここ」
 「うん、そうだね」
 「それにコテージも立派だな」
 「お風呂がついてるなんて思わなかったよ」

そうなのだ
秋子さんが借りたコテージは
冷暖房完備なおかつ風呂付きだったのだ
今まであんなに立派なコテージは見た事が無かった

部屋も四部屋あり、居間もそれとは別にある(もちろん暖炉付き)
う〜ん、いったいどんな人が貸してくれたんだろうか?
秋子さんの職業現場がやはり気になる

 「ねぇ、祐一」
 「何だ?」
 「こうやって祐一とのんびり過ごすのって初めて」
 「そういえばぁ、そうだな」
 「うん」
 「…静かだな」
 「うん、静かだね」
 「明日は晴れるかな」
 「わかんないよ」

――だぁぁっ、俺はいったい何をやってるんだぁっ!
   変に意識してるぞ俺っ
   なんかこう気の利いたセリフはないのかぁっ!

――何か恥ずかしい
   駄目っ、言葉が浮かばないよ
   緊張するよぉ〜

 「なぁ、名雪」 「ねぇ、祐一」
 「「……」」
 「名雪から…」 「祐一か…」
 「「………」」
 「くくっ」 「ふふっ」
 「「あははーーー」」

俺達の笑い声が森中に木霊する

 「なぁ、名雪」
 「何、祐一」
 「俺達は俺達でいいんだよ。何も変に飾る必要なんて無い」
 「…祐一」
 「いいんだ、特別な言葉なんかなくたって。
  お互いの心が通じ合えてればいいんだよ」
 「そうだね。 でも証拠は残ってるよ」
 「ここまで来てその話をするな」
 「うふふー」
 「…もしかして、持って来てるのか?」
 「うん!」
 「…名雪」
 「なに?」
 「秋子さんもいるんだぞ…」
 「さっき散歩行くときお母さんにね」
 「何か言われたのか」
 「『名雪、祐一さんを困らせちゃ駄目よ』ってね」
 「ぐはぁ、やっぱり俺が甘かった」
 「お母さん鋭いから」
 「了承ってやつか?」
 「多分」
 「そうか」
 「お母さん、嬉しそうだった」

――ああ、秋子さんさすがです(泣)

――公認……何か恥ずかしいよ

しばらく歩いて行くと小高い丘にでた
空一面の星空
手を伸ばせば届きそうなほど
まるで今にも降って来そうなほど
言葉をなくした俺達を迎えるかのように
流れ星が降りそそぐ

 「…綺麗だな」
 「…綺麗だよ」

そう言った名雪の表情は何処か大人びて
俺は名雪の頬にそっとキスをした

 「祐一ずるいよぉ〜」

私も、そう言って祐一の頬にキスをした

 「名雪っ」
 「しかえし、だよ」

見つめあった瞳と瞳
映し出すのはお互いの顔
吸い込まれそうなほど
心を見透かされそうなほど
お互いの顔が近づく
そして俺達はキスをする
長い長いキスを……


〜あとがき〜

この後は皆様のご想像にお任せします
朝の朝食にいつの間にか"謎ジャム"が並んでたり
Vol設定を間違えた目覚ましがコテージ中に鳴り響いたり
などなど(^^)

4人まで来ましたということで後は栞だけです
感想どんどん待ってますっ!
(R.ver.6月12日)


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