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Leaf Kizuato & WHITE ALBUM



白い痕




by 荒竹



学園祭終了後
「由綺ちゃん、休暇どうだった?」
「あっ緒方さん、美咲さんってやっぱり素敵でした!」
「!?」

「青年」
「はい?」
「君たちの先輩は天才だな」
「先輩って?」
「澤倉美咲さ。学園祭の時の舞台、『絆』。由綺があんまり絶賛するもんでさあ、観客が撮ったビデオで観たのだが。素晴らしい!脚本、演出、どれをとっても超一流だ」
「はあ」
「それでだ、一度話がしたくて、由綺に頼んでこの前彼女と『エコーズ』で会ったのだが」
(そういや、由綺がそんなこと言ってたな)
「おどろいたよ。実はあの劇、彼女の構想では、四姉妹を主役にした四通りのストーリーだって言うじゃないか!またそれがさ、悲恋ありSFありでどれも面白いんだ」

「青年、俺、この話映画にするぜ」
「え?緒方さん映画監督もやるんですか?」
「いや、俺はあくまでプロデューサーさ。作曲は自分でするけどね。とにかく、最高のスタッフでこのホンを映像化してみせる!」

 その後、『絆』は緒方英二の発案により『痕』(きずあと、と読ませるらしい)と改題され、当時の邦画では破格の制作費を投じて完成された。『痕』は始めから四部作として同時期に製作され、それぞれ夏、秋、冬、春に公開された。
一つの事件をさまざまな角度から捉えてみたその手法は映画関係者をうならせ、感動的なラストシーンが観客のすすり泣きを誘い、魅力的な四姉妹に世の男性は狂喜し、人から鬼への変化のシーン等のSFXには特撮マニアも沈黙した。
そして脚本家、澤倉美咲の名は一躍日本中、いや世界中に知られることになった。
誰もが彼女の創作の源を知りたがっていた。

『痕〜最終章〜』のパンフレットの中で、彼女はこう語っていた。
「夢をみるんです、とてもはっきりした。その夢の中では私は男の人で、ある時は遠い昔を、ある時は今の時代でさまざまな事件に遭遇するんです。私はそれを朝起きて書きとめていただけなんです。でも、本当はもっと過激な内容で、とっ、とてもお話できないようなこともあるのですが、それはさすがに書けませんでした」

彼女は知らない。この夢が一人の男の魂がかつて見ていた光景だったことに。
彼女は知らない。この夢はこの男の魂が再び宿った先で、これから見ることになるであろう光景であることに。
彼女は知らない。この時空を超えた夢は、彼女の「呪われた血」が見せていたことに。
彼女は知らない。彼女の母親の旧姓が「柏木」だったことを。

「ふーん。『痕』の作者って、夢で話を思いついていたのね・・ 」
「千鶴姉。あたしにもパンフ見せろよ」
「ずるーい、梓お姉ちゃん、次は私だよ」
「初音はまだ字あんまり読めないだからいいじゃないか。それにしても、この姉妹って、あたし達にホンっと似てるよなぁ。初音なんて、名前まで一緒だし」
「本当だね。じゃあ梓お姉ちゃんはあの元気な2番目のお姉ちゃんだね」
「そうだねぇ。あいつも、もうちょっと悪い奴やっつけてくれればもっとかっこよかったのになあ」
「そうすると楓は3番目の、なんて言ったかしら、生まれ変わりの女の子ね」
「エディフェル」
「へー。楓、よっくそんな難しい名前覚えたね」
「うん・・(どうしてだろう。昔からこの名前、知っていたような気がする。それに映画の場面も、どこかで見たような気が・・)」
「じゃあ、千鶴姉は最初の映画に出てたおばさんだ」
「(むかっ)おばさんじゃないわ。お姉さんよ」
「誰も千鶴姉がおばさんだなんて言ってないだろ」
「そっ、そうね。でも私だったら、あっ愛してる男の人に、『殺します』なんて言えないわ」
「うそつけ」(ぼそっ)
「あ・ず・さ。今何か言った?」
「いっいや、なにも」(ぞくっ)

「でもエイガに出てたみたいな、かっこいいお兄ちゃんは私たちにはいないね・・ 」
「そうだね」
 こくん。
「ふふっ。そうでもないわよ」
「え!?」
「今度の夏休みにねえ、東京からいとこの男の子が遊びに来るの。梓より二つ上ってお父さんが言ってたから、みんなのお兄ちゃんで、私の弟になるわね」
「わーい!ねっねっ。そのお兄ちゃん名前なんて言うの?」
「たしか・・ 」



そして、8年後、物語は始まる。


                 <了>



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