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Original Novel
keita Presents



しあわせな物語






一つの世界があった
一人の少年がいた
その子の母親がいた
それは、冬のある日の風景・・・
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「ねぇ、ねぇお母さん」
「なぁに?」
「僕、眠れないんだ。なにかお話してよ」
「あら、あらしょうがないわねぇ、じゃあ一つだけよ?」
「うん!」
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「あるところに、お母さんとその子どもが住んでいました。
2人はとっても幸せでした。普段は近くの野原で散歩をしたり
時には川で水遊び、また、ある時は町へ買い物へ行ったりしました。
その子どもは、母親に似てとてもかわいらしい顔立ちをしていたので、
2人は母子ともども町中の人たちに愛されていました。
2人はそんな幸せな日々を暮らしていました。
けれど、そんな幸せは長く続きませんでした・・・
その子どもが病気に罹ってしまったのです。
お母さんは必死の思いで助けようとしました。
町の人たちもみんな母親の願いを解っていたので、できるだけの
ことはしてあげました。
けれど、やっぱり「病気」という運命には勝てませんでした・・・」
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「あら、あらどうしたの?」
「だって、その子、死んじゃったんでしょ?かわいそうだね・・・」
「そうね、かわいそうね。だけど、お話はまだ終わってないのよ?
じゃぁ、つづけるわね?」
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「お母さんは、冷たくなった息子の亡骸にすがり付いて泣いています。
『お前や、お前、どうして私をおいていくんだい。お前が死んでしまった
後でも私は生き続けなければならないのかい?』
そういって泣き続けるのです。
町の人たちは彼女の悲しみの何分の一かでもの慰みにでもなればと、
心からの言葉をかけていきました。
それでも、彼女は息子と2人きりにしておくれと泣き続けるばかりでした。
やがて町の人たちも帰っていったその夜・・・
泣き疲れたのか、彼女はウトウトしていましたが、何かの強い光を
感じて目を覚ましました。泣き腫らした目をこらしてその光の方向を
見てみると、何か光に包まれた人のような者が立っているではありませんか。
その人は、彼女の驚いた気持ちなど気づかないかのように言いました。
『あなたの、悲しむ気持ち・慈しむ気持ち、我が主に届きました。
その子を生きかえすことはかなわないけれど、代わりにこれを
遣わしましょう。』
そういって、光は消えてしまいました。
彼女はしばし呆然としていましたが、気づいてみると息子の亡骸は消え
代わりに生前の息子に生き写しの人形が一体残されていました・・・」
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「この話は、これでおしまいよ。」
「え〜、続きは〜」
「もうこのお話は、これでおしまいなのよ。」
「え〜、じゃぁその光ってた人って神様なのかなぁ。」
「そうね、そうかもしれないわね・・・」
「うん、きっと神様だったんだよ。」
「そうね、そうかもしれないわね・・・」
「神様がきてくれたんなら幸せになったんだね・・・
ぼく、もうねむくなってきちゃったなぁ。」
「あら、あら、もうこんな時間ね。さあ、部屋へかえって
もう、おやすみなさい。」
「うん、お母さんもおやすみなさい。」
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・・・そういって立ち上がった僕を母さんはじっと見ていた。
白い壁に囲まれた、清潔なベッドの上で・・・
濁ったガラス玉のような瞳で・・・
もう、ボロボロになった人形を抱えながら・・・
時が止まったままの、病んだ心で・・・
彼女は「シアワセ」そうに笑っていた・・・・・・・・・・・・



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