Back/Index/Next
Original Novel
keita Presents



踊るきみ/踊るぼく


最終話

〜あの日の公園〜



ふぅ・・・最近なんか変なんだよな。
僕じゃなくて彼女の方だけど、家も近いから
一緒に帰ったりしてるんだけど、話し掛けても上の空。
最近なんかろくに話を聞いてるのかも怪しいもんだ。
修学旅行帰ってきてからなんだよな・・・
いつもうるさいくらいに元気だから、余計静かに感じるのかな・・・
今日なんて、
「悪いけど・・・一人で帰って。」
だって・・・雪でも降るのかな・・・?
空を見上げると雪が降ってきた・・・
なんてこともなく、ただの夕焼け空だった・・・
 
・・・あっ!・・・
家に帰る道を行く僕の前に・・・
あの子がいた・・・小さな時会ったままの、
短い髪に青い帽子を目深にかぶったあの子が・・・
「あっ!! ねぇ君っ!!」
彼は何も言わないで駆け出した!!
「・・・ねぇ! 待ってったらっ!」
それを追って、僕も駆け出したっ!
 
もうどれくらい追いかけたのだろうか…
いいかげん僕の息も上がってきた頃・・・
僕と彼は辿り着いていた。
僕たちが始めて出会ったあの公園へ・・・
そう、夢の中のあの公園で・・・
彼は、そこで走るのをやめた。
 
『ふたりの場合』
はずむ息・・・
お互いに吐く息が白く煙る・・・
肩で息をする僕ら・・・
お互いの息使いが感じられる・・・
僕らは共にたどり着いた・・・
もう彼も逃げる気は無いらしい。
いや、はじめから逃げる気は無かったんだろう。
ただここへ来ることが・・・
そう思った僕は、彼に話し掛けた。
「やっと止まってくれた・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「さあ、もう追いかけっこは終わりだね・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「あの子は・・・君だったんだね・・・」
「・・・!」
夢の彼は・・・いや彼女は帽子を取って言った。
「いつ気付いたの・・・?」
「さっきだよ…何度も見ていた君の背中なんだ…いいかげん気づくさ…」
「そう・・・」
「そんな事より、その髪は・・・」
「えっ・・・あっこれ・・・? だって、誰かさんが気付いてくれないんだもん。」
「だからって・・・一言言えばすむことじゃ・・・何も切らなくても・・・」
そう、彼女は髪を切っていた・・・黒くて長くて自慢してた髪を・・・
「私だって・・・まさか男の子と間違われてる、なんて思わなかったもん。
このくらいしなきゃ気付かなかったでしょ・・・?」
「いや、まあそうだけど・・・」
「私はね、ずっと君のこと探してたんだよ・・・なのに誰かさんは知らん顔でさ・・・
だから、仕返し。」
「仕返し・・・?」
「うん! 女の子が髪を切ったんだから、責任とってよねっ!」
そう言って、彼女は僕を抱きしめた・・・
「・・・・・・・・・・・・・」
僕はただじっとしてた・・・
「えっと・・・返事は・・・?」
「え? あ、う、うん。 えーと、君に先に言われちゃった・・・かな。」
「・・・そう、よかった…」
僕らはしばらく2人でいた・・・
 
「それにしても、ほんとにバッサリ切っちゃったんだね・・・」
「髪の長い私の方が良かった・・・?」
「ううん、そんなこと、どっちでも・・・」
そう言って彼女の頭を撫でようとしたら、
「あっ! まだダメっ・・・!」
あわてて頭を押さえる彼女の手より、一瞬僕の手の方が速かった。
「・・・何これ・・・?」
僕の手に黒い塊・・・髪の毛・・・?
目の前には・・・髪の長い彼女・・・?
「あーあ、もうバレちゃったぁ〜 せっかく演劇部の友達に借りたのにな〜」
「・・・わざわざこのために・・・?」
「うん、うんっ。 どうビックリした?」
「あきれて物が言えない・・・」
「うん、うんっ。 ビックリしたよねっ♪ 良かった良かった。いーこと思い付いたって思ったんだよね〜」
そう言って楽しそうに笑う彼女・・・
「この仕返しは、また今度だな・・・」
「うん、そうだねっ。 まだまだ時間はたっぷりあるよねっ!」
 
2人の舞台は今、幕を開ける・・・
2人の時間はいつまでも・・・?
そんなことはわからないけど
とりあえず今は・・・共に踊ろうきみとぼく…
 
≪終劇≫



Back/Top/Next