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Leaf Visual Novel Series Vol.2 "Kizuato"



咎を背負いし者……




by 遊真



 
「ただいまっ。誰かいる?」
覇気とした声で、梓が広い家の中へ呼びかける。
玄関には鍵がかかっていたのだから、もちろん返事が返ってくるはずも無い。
くるりと梓が、振り返った。
「仕方ないな、耕一、着いてきて。」
そう言うと、通学用の靴を脱ぐ。
耕一はその後に続いた。
年季の入った木床は、柏木家まで歩いてきた足の裏をひんやりと冷やす。
「こっちだよ。」
そういって左手に折れると、縁側に出た。
先程見た池がすぐ間近にある。
上手い具合に日が射しこんでくるのは、この家の造りのせいだろう。
そうして二つ程部屋をやり過ごすと、三つ目の明り障子の前で梓は立ち止まった。
「ここが耕一の部屋。」
なんの抵抗も無く、するりと障子戸が開く。
「おっ、広いな。」
まず目を見張ったのは、部屋の広さ。
客室だと思うのだが、十四、五畳はある。
耕一のアパートが六畳一間だから、これは結構な感動だ。
「ちゃんと掃除したんだから、あんまし汚さないでよね。」
中に入って感嘆する耕一に、何がそんなに珍しいのだろうかという表情を梓はする。
「解ってるって。」
「で、どうする?」
「何が?」
「これからに決まってるじゃない。少し部屋で休む?居間の方でお茶でも出そうか?あっ、それとも叔父さんの……。」
たぶんに想定される言葉を耕一は自然に遮った。
「茶でももらうか。」
「解った、それじゃ、居間の方へ行こう。」
「ああ。」
どさりと、部屋の中央に荷物を置いて、耕一はまたもや梓の背中についていく。
歩きながら。
「なあ、梓。」
「何?」
梓は背を向けたまま返事を返してくる。
耕一も、よくも整然とした庭を眺めながら問い掛けた。
「皆はどう?」
「どうって?」
「千鶴さんも、楓ちゃんも、初音ちゃんも元気か?」
「………さあね。」
唐突に無愛想になった声音に、耕一は、視線を梓の背に戻す。
「さあねってなあ、お前…。」
「……健康って意味なら、みんな元気だよ。でも精神的にどうかって言われたら、私には解らない。」

痕が確かにそこにあった。
梓の背中を見つめながら、耕一はそれを実感する。
「あっ、もちろん私は元気だけどね。」
くるりと振り返った梓の顔は明るい。
(嘘つくんじゃねえよ。)
元気だというなら、その瞳に宿った陰りをどうにかして欲しい。
「そっか、そうだな、こういう時、がさつな性格っていうのは有り難いもんだよな。」
胸中とは裏腹な言葉がするりと耕一の口から紡ぎ出される。
梓の顔が赤く染まった。
(それでいい……。)
無理矢理、痕を指摘するような事はしない。
痕は誰しも、己で癒すしかないから。
ただ、痛み止めぐらいには、なってやりたい……なるべきだ。
そんな事で自分の咎は消える事はないけど…。



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