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MOON Short Story



終章:ETERNAL SEEKER




by 上月 みやこう



1999年4月x日
 何かが鼻の上をくすぐる感触に目がさめた、、、。
 桜の花びら、白い天井、消毒薬の匂い、リノリウムの床、、、
 ここは、病院なのか?
 長い間、夢を見ていたような気がする・・・
 誰かが僕の顔を覗きこむ・・・何かを言っているが、僕には聞こえない。
 視界が歪む・・・頬の上を塩水が流れる、、、
 夢じゃ無かった、手に残る暖かさ、肌の触れ合った感触、唇の柔らかさ、魂の繋がり、、、
 僕は大事な物を失ったのだ、、、その悲しみに抗うことが出来ず、ただ泣くことしか出来なかった。

1999年8月x日
 僕は新興宗教”FARGO”の施設で気を失っているのを救助され、あの病院に収容されていたらしい。
 長い昏睡の為、体全体の筋肉は衰え歩くことも出来ず、今は車いすの世話になっている。
 ”FARGO”壊滅の事件について調べたが、僕の探している名前は結局見つけることが出来なかった。
 みさおも、母も、父も失った僕に生きてゆく価値など在るのだろうか?
 夏の日差しの強い青空の中、ただ空を見あげることしかできなかった。

1999年10月x日
 リハビリを続けているが、未だ1メートルも歩くことが出来ない。
 鉄の棒にしがみつき立ち上がる、50センチも歩かずに足が悲鳴を上げ倒れる、、、体中に痛みが走る。
 夕暮れの日差しの差し込む中、あの日、屋上で見た夕日を思い出す。
 裏切りへの代償、、、信じてくれたものを見捨てた痛み、、、今は、ただ耐えるしかなかった。
 再び歩こうとする、、、膝が砕けるかと思ったが1メートルを歩くことが出来た。

1999年12月x日
 高校へと復学した、、、友人も出来た、、、
 しかし、絶対的な何かが欠けている感じに心が傷む。
 街の中を歩く、、、色彩の無い世界、、、実体の無い影法師達が行き交う交差点の中で、何かを見つけ立ち止まる。
 光?・・・
 空を見上げる、、、ビルのすき間に覗く、灰色の空から雪が落ちてきていた。
 もう、そんな季節なのか・・・
 クリスマスソングの中、一人、空を見上げ立ち尽くす。

2000年3月x日
 廃墟の中に立つ、、、”FARGO”僕から全てを奪った存在、、、。
 今は瓦礫と雑草しか残されてはいない・・・やり場の無い怒りが込み上げてくる。
 ”FARGO”に対する怒り?・・・違う!自分自身に対する怒りだ。
 何かを求めて廃墟の中を彷徨う、、、なにも無い・・・絶望する。
 もう帰ろう、、、
 そう思った瞬間、誰かの気配を感じる・・・背後だ!
 振り向いた先に居たのは白髪の女だった、、、いや、歳は同じぐらいらしい。
 「また会えたね、、、浩平くん。」
 「誰?僕を知っているのか?」
 「もう、僕を忘れたなんて、、、酷いな君は。」
 「シュン?なのか?」
 「思い出してくれて嬉しいよ。でも、それはどうでもよいことだ。大切なのは、今日、この時間に、この場所へ君が来てくれたと言う事だよ。」
 「どういう事なんだ?」
 「説明する必要は無さそうだ。もう、盟約の時はすぐに迫っている。僕の分まで幸せになってくれ。最後に君に逢えて嬉しかったよ。さようなら。」
 その瞬間、世界が白色に染まった・・・直感する。世界の衝突、破壊、そして融合。
 約束の地、永遠の盟約、、、永遠の時・・・
 新たな地へと僕は降り立つ。
 そこには、帰ってくることを約束した人がいた。
 一歩目を踏み出す・・・まだ、気づかない。
 二歩目を踏み出す・・・気づいた。
 「ただいま。」・・・他の言葉は要らない。
 三歩目を踏み出す・・・驚きに目が開かれる。
 「おかえりなさい。」・・・そして、新たなる世界と永遠の時は流れ始めた。

 了


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