7年振りにこの街に帰ってきた

この街で俺を待っていた少女がいた

それは…遠い昔

黄金(こがね)色の麦畑で出会った少女だった……

〜The Shadow〜
1st



  親の都合により、またこの街に身を置くことになった
  俺の居候先の家主の水瀬秋子さん、その一人娘の水瀬名雪…
  いとこと言うこともあり、懇意にしていた

  だが、7年前を境に、俺はあの街へ行くことに拒絶の意を示す様になった
  理由は、自分でも判らない。 ただあの街に行くのが嫌だった、辛かった…

  だが、そんな俺の意思など関係無しに事は進み
  今は、名雪と同じ学校に通っている…

  「あれから7年か…」
  雪の道を歩きながら呟く
  「…やっぱり、嫌だな」
  止むことを知らない雪
  肩に、頭に降り積もる雪
  不意に景色が霞む

  …それは、あの日見た景色
  …それは、あの時の出来事

  不確定な思い出すことのできないこと…いやなイメージ…
  頭を降るってそのイメージを雪と共に振り払う
  「さっさと、名雪のノート取りに行って帰ろう…」

  月が妖しく光る夜だった

  夜の学校の前に立つと、改めてその存在が恐ろしく見える
  月光に照らされた、無機質な建築物
   グラッ…
  「おっと…」
  まるで地震が起きたのかのように、祐一の足元だけが蠢いた
  その刹那、巨大な無機質の建築物が一瞬霞み
  黄金色に輝く、麦畑が姿を現した
  「……んっ」
  目をこすってもう1度確認して見るが、そこに先ほどまでの
  麦畑の姿は無かった
  「気のせいか?」
  暫く考えていたが、ノートを取りに行くという本来の目的を思い出し
  白い校舎へと、歩みを進めた

  「やっぱり開いてないか…」
  表玄関は当然の如く閉まっていた
  「まぁ、当然と言えば当然だな」
  しかし、これでは中には入れない
  「…職員用玄関、行ってみるかぁ」
  内心では、開いているはずないだろうと思いつつ足を運ぶ

  「随分と…無用心だな」
  あっさりと開いた職員用玄関
  疑うことも考えず、校舎内に歩を進める
  「やれやれ」
  外履きのまま失敬していて、その音が廊下を木霊する…
   ガラッ…
  教室のドアを開ける音が、こんなにもうるさく感じるv   思わず月明かりの廊下を振り返る
  ………
  漂うのは静寂のみ

  「俺の机は、っと」
  机の中をあさる
  「……あった、あった」
  名雪のノートには実際かなり助けてもらっている
  …まぁ、名雪にも色々と助けてもらっている訳なのだが
  「さって、と」
  教室のドアに手を掛ける
   ゾクッ…
  突如として背中にはしる悪寒…それと共にこの場の雰囲気にも
  重たい緊張感がはしる
  「…くっ」   (なんなんだよ!)
   バンッッ!!
  勢いよくドアを閉める
  だが、それが合図だったのかのように
  より一層緊張感が濃くなった様な気がした
  それとともに、何か只ならぬ気配が漂い始めた…

  廊下を少し早足で歩いて行く
  それでも気配は収まることを知らない
  ゾクッ…
  再びはしる悪寒、戦慄にも似たその感覚に
  廊下を進む歩みが自然と速くなって来る
  …いつしか駆け出していた
  (あの廊下を曲がれば…)
   ダダダッ…曲がり角が見えた瞬間
  祐一は思わずつまずいてしまった
  「…っ、あつつ…」
  前のめりになる格好で倒れてしまった為、もろに顔を打った
  そのショックでかどうかは判らないが
  先ほどまでの気配と緊張感が、幾分か和んだように感じた
  「……ふぅ」
  溜息を一息つき、ゆっくりと顔を上げて行く
  目の前には誰のものだか判らない足…
  その、足の人物をゆっくりと見上げていく
  月明かりに照らされたその人物…長い髪を一つに束ね上げていて
  その立っている姿は1枚の絵画と呼ぶに相応しかった
  よく見ると手に握られているのは…銀色に月明かりを反射する一振りの剣

  その人物がゆっくりとこちらを見た
  目と目があった
  刹那、頭の奥底から呼び出される情景
  (この景色は…)
  《……ここ…は》
  それは昔見た黄金色の麦畑
  (何故?)
  《…今は…必要無い》
  時折、麦畑から覗かせる兎の耳…
  (あれは…)
  《………》
  『……メ…ロ』
  (なに?)
  『メザ…メロ』
  (………)
  『ジブンノ、カゲニ、キヅクガイイ…』
  そこで、いきなり現実へと呼び戻された

  自分の立っている場所が最初判らなかった、が
  只ならぬ気配が漂う暗い通路…そして
  目の前に立っている、一人の少女
  その手に抱かれている剣は
  月明かりを浴び、冷たい光を放っていた…

後書き〜

ども、Sesiruです
書きたいと思っていた1つ〜The Shadow〜
舞のアナザーストーリと思っていただければいいです

きちんと、佐祐理さんは出てきますし
他のキャラもちょくちょく登場するかもしれませんが
メインはあくまで舞と祐一です

補足〜()は祐一の心の表現
    《》は舞の心の表現
    『』は今の所秘密です(^_^;)

感想など頂ければ幸いです
それでは