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Original Novel LAI Presents



濡れたアスファルトで弾け跳べ 






ぽつ、ぽつ、と足元の水溜りでむなしい音がし始めたのは知っていた。

・・・・・・気づけば、土砂降りの雨だった。





天気予報を見ていなかったわけじゃない。

ただ、今日が良かった。それだけ。





さっき、飲む気もないのにもらった酒。

飲む気もないのにコルクをとれば、独特の、頭を麻痺させるにおい。



無意味だと知りながら、しばし注ぎ口からその液体を眺めて。

彼が、手首を180度回せば




とくとくと、じれったい音を立てて落ちてゆく。

でもそれは、すぐに雨音に消えて、俺にしか聞こえなかっただろう。

憤りも苛立ちも、気づかれずに周りにまぎれていく。





「もったいねー、何やってんのお前。」

頭上で聞こえた声が、誰のものかは知っている。

だからいちいち見上げることなく、すぐに立ち上がった。

「ほしいんならやるよ」

「そりゃどーも」

あとから現れた少年は、受け取ったビンを自分の目の高さまでを持ち上げて、ちらと一瞥した。

と、突然投げた。

当然ビンは割れ、赤い液体があふれ散って咲いた。




「何やってんだよ。」 

笑いを含んだ声ではき捨てれば。

「俺らへのセンベツ。」



こちらの顔を覗き込むように、ニヤリと笑う。

「はっ。・・・・・・・・上等だな」

投げられたビンはもうビンではなく。

酒はもう泥水にまぎれていて。




―――――たった一瞬でかまわない。





「じゃ、行くか?」

「『やるか?」だろ?」

互いに、勝ち誇ったように笑った。

それが最後でも、・・・・・・・・最初だったとしても。





 濡れたアスファルトで弾け跳べ 俺は陽気なモロトフカクテル






――――――この行く末など、
                      誰も知らなくていい―――――ー




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