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Original Novel MOTOKA Presents



エンジェルズ・サーチャー


第2話

出会いと空腹



儀式が終わり羽根がより大きく立派になったユーティアはメリアをはじめ数人の友人たちとおしゃべりをしながら歩いていた。儀式と言ってもそんな大したことではなく、羽根が大きくなって話を聞くだけだ。学校の集会に似ているかもしれない。
ユーティアたちが歩いているのは街の郊外に位置する小さな公園だった。この公園の端っこには建物があった。そこには大きな鏡が置いてある。その鏡は、人間界と天界を結ぶゲートのようなものである。こんなとこに放置してあるんじゃ誰でも入れるのでは?と思うかもしれないがその実入るのはかなり難しい。何故ならずっと監視の目が光っているからだ。基本的に人(天使)と監視カメラが見張っている。大体それ以前に人間界へ行こうとする天使の方がまずいない。まぁ、時々人間界へ行きたいと言う物好きな人もいるのだが。人間界は天使にとってはあくまで異世界なのだ。極端な話、人間界は野蛮な奴らが住む世界だと考えている節がある。まぁ本当に極端な例だが。ちなみに、絶対人間界へ行ってはいけないという決まりはない。ある一定の年齢―要は十六歳だが―に達していて、許可をもらえば行ってもいいことになっている。なってはいるのだが、実際に人間界へ行った天使は一〇〇人に満たない。
と、その大きな鏡がある建物の前に来ていた。いつもはいるはずの監視人がいない。さらに何故か監視カメラも作動していないようだ。
監視人さんが監視カメラの点検でもしてるのかな?
ユーティアはぽけっとそんなことを考えた。
と、メリアがユーティアを始めみんなに話しかける。
「ね、ね、せっかくだからちょこっと入ってみない?」
確かに普段は入れないのだから今は中を見る絶好のチャンスだ。しかし、だ。もし見つかった場合は大目玉である。いや、大目玉ですむかどうかも怪しいところである。
だが、普段は立ち入り禁止の場所。それを見るチャンスは今しかない。となると純粋な十六歳の少女の好奇心を抑える事はもはや不可能だった。
「賛成!」
「あたしもっ!」
と、次々に声が上がる。ユーティアはそれなりにキチンとした方なのでしばし迷ったが、
「ま、ちょっとぐらい……いいよね」
やっぱり好奇心に負けた。
ユーティアたちはこっそりと建物の中に入る。気分はまるで女スパイだ。
中は何もなくただ広々とした部屋の中に大きな鏡―要はゲートが置いてあるだけだった。だが、その鏡の立派なこと。見事なまでの装飾が施されている。見る人はほとんどいないというのにここまでする必要があるんかい!って言うぐらい見事な鏡だった。
意味あるのかなぁ?この装飾。
まったく同時にその場にいた全員がそう思った。
と、その時、扉の開く音がした。
見つかった!?
そう思って振り向いて見るが予想に反してそこにいたのは一人の少年だった。
長身で短髪、筋肉も多くいかにもスポーツマンといった感じの少年だった。
「ミ、ミカラくん……おどかさないでよ……」
メリアが、は〜、と息をついて言う。ちなみにユーティアは、あう〜、と言っている。
「何だよ。俺はユーティアがここに入ってったから気になってついてきただけじゃないか」
ミカラは口を尖らせて言う。彼も今日儀式を受け羽根が立派になった一人である。メリアの情報を信じるならユーティアのことを好きな一人である。信じるも何も事実らしい。何でも彼の妹がメリアと知り合いで極秘に情報を流したらしい。一体どのようなことがあってこんな情報を流す気になったのかは未だ謎である。
それはともかくミカラはユーティアに近づくと顔を近づけて聞く。
「ユーテイア、何でこんなとこにいんだよ」
ユーティアはミカラが顔を近づけてきた分だけ身体を引いて答える。
「好奇心に負けたの」
ミカラは再び顔を近づけて言う。
「お前、そんな奴だったけか?」
「いいじゃない。私の勝手でしょ」
ユーティアは再び身体を引いて言う。正直ユーティアはミカラが苦手だった。何かにつけてちょっかいをだしてくるし、いちいち余計なことを口にする。
それは実は好きだという感情の裏返しなのだが良くも悪くもユーティアは純粋だった。
つまりミカラが言ったりちょっかいをだしてくるのをユーティアが真に受けるのである。そんなだからユーティアのミカラに対する感情は苦手、はっきし言えば嫌いなのである。哀れと言えば哀れだがユーティアの性格を見抜けてないミカラもミカラである。
「何だよ、せっかく心配してやってんのに」
また懲りずにユーティアに近づくミカラ。ユーティアがミカラくん、いいかげん近づくのやめてよぅ。とミカラが聞いたら泣きそうなセリフを言おうとした瞬間!
「何をやっているッ!!」
強烈な声が飛んだ。ミカラは思わずびっくりして前につんのめる。前にはユーティアがいる。となるとどうなるか。結果、自然とユーティアを突き飛ばすことになってしまった。ミカラ自身はユーティアに当たったことで止まったがユーティアはそうはいかなかった。
これでユーティアの後ろに何もなければ怒られるだけですんだかも知れない。しかし、ユーティアの後ろにはあの鏡があった。
誰かが止めに入ることも出来ない。ユーティア自身が体制を立て直し踏みとどまる事も不可能だった。その結果、ユーティアは至極あっさりと鏡の中に吸い込まれていった。
人間界へ続く、ゲートの中へと……。


「ふぅ、終わった〜」
一樹は学校が終わり放課後になって教室で伸びをしていた。と、祐一と一人の少女が近寄ってきた。少女の名は渡瀬瀬名。祐一の幼なじみである。ということは一樹の幼なじみでもあるのだが。いわゆる仲良し三人組である。ちなみに瀬名は人見知りをしないタイプである。だから誰とでも普通に話せる。瀬名は普段はおとなしいフリをしていて(裕一談)地で話せるのは一部の友人たちだけである。もちろん祐一と一樹には地で話している。
「ねえねえ、かずちゃん」
瀬名は一樹のことをかずちゃんと呼ぶ。一樹は最初嫌がっていたのだが瀬名がまったくやめる気配がないのでもう諦めている。ちなみに祐一のことはそのまま祐一と呼んでいる。何でもゆうちゃんと呼ぶと友人のゆうちゃんとかぶるらしい。まぁ、一樹にとってはどうでもいいことだが。
「ん?何、瀬名」
一樹は瀬名の方を向き聞く。と、何故か祐一が答えた。
「買い物に付き合ってほしいんだと」
「何で僕なんだ?祐一と一緒でいいんじゃないか?」
一樹がもっともなことを口にする。すると祐一が一樹の疑問をとかした。
「俺は荷物持ち。一樹には夕飯の材料とか選んでほしいんだと」
「なるほどね」
一樹は祖母から料理の材料の選び方も教わっていた。祖母曰く、
「おいしく食べるにはまず材料から!」
らしい。実際スーパーとかで売っている材料とかはともかく何故か山菜やキノコの取り方まで教わった。一体祖母は何を考えてそういうことを教えたのか未だに謎である。と言うか、その謎を解明しようとは思わなかった。解明する意味も無いし、知ってて困るようなことじゃないからだ。
「そういうことか。じゃ、五時ぐらいに公園集合でいいかな?」
「何でだ?直接今行けばいいじゃないか」
祐一がすっかり忘れきった口調で言う。一樹は、はぁ、とため息をついて祐一に言う。
「祐一、僕は財布家に忘れてきたんだぞ」
そう言うと祐一はあっ、と声を上げる。そしてポリポリと頭をかく。
「そういやそうだったな。じゃ、五時公園な」
そう言うと祐一と瀬名は帰っていった。
二人を見送ってから一樹も立ちあがった。
「さて、僕も帰るかな」
鞄を持って昇降口へと向かう。
今日の晩御飯何にしようかな?
そんな他愛のないことを考えながら一樹は家路へとついた……。


気付いた時、そこは見知らぬ場所だった。
当たり前である。ここは人間界なのである。天界で生まれ育ったユーティアにとって人間界は見ず知らずの場所なのである。
ただ、場所と言うのは不適切かもしれない。何故なら今ユーティアがいるところはどこからどうみても家の中だったからである。
キチンと整頓されたリビング、掃除も行き届いているようでとても綺麗だ。
ここに住んでいる人ってマメな人なんだなぁ。
ユーティアはついついそんなことを思ってしまった。
「ってそんなこと考えてる場合じゃないや」
口に出して呟きとりあえずこれからどうするか考える。
「天界に戻ろうにも戻り方わからないし……。あそこにはメリアとかもいたし、きっと捜しに来てくれるよね」
捜しに来ないのでは?という可能性は考慮にいれない。いれると本当にそうなりそうで怖いからだ。
きゅーっ。
―と、ユーティアのお腹が鳴った。辺りを見回して時計を見つけるとユーティアは時刻を見た。
午後三時四七分。
日にちが一日ズレているだけで時読みは天界も人間界も一緒なのだ。メリアたちと建物内に入ったのが午前一一時二〇分。ということはかなり長い時間気を失っていたようだ。
そりゃお腹も減るよね。
ユーティアはそう思って食べ物がないか探す。
―あった。冷蔵庫発見。
ユーティアはがちゃ、と冷蔵庫を開けて食べ物を探す。そこでハッとする。
もしかして私のやっていることって犯罪!?
もしかしなくても犯罪だった。不法侵入はまだ諸々の事情があるから仕方ないとしても、人の家の食べ物を食べようとするのはマズイだろう。
しかし、ユーティアは空腹だった。そして目の前には食べ物。
……結局、ユーティアは食べ物の誘惑に負けた。


一人家路につきながら一樹は深いため息をついた。
この家に帰る時と言うのが一番嫌いだった。誰もいない。呼びかけても返事は返って来ない。
静かすぎる家の中。静かすぎて逆に不気味になる家。そんなところに一人で帰らねばならない。そんなところが一樹は一番嫌いだった。
そんなことを考えているうちにいつのまにか家の前まで来ていた。一樹の家は一軒家である。昔は両親と一緒に住んでいたのだが両親が死んだ今は一樹が一人で住んでいる。この大きな家に一人は大きすぎるのだが。
鍵を使い、家のドアを開けて中に入り、いつも言っている言葉を言う。
「ただいま」
今日もその言葉は静寂の中へと消えるはずだった。
誰もいないのだから消えて当然である。
だが、今回は違った。
「お帰りなさ〜い」
遠く、リビングの方から声が聞こえてきた。
一樹はしばし呆然としていたがやけに冷静に考える。
ただいま。って言ったら、お帰りなさい。って言うのは当たり前だよなぁ。
確かにその通りである。しかし、問題はそういうことではなかった。ようやく正常に作動してきた一樹の頭はある重大な疑問にぶつかる。
すなわち、誰がいる?
一樹は一瞬考え―すぐさま慌しくリビングへと向かう。
バンッ!!
激しい音をたてリビングの扉が開く。そこで一樹は見た。
錯乱している食べ物や食べカス等のゴミ。そして、中央に座って食べ物をぱくついてる少女を。
肩ほどまでのばした青紫の髪に澄んだ紺碧の瞳。美少女と言って問題ない。ただ気になるのは背中についている羽根である。アクセサリーではないようだが。それに何故か羽根が片方しかない。
一樹は開いた口が塞がらなかった。てっきり泥棒かと思ったのだが(人が帰ってきて返事をする泥棒はいないと思うが)どうやら違うようだ。第一泥棒がこんな少女でなおかつ呑気に食べ物をぱくついてるわけがない。
一樹は開いた口を何とか塞ぎ頭を二,三度振って少女に話しかける。
「き、きみ、誰?どうしてここにいるの?」
一樹がそう問うと、少女はいきなり声を張り上げた。
「あう〜〜〜ッ!!あうあうあう〜〜!!」
何故か少女はあう〜を連発している。
もしや聾唖者?
そんな最高にくだらないことを考えた一樹はすぐにその考えを否定する。
さっき普通にお帰りなさいって言ってたじゃないか。僕も年取ったなぁ。
まだ若い十六歳の少年のくせしてやけにじじくさいことを言う。
それはともかくひとしきりあうあう叫び終わった少女は落ち着いたのか、じっと一樹を見つめている。
あまり間近で女の娘に見つめられたことのない一樹はどぎまぎしながら少女に話しかける。
「え、と……。きみは、誰かな?」
一樹がそう質問すると少女は透き通るような声で言った。
「はい。ユーティアって言います」
そう言うと少女―ユーティアはぺこりとお辞儀をした。
一樹も慌ててお辞儀をして自分の名前を名乗る。
「えと、僕は山口一樹。十六歳です」
初対面で年齢まで口にする必要があるかどうかわからないが一樹は年齢を言うことにしている。何故なら一樹はやや幼く見られがちなのだ。幼く見られるどころか高校入学当時は女の娘と間違えられた。一樹の顔は女っぽい顔立ちなので女装すればまず男だとはわからない。本人は気にしているのだが。昔は裕一や瀬名に遊ばれたものだ。情けないといえばそれまでだが。ついでに言えば出そうと思えば声もアルトぐらいまでいく。
「あ、私と同い年ですね」
ユーティアはやや弾んだ声で言う。
「えと、ユーティアさん」
一樹が呼びかけるとユーティアは首を横に振った。
「ユーティアでいいですよ」
「そう?じゃ、僕のことも一樹でいいよ」
「はい!」
ユーティアは何故か力強く頷く。と、ユーティアが話しかけてきた。
「ところで一樹さん。何で女の娘なのに男の子の服着てるんです?」
ずごあっ!!
そのあまりに無邪気な質問に一樹はまともにひっくり返った。
や、やっぱり間違えられたか……。
胸中で呟きながら、そんなに僕って女顔かなぁ?と考え多少悲しくなる一樹だった。
「一樹さん?」
ユーティアが呼ぶので一樹は起きあがった。そして、ユーティアの間違いを正す。
「ユーティア……僕は男なんだけど」
しばし、沈黙の時間が流れた。ユーティアはぽけっ、としたまま動かない。
どれくらいそうしていただろうか。復活したユーティアが慌てた声で言う。
「あ、あう〜っ!ご、ごめんなさい!」
「いや、いいんだ。どうして僕はこう女の娘に間違えられるんだろう?」
「あうう〜〜」
必死で弁解するユーティアが可愛くて思わず一樹は笑みを浮かべる。するとつられてユーティアも笑った。そして、二人で顔を見合わせ、しばらく笑った。
と、一樹はユーティアに言おうとしていたことを思い出した。
「あ、そだ。ねえ、ユーティア。きみって……天使?」
「ふぇっ!!?」
ユーティアは笑うのも忘れてひどく呆気にとられた顔になる。
しばらく言葉が出ないようでわたわたと慌てていたが数回深呼吸をして落ち着くと―それでも慌てた声で言った。
「かかかかか、一樹さんッ!!?どうしてわかったんですか!?」
一樹は多少なりとも驚いていた。羽根があるから天使かなぁ。と思っただけだったのだがどうやら当たってたようだ。しかし、こうも羽根を堂々と出していたら普通わかるんじゃないのかな?と一樹は思う。
「どうしても何も……羽根があるじゃないか」
「!!?」
一樹のさも当然といわんばかりの言葉にユーティアは完全に硬直した。
そして、何とか震える声で言葉を搾り出す。
「一樹さん……この羽根は、普通の人には、見えないんです……。って学校で習いました」
後半部分はちっちゃく言ったので一樹には聞こえていなかった。一応天界でも人間界に関することは習っている。何でも物好きな学者が人間界へちょくちょく行ってるらしい。ユーティアたちにはあまり関係ないことだが。
「ふ〜ん」
一樹のあまりにあっさりとした言葉にまた硬直するユーティア。
「ふ〜ん。ってそれだけですか!?驚かないんですか!?つまり一樹さんは普通の人間じゃないってことですよ!?」
「そりゃそだろ〜な」
一樹は至極あっさりと言う。確かに一樹はいろんな意味で普通の人間じゃない。六年前に事故にあい、両親を失い、自分自身も臨死体験をするなどそうそうあることじゃないだろう。だが、それよりも一樹には普通じゃないところがあった。
視えるのだ。
幽霊、人魂、そういったものが一樹には視えるのだ。いわゆる霊感がある人間なのである。一樹は。確かにこれは普通じゃない。普通じゃないが一樹はまったく気にしていなかった。元からお気楽な人間なのだ。自分のこの霊感のことを、へぇ〜凄いなぁ。ぐらいにしか感じてない。
ちなみにこのことを知っているのは一樹の他には祐一と瀬名ぐらいだが二人ともあまり信じてないようだ。って言うか信じてない。教えたことすら忘れてるだろう。
と、一樹があまりにあっさりユーティアの言葉を肯定したものだから言った本人であるユーティアは見事なまでにカチンコチンになってしまった。液体窒素をかけてもここまではカチンコチンにならないだろう。ある意味壮観である。
壮観だがこのままユーティアを凍らせておくわけにもいかないだろう。一樹はユーティアの肩をゆさぶり呼ぶ。
「ユーティア」
「…………」
返事がない。ただの屍のようだ。
何ていうまるで何処かで聞いたような言葉が頭を駆け巡る。
それはともかく今だ反応がないので一樹はより大きな声で呼んだ。
「ユーティアッ!!」
「はっ!」
一樹の声に我に返るユーティア。今度は成功したようだ。
「あ、一樹さん……一樹さんがあんまりにもあっさり言うからびっくりしちゃいました」
まだちょっとぽけっとした声で言うユーティア。
「ごめんごめん。普通じゃないって言うのは多分僕、霊感……ってヤツがあるからだと思うんだ」
「霊感……ですか?」
「そ。僕がユーティアの羽根を視えるのもそのせいじゃないかなと思うんだけど」
あまり自信ない声で言う一樹。実際本当に自信がない。そもそも自分が霊感を持っているのかということについても半信半疑なのだ。
「そうですか。なるほど」
ユーティアはあっさり信じてうなずく。
純真なんだなぁ。
と一樹はぽけらっと思う。
そこで再び思い出す。聞きたかったこともう一つ。
「ね、ユーティア。何で羽根、片方しかないの?」
その問いにユーティアは何言ってるんですか一樹さん。といった表情を浮かべる。
「ちゃんと両方ありま……」
言いかけてユーティアは自分の背中を見たまま硬直した。さきほどより数倍は強い硬直だ。
しばらくそのままでいたが急に慌て出した。そして、かなり、いや、そうとう慌てた声をだす。
「え?え?え?な、なななななな、ない!?ないないないないない羽根が片方なーーーいッ!!」
身体中で慌てを表現しているユーティア。と、ユーティアは一樹の胸元をつかんでかっくんかっくん揺さぶった。
「どうしようどうしよう一樹さん!どうしよう!!」
かっくんかっくん揺さぶられているので脳味噌が高速シェイクされ白目になりそうになるのを必死で堪えユーティアに言う。
「落ち着けッ、落ち着けユーティア!!」
ハッ、と我に返ったユーティアは慌てて手を離す。その拍子に一樹の体制が崩れ、頭を、ごん、とかいう音で床に打ちつけていたようだがどうでもいいことなので置いておく。
「どうしよう〜〜!あの時かな!?それとも……」
「ってて……とにかく落ち着こう。それと僕に説明してくれよ。さっぱりわからないんだ」
打った頭をさすりながら一樹は説明を求める。ユーティアがどうしてそんなに慌てているのかもわからないし、そういえばどうしてここにいるのかもわからない。
またしばらくあうあう言ってたユーティアだが、ようやく落ち着いたのかぺたんと座りなおして話し始める。ここに来ることになった理由を……。

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