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Original Novel
keita Presents



夏休み


第7話

延長戦



…ふぅ〜…
僕は電車に揺られてた。帰りの電車だ。今日が帰る日、お婆ちゃんはまたおいでって言ってくれた。
…あの娘は姿を見せなかった。まぁ、当たり前だ、いつの時間帰るってことも言ってないのだから。
当然と言えば当然だ。見送りに来てほしかったかな…だったらいつ帰るって言えばよかっただけだけど…
多分、あの娘だったら見送りにぐらい来てくれただろうけど…
いや、これでよかったんだ。 また会ったら帰りたくなくなるかもしれない。
そうだ、夏休みはもう終わったんだよ…
いつまでも、夏休みではいられないんだなぁ…
…寂しさと、その何倍もの楽しかった思い出が胸をよぎる…
そんな気持ちを抱えながら電車の揺れに身を任せ、僕はいつしか眠りについていた…
 
…………
 
……ピトッ
 
「………っ!!」
いきなり首筋への冷たい感触に目を覚ます。
懐かしさにも似た感覚…
本当はそんなに前の事じゃないのに…
はじめて会ったときと同じように目を開けると…彼女がいた。
 
「あはは〜 おはよっ☆」
「な、なんで君が…」
「ん? ふん、ふん、『なんで君がこんなとこにいるか』って聞きたいわけね。答えは簡単、私も帰るから」
「え? だって…」
「ふんふん、『だって、君はあそこに住んでるんじゃないのか?』って?私、そんなこと言ってないも〜ん」
「えっと…」
「ん?まだ質問…?」
「君が今この電車に乗ってるのは…?」
「はいはい、それほもう見事な偶然です」
「…ほんとに…?」
「うん、ほんとに。さ、もう質問はないよね?」
「あ、まぁ、うん」
「はい、ではこっちから質問。 王様の最後の言葉を述べよ」
「はぁ…?」
「王様の最後の言葉を述べよ」
 
いたずらっぽくこっちを見て、彼女は笑ってた。
忘れてる、なんてこと全然思ってないんだろうな…
ま、こっちも忘れる気なんてなかったけどねっ!
僕も彼女に笑いかけながら、言葉を返す。
 
「『次に会うまで私のこと忘れないことっ!』だろ?」
「は〜い、よくできました〜 さて、君は私のこと忘れなかったかな?」
「…とーぜん、もちろんだよ」
「そう、よくできましたっ☆ それでは王様からのご褒美で〜す」
「…また、フゥーーーーって奴じゃないだろうな」
「あはは〜それでもいいけどねっ☆」
「いやだ、他のがいい」
「そう?じゃ、はじめまして、私は…………」
 
僕らは初めて自己紹介をした。
これからはじまるふたりなのに、お互いのこと何も知らないなんて変だってさ。
……君と会ったのは偶然で。
僕がここに来て、君がここに居て…
それでもとりあえず…
僕たちの夏休みはまだまだ終わらないらしい…


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