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Original Novel
keita Presents



夏休み


第6話

最終戦



最後の日…ね。
ま、僕だけだけど。
楽しかったな、ほんと。
でも…今日は勝つためにっ!
 
「あ、来た来た。おはよ〜」
「おはよう…」
「あれ? どうしたの? くらいよ?」
「ん? そんなこと無いさ。 さて今日も勝負だ!」
「うん、うん、やる気だね〜そうでなくっちゃ! さてさて、今日の勝負は…」
「ちょっとまった! 今日の勝負は最初の水泳対決だ!」
「ん、ほほう、そんなに私の水着姿が見たい…と」
「だーーちがーーう!! 今回は勝つために! だ」
「否定しきったわね…まぁ、そこまで言うなら自信あるんでしょ、受けてたとうじゃない」
 
…かくして、『〜最終戦・目指せ!泳げ!あの小島まで!100メートル水泳対決〜』の始まりである…
 
「さて、ルールは前回とおんなじね。距離約100メートルのあの小島まで先についた方の勝ちっと」
「うん、それでいい」
「さてさて、それでは…よーい…」
「ちょっと待った! 僕がスタートを言う」
「…はいはい、わかりました、ご自由に」
 
…もう、なりふりかまっていられない、今回は勝たなくちゃならない…
 
「それでは、よーい…あっ!千円落ちてる!」
「えっ!? どこどこ〜?」
「スタート!!」
 
…ジャボーーン…
 
…ふ・ふ・ふ〜やってしまった、ついに卑怯な手を〜千円は惜しいがこれで勝てれば悔いは無いっ!!
前回、スタートの差で負けたんだから、こっちが先に行けば絶対負けないもんね〜…
 
「…ふ〜ん、なるほど、なるほど。さっきの自信はこれだったのね〜、ま、ちゃっちい手だけど
千円儲かったからよしとしましょう。 …で、あらら、全力で泳いでるね〜
こっから追い抜いたりしたら…どうするのかな?」
 
…ジャボーーン…
 
…ふ、今ごろ飛び込んでも、時、既に遅しっ! もう三分の一も差がついてるんだ、追いつけるはずが無い!!
 
…ジャバジャバジャバジャバジャバジャバジャバジャバ…
 
…え?なんか…やけにすぐ後ろで音がする…?
 
…ジャバジャバジャバジャバジャバジャバジャバジャバ…
 
…うそ…抜かれちゃったよ…
 
「プハッーーーーっと、やった〜☆ 勝ち〜ぃ♪ ん、まだ着かないの…?」
「プァーーーー、疲れた…」
「お、やっとついたね、で今回も私の勝ちっということで〜」
「ちょっとまてーーい! 君、前回こんなに早くなかったじゃないかっ! 手加減してたんだろー!」
「うん、そうだよ」
「うん、そうだよって…インチキ…」
「だーって全力出さなくても前回は勝てたも〜ん。
そ・れ・に、インチキした上に負けちゃった人に言われたくないな〜」
「…………」
「うっひゃーかっこわる〜い、あれだけ自信たっぷりに『勝つために!』とか言っときながら、
やった手段が『あ! 千円落ちてる!』でしかも、負けちゃってるんだも〜ん」
「もう…なんでもいいです…」
「そこまでして私のこと知りたかったの〜?」
「いや、っていうか勝ちたかっただけ…」
「まあまあ、照れずに照れずに。 そっか〜そんなに知りたいのか。ふ〜ん、へ〜」
「一人で納得してるし…」
「ん? なにか言った?」
「いや、べつに」
 
今回は、前回のような無理難題を出されることもなく。
やがて、日が沈みはじめてきた。
僕たちはどちらともなく…この前来た高台の方へ向かっていた…
 
「ん〜、やっぱりここはいつ来てもきれいね〜」
「うん、そうだね…でも、これで当分見納めだなぁ…」
「ん? なんで?」
「僕、明日帰るんだ。夏休みはもう終わりなんだよ…」
「あ、そうなの…そっか…もう夏休み終わりなんだねぇ」
「うん、楽しかったよ。君といて退屈しないですんだ」
「…そう、よかった」
「…結局最後まで、君のこと何も聞くことできなかったけど…さ」
「うん、そうだね…」
「そろそろ、戻ろうか…」
「そうだね…かえろっか」
 
やっぱり…何かが終わるときってのはさびしいもんだなぁ…
彼女はどう考えてるのかわからないけど、いつもより口数は少なめだった。
そして、いつもの分かれ道…
 
「…ねぇ…」
「ん? なに?」
「…ここでばいばいだよね」
「…僕の家あっちだからね…」
「だから…あのね、あのね…王様からの最後の命令っ! 次に会うまで私のこと忘れないことっ!」
「…………」
「忘れないこと…ね?」
 
忘れないこと…ね。
楽しかった、夏の日の。
あの日の思い出…
あの日の思い出…?
忘れちゃわなければ思い出にならないのかな…?
忘れちゃわなければずっとこのままで…いられるわけじゃないけれど。
だけど…だから、忘れない。
 
「…わかりました…王様…」
 
僕らは、最後に握手だけして別れた…それぞれの家へ…それぞれのいた場所へ…


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