最終章  HAPPY COMBINATION


 これは『With You〜みつめていたい〜』の二次作品です。
 氷川菜織シナリオで話は進行しています。


07/26 (Tue)

「おーいっ! いつまで待たせてんだよっ!」
「悪りぃ、悪りぃ‥‥冴‥‥っ!?‥‥‥‥子?」


 小走りで駅前の待ち合わせ場所にやってきた知章は絶句する。
 冴子はいつものホワイトとベージュのツートンカラーのパーカーではなく、ビガラ
スグリーンの袖無し肩紐のワンピースに、手には小さなポーチを持っていた。


「な、何だよ‥‥悪りぃか?」
 冴子はその反応を予測していたらしく、口を尖らせる。
「いや‥‥正直、ちょっと驚いてな」
「その‥‥ば、婆ちゃんが‥‥」
「でも、似合ってるよ」
「フン。どーせ内心じゃ馬鹿にしてるくせに‥‥」
「そんなことないって」
 知章にそうニッコリと微笑まれるが、冴子は素直になれずに更に悪態をつく。
「ファ、ファッションセンスの無いヤツに何言われても‥‥」
「俺ってお洒落だぞ」
「‥‥嘘つけ」
 しれっとした顔で言う知章に、即座に冴子は切り返す。
「下着はカルバン・クラインだし‥‥」
「んなの知るかっ!」
「因みに傘もそうだぞ」
「そーかよ、あー偉い偉い」
 付き合ってられないとばかりに手をパタパタと振る。
「ちぇ・・本当のお洒落っていうのは、見えないところでだな‥‥」
「意味ねーよ。んなの」
「ちぇっ‥‥つれないの」
「おめえがそうさせてるんだろ‥‥ったく‥‥折角‥‥」
「冴子」
「あん?」
「ここだけの話な」
「あ‥‥ああ‥‥?」
 知章は急に声を潜める。
 そして、



 冴子の耳元で、一言、囁く。



「ばっ!!‥‥なっ!?‥‥」
 顔を真っ赤にして、動揺する冴子。
「はははっ‥‥そろそろ、行こうぜ。こんなところでウロウロしててもしょうがない
し」
「‥‥ったく‥‥しょうがねーな」
「ほら‥‥」

 大きくわざとらしくため息をついて心を落ち着かせた冴子の前に、手を差し出して
くる。


「‥‥・あ‥‥ああ」


 冴子は一瞬、躊躇した後、相手の顔を見てから軽く頷いて、その手を取る。
 そして力強く握り締める。



「じゃ‥‥まずは‥‥」
「‥‥‥‥あたいも‥‥」
 その態度にも動揺を出さない知章に、冴子はボソリと言う。
「ん?」





「あたいも‥‥さ」





 ‥‥ほんの数秒だけ、二人は静かになった。





‥‥‥Fin     


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