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Leaf Visual Novel Series Vol.2 「痕」



氷の雫


前編

by まろびー



雪が降る。街に、山に、そして、人の心にも・・・・・・・・・。


少し、外へ出てみませんか?と千鶴さんが言った。
深夜のそれも、しんしんと雪が降ってる中に出たいと彼女は言う。


あれから、一年と少し経った。
俺は、一度東京に戻ったけど、長期の休みに学校が入ると、
必ずこの柏木家にやって来ていた。
そして、いつも、此処の四姉妹と家族の様な時間を過ごしていた。
梓はあいかわらず、口も悪いがなんとなく落ち着いた情緒を見せる様になり、
楓ちゃんは、昔の様に良く笑う人懐っこい子になりつつあり、
初音ちゃんも少し大人っぽくはなったけど今もお兄ちゃんと俺を慕ってくれる。
そして、千鶴さんは、俺の横ではにかみながらこちらを見つめている。
この間、鶴来屋の大番頭さんに会った時に番頭さんも言っていた。
「ちーちゃんも最近、険が取れて、昔みたいに良く笑う様になった」
あの大番頭さんだけは、この柏木家の「裏」の事情を含めて知っている人で、
俺の親父や祖父、千鶴さん達の親父さんに仕えてきた人だから、
千鶴さんが良い方に変わっていくのを何より喜んでいた。
そして、俺と千鶴さんがうまくいくまでは老け込む訳にはいかんって言っていたっけなぁ。

「どうしたの?千鶴さん。こんな夜更けに?しかも、外、雪降ってるよ?」
「・・・・千鶴って呼んで下さいって言いませんでしたっけ?」
「ご、ごめん。なかなか、呼びづらくって」
「呼んでいただけます?」
「・・・千鶴」
「・・・はい」
・・・・・・・・・・・・まるで、新婚さんみたいだ。
「それで、どうしたの?急に?」
「少し、だけですから。散歩しません?」
どうしたのだろう?今夜は、やけにこだわるなあ?
「いいですよ。でも風邪でも引いたらつまらないですよ?」
「じゃあ、すぐに行きましょう。耕一さん。玄関で待っててくださいね」
そっと襖を開けると彼女は部屋を出ていった。
一体何事なのだろうか?

夜中なので足音を忍ばせて、玄関に向かう。
そこで暫く待っていると千鶴さんもやって来た。
そうっと玄関を出る。
寒い。震えが来る。
「こちらですよ。耕一さん」
千鶴さんが俺の手を引いて山道を登って行く。
サクサクと雪を踏む音以外なにも聞こえない。


                        (つづく)



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