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Original Novel
keita Presents



女神






朝起きると,目の前に女の子がいた。
その子は,
「わたしは女神です。 あなたの望みをかなえましょう・・・」
だって。
なんの冗談だ? と思っていると,じっとこっちを見る視線・・・
「ん〜? なにも願いごとないの?」
・・・夢だな,ゆめ,ゆめ,寝不足か,もう一度
布団に入ろうとすると
「ねぇ,ねぇ,無視しないでよ。」
・・・布団取られちゃった。 え? 夢じゃないの?
もう一度その子を見ると・・・ん〜たしかにいるなぁ,
・・・あ,かわいい・・・頭なでなで〜・・・さわれる・・・ほんとにいるんだ・・・
「あの〜,もういいですか?」
いつまでも頭をなでてたらそう言われた。
「あ,ごめん,えっとそれでなんだっけ?」
「あ,はい,それではもう一度最初から・・・わたしは女神です。あなたの望みをかなえましょう・・・」
「やっぱり夢だな。 寝よ,寝よ・・・」
「あ〜夢じゃないです〜」
「朝一番にいきなり『女神です,願いをかなえましょう』なんて信じられると思う?」
「でも・・・でも,ほんとなんだもん・・・」
うぁ,泣きそう,ヤバイ・・・
「あっ,じゃあさ,なんかやってみせてよ。 普通の人にはできないこととかさ。」
「ハイ! わかりました!」
・・・おぉ・・・浮かんでる。 どんどん浮いて・・・あっ天井・・・
・・・ガンッ!・・・
ポテッて感じで落ちてきた。
「う〜いたいです〜」
グシグシ泣きべそかいてる・・・
「でも,これで信じてくれますかっ?」
笑って言った。 立ち直り早いな・・・
「ん,わかった。で,願い事は何回まで?」
「え? えっと〜別に回数は指定されませんでしたけど・・・」
「へ? 何回でもいいの? ふとっぱら〜」
「ふとってないです〜」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・?」
「・・・まあ,いいや。 じゃさっそく,うん,まずはこれだな、お金持ちにしてくれ!」
「ハイ! わかりました。 それではさっそく・・・・・・」
ん,なんかブツブツ言ってる。 呪文?
・・・ポンッ・・・
小さな花火みたいな音が鳴って彼女の手のひらに現れたのは!!!
・・・千円札・・・?
「・・・えっと,これだけ・・・?」
「ハイ! がんばりました!」
「・・・ちなみに今の呪文って一日何回でも使えるの?」
「え〜つかれちゃうから一日一回です〜」
「・・・もっとすごいの出せないの? 金の延べ棒とか,ダイヤモンドとか・・・」
「え〜っと実は私,召喚の魔法って苦手なんです〜 だから,できませ〜ん。」
「・・・やくたたず・・・」
「あ〜ひどいです〜」
・・・じゃ,他に何してもらおうかな? あ,そだそだ,
「じゃ,部屋がきたないから掃除してくれ。」
「ハイ! わかりました!」
 
・・・まあ,確かに部屋は綺麗になってるけど・・・ちがう,何かがちがう・・・
彼女は今,ホウキが終わってぞうきんがけをしているところだ。
・・・全部自分でやってる・・・
「ねぇ・・・」
「ハイ? なんですか?」
「あのさ,魔法でパーッと奇麗に〜とか,ホウキに手足が生えて勝手に
お掃除〜とかできないの?」
「え〜そんな魔法使えませ〜ん。」
・・・まあ,結果的に部屋が奇麗になればいいんだけど・・・なんか納得いかないぞ・・・
「ハイ! おそうじおわりました!」
「・・・あ,うん,ありがとう。じゃ次はね・・・そうだ,朝ご飯がまだだった。
いっしょに食べよう。」
「ハイ! わかりました!」
 
・・・彼女が台所に立っている・・・包丁がトントントンって音を立ててる。
あっ,ミソ汁のいい匂いがしてきた〜。 うん,なんか久しぶりのちゃんとした朝ご飯って
感じだな〜・・・ってちがう・・・ちがうだろ・・・
「ねぇ,魔法でパッと世界各国の料理ができました〜とかは?」
「そんな魔法使えませ〜ん」
「・・・君,どんな魔法が使えるの・・・?」
「えっ,え〜っとですね・・・あっ,大変たいへんお魚こげちゃう〜
これ,作りおわってからお話しましょうね〜」
 
「どうです? おいしいですか?」
「え? あ,うん,おいしいよ。」
「あ〜よかったです〜。 さて,次は何しますか?」
「え,あ,だからその前に,君はどんな魔法が使えるの?」
「え〜答えなくちゃだめですか〜」
「そりゃ,どうせなら魔法でできることを頼みたいからね。」
「・・・え〜っとですね・・・さっきのお金出すだけやつです・・・」
「・・・さっきの一日一回しか使えないやつだけ・・・?」
「ハイ! そうです!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・やくたたず・・・」
「あ〜またやくたたずって言った〜 ひどいです〜」
「だって魔法一つしか使えないなんて,君ほんとに女神なの?」
「ん〜っと実は私まだ見習いなのです・・・」
「・・・なるほど,見習いね。」
「ですから,魔法はまだ修行中なのです。」
「う〜ん,魔法使えないのに何でも願いかなえるって・・・」
「ハイ! がんばります!」
ん〜できないこと言ってもしょうがないしなぁ〜
「例えば,世界旅行に行きたいって言ったらどうするの?」
「・・・え〜っと,今日中にはムリですがよろしいですか?」
「あ,ウソウソ,やっぱいい。」
「え? そうですか?」
こうだもんな〜まぁ,かわいい子に掃除やご飯作ってもらうだけでも充分だけど・・・
 
ん? かわいい・・・そうだ,これにしよう。
「じゃ,僕の彼女になってくれ。」
「ハイ! わかりました!」
「うん,うん,やっぱりだめだよな。んな訳わかんない願いごとは。」
「え? べつにいいですけど?」
「ん〜,他になんかあったかな〜」
「あの〜,聞いてますか〜」
「ん,あ,なに?」
「さっきの願いごとでいいですか?」
「・・・さっきのって僕の彼女に〜ってやつ?」
「ハイ! そうです〜」
「・・・いいの?」
「え? 何か問題でも?」
「いや,別に君に問題が無ければいいんだけど・・・」
「じゃ,私は今からあなたの彼女です〜,ところで,ご質問ですが・・・?」
「あ,うん,なに?」
「具体的に彼女って何するですか?」
「・・・う〜んと,何するって別に,特別には・・・まあ,気持ちの問題かな?」
「気持ち・・・ですか・・・?」
「うん,そう。 いっしょにいて楽しいって気持ちになったら合格。」
「ふ〜ん,じゃぁ,今楽しいから合格ですね〜・・・私は楽しいですけど
あなたは楽しいですか?」
「え,うん,楽しい楽しい。」
「よかったです〜」
 
う〜ん,いつまでも家にいてもしょうがないな。
「よし,遊びに行こう.」
「ハイ! わかりました〜」
「・・・ところで,空飛ぶホウキとか出したりできないよね。」
「ハイ! できませ〜ん。」
「・・・そういえばさっき空飛んでたけど,いっしょに飛んだりとかは・・・」
「人を抱えてなんて浮かびませ〜ん。」
・・・まぁ,なんとなく予想通りの答えが返ってきた。
「・・・じゃ,普通に歩いて行こうか。」
「ハイ! いきましょうです〜」
 
と,いうわけでとりあえず遊園地に来たわけだけど・・・
「わ〜,人がたくさんです〜 あ,あのグルグル廻ってるのはなんですか?」
「え,あれはね,観覧車って言ってね,乗ってみる?」
「はい〜」
じゃ,のってみよっと・・・
「うわー,すごいです〜,たかいです〜,人が小さく見えるです〜」
「・・・君,空飛んで上から見たらこんなもんじゃないの?」
「え〜こんな高くまできたことないです〜」
「・・・あ,そう(女神って空から来るんじゃ?)・・・」
 
「あ〜,おもしろかったです〜。あ,あのすごいスピードでゴーッてのはなんですか?」
「あれはね,ジェットコースターっていってね。おもしろいよ,行く?」
「はい〜いきましょうです〜」
・・・ゴーッ・・・
「あう〜グルグルグルグル〜目が廻るです〜 でも,おもしろかったです〜」
「うん,よかったね。」
 
うん,僕も充分楽しかった。 とっても楽しかったなぁ。あ,そういえば,この子
いつまで僕の彼女でいてくれるんだろ? 願いごとの効力はいつ切れちゃうんだろ・・・
しょうがないけどいつかは切れちゃうんだよね・・・聞いてみよ。
「ねぇ,あのさ,ちょっといいかな?」
「ハイ! なんですか?」
「えっとね,この願いごとの効力っていつ切れちゃうの?」
「・・・? 意味がよくわかんないですけど〜」
「えっと,願いごとっていつかは切れちゃうもんでしょ?」
「え〜っと,基本的には,あなたがやめって言うか,お亡くなりになるまでですが?」
「へ? そうなの?」
「ハイ! そうです〜」
「なんだ,じゃぁまだまだ先の話なんだ。」
「いいえ〜,そんなに先のことじゃないですよ〜」
「え? なんで?」
「あっそういえば言ってませんでしたね〜 私,死神なんです〜」
「・・・はぁ?・・・」
「死神なんです〜見習いですけど〜」
「・・・えっと,女神って言ったのは・・・?」
「あ,あれはですね,先輩に教えてもらったんですが,死神が来たって言うと
 びっくりするから,始めは女の死神ってことで女神っていいなさいって教えてくれたんです〜
 なんでびっくりするですかね〜? 死んじゃった人の魂を迷わないように連れて行く
 というのが,死神の本来の役目なんですけど〜
 と,言うわけで,あなたの残り時間は・・・・・・あれ? もうなくなっちゃいました・・・?」
 
 
「せんぱい、せんぱ〜い、やりました〜、これで見習い試験合格ですね〜」
「あら? 早かったわね。 ちゃんと迷わずに連れてくることができたの?」
「はい! 大丈夫でした! これで、私も一人前の死神ですね〜」
「そうね・・・でも、最後に聞いておくことがあります。 これが最終試験です。
 ・・・あなたはどうして泣いているの。」
「え・・・? 泣く・・・? わかんないです・・・ なぜだか涙がでてくるです。
 私たちは死んじゃうって事が無いからわかんないですけど、
 なんだか・・・人が死んじゃうって悲しいです・・・」
「・・・そう、それでいいの、合格よ・・・
 なぜ悲しいか、それはね人には限られた時間しかないからなの、
 何度生まれ変わっても、今の時間は今しかないのだから精一杯に生きることができるの、
 それに疲れて休んだとき・・・
 次のためにちゃんと休めるよう私たちが道案内してあげなきゃならないのよ・・・
 だからその気持ちをいつまでも忘れないでね・・・」
「はい・・・わかりました。」
「よろしい、全過程を終了しました。 これからも頑張るように。」
「はい! がんばります!」
 
 
・・・僕は眠りに就いてしまう前にこんなことを考えた・・・
・・・本当に誰よりも悲しいのは・・・
・・・本当に誰よりも優しいのは・・・
・・・彼女たちなのかも・・・
・・・彼女達こそ文字どおり女神だったのかな・・・



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