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Original Novel MOTOKA Presents



エンジェルズ・サーチャー


第6話

探しに行こう!



「ふわぁぁぁ……」 一樹はベッドの上で大あくびをした。怪談大会終了後、各自慌てて部屋へと帰っていった。ちなみに部屋は勝手に選んでいるようだ。大きな家である以上、部屋は余りまくっている。 「そんなに怖かったかなぁ……?僕の話」 三人の反応を見る限りは相当怖かったようだが、幼いころから幽霊などが視える一樹にとっては大して……と言うかほとんど怖くない。現にさきほどの四人目事件(勝手に命名)でも一樹は一人悲鳴を上げなかった。驚きはしたが。 有り体に言えば慣れてるのだ。 習うより慣れろ。 全然違うな、このたとえ。 「う〜ん」 一樹は大きく伸びをすると寝ようと布団をかぶりなおす。と、 とんとん。 ノックの音が聞こえる。 誰だろうと思い身体を起こすと扉の向こうから声がした。 「かずちゃん、起きてる?」 どうやら瀬名のようだ。こんな夜中に何の用だ?と思いつつ返事をする。 「ああ、起きてるよ」 そう言うと瀬名は部屋の中に入ってきた。一樹は入ってきた瀬名の格好を見て驚いた。まぁ、パジャマは普通だろう。しかし……、手に持ってる枕と引きずってる布団は何だ? どう見てもここで寝る格好にしか見えない。 まさか……、ここで寝る気か!? そして、一樹の予想は的中する。 「ねぇ、かずちゃん……一緒に寝ていい?」 「却下!」 即座に一樹は答える。 「え〜、何でよぉ」 瀬名は口を尖らせて言うが一樹は淡々と、 「どうせさっきの怪談大会で怖くなって眠れんとか言うんだろ!お前らが始めたんだから怖がるなっての!」 どうやら図星だったようで瀬名が、うっ、と返答につまる。しかし瀬名はなおも引き下がって、 「だって……、かずちゃんすっごい怖い話するんだもん……」 しかし一樹は冷静に、 「お前らがやれって言ったんじゃないか。僕は知らん。そんなに怖くて一人で寝れないなら祐一んとこでも行けよ」 一樹が言うと瀬名は明らかに狼狽した声で言う。 「だ、だって、祐一のとこに行くなんて……、お、襲われちゃうよ!」 何で僕が襲う可能性を考慮に入れないんだよ。 と、一樹は思ったが口には出さない。瀬名を襲う気はさらさらない。と言うか、襲えない。襲ったが最後、間接の二つや三つ外されるのは目に見えている。 「ウソつけ」 一言のもとに切り捨てる一樹。実際は襲われるんじゃなくて単に恥ずかしいのだろう。祐一のもとに行くのが。 「なぁ、瀬名」 「な、何よ」 やけに優しい口調で言う一樹にちょっとびびったのか、後ずさりする瀬名。一樹は優しい口調のままで言った。たった一言を。 「祐一のこと好きだろ」 すってーん! これでもかっていうぐらい見事に瀬名はひっくり返った。少しして起き上がったが、その顔はまるでトマトのように真っ赤だった。 「ななななな何を突然おっしゃるのでございますか一樹殿」 よほど慌てているのか口調が変になっている。しかも何故か一樹殿。一樹はそんな瀬名を見て苦笑した。 「そこまで露骨に反応するとは……。ウソ下手だね〜、瀬名」 「うぅ〜〜」 瀬名が俯いてうなる。そして、しばらくしてから一樹に話しかける。 「いつから……、気付いてたの?」 その言葉に一樹はあっさり答えた。 「中二」 すってーん! またもや見事にひっくり返る瀬名。 「わ、私が祐一のこと好きになった時から気付いてたって言うの!?」 瀬名が驚愕した目で一樹を見る。しかしことも何気に一樹は軽く頷く。 「ま、ね。あの頃から瀬名、祐一見る目付き、変わってたからね」 「うぅ〜、かずちゃんスルドイ……」 瀬名は恥ずかしさと驚嘆が混じり合ったような複雑な表情で言う。と、話がそれてることを思い出し、いつもの口調を取り戻して一樹に言う。 「それはそれ!そういうわけだから私は今日ここで寝るね」 「ちょっと待てえぇぇッ!どういうわけだよ!」 一樹が叫ぶと瀬名はニヤリと笑って、 「私の秘密を暴露したわけ」 「ぐッ……」 そう言われてしまうとイマイチ反論が出来ない。しかしここで負けるわけにはいかない。何か言おうとした、その時、 バターン! 扉の開く音と共に祐一が入ってきた。手には枕と布団。 一樹の頭にイヤな予感がはしった。 まさかッ……、祐一も!? そして、またもや一樹の予想は的中する。 「お、瀬名もいたんだ。一樹〜、俺今日はここで寝るわ」 「お前もかーッ!お前は男だろーがッ!怪談で怖がるなーッ!」 一樹が叫ぶと祐一は手早く布団をしきながらさらりと言う。 「男だって怖いもんは怖いッ!」 そう言って布団にもぐりこむ。確かに正論だった。反論できない。と、瀬名がニヤリと笑っている。我が意を得たような表情だ。 はぁ……。 一樹は小さくため息をつくと瀬名に言った。 「……いいよ、ここで寝ても」 「やたっ!」 瀬名は喜びの声を上げると布団をしきはじめる。一樹はそんな瀬名を見ながら言った。 「でもなぁ、ユーティアはちゃんと一人で寝て……」 そこで一樹の言葉は凍りついた。扉が開いてユーティアが入ってきたからだ。手には枕と布団。もはや考えなくてもわかる。 「一緒に寝て……いいですか?」 ユーティアが不安そうに問う。 はあぁ……。 一樹は今度は大きくため息をついてユーティアに言う。 「ど〜ぞ。もう、好き勝手にして」 ユーティアは顔をほころばせる。 それからみんなが寝るまでやたらうるさかったのは言うまでもない。まるで修学旅行のように延々と話し続けていたのだ。 ちなみに一樹の部屋がやたらせまくなったのは考えるまでもないことだ。 チュンチュン……。 外から聞こえてくる鳥のさえずり。カーテンからもれる朝日。そんな朝の中、一樹は目を覚ました。 「う、っくあ〜ッ!」 大きく伸びをして身体をほぐすとベッドから降りる。無論、寝ているみんなを踏まないように注意しながら。 みんなが寝ているので仕方なく廊下で着替えをし、リビングに行く。 「朝食作らないと……」 今日は四人分作らねばならない。まぁ、料理は嫌いじゃないからいいのだが。 ―三〇分後、料理を作り終えた一樹は今だ起きない三人を呼びに行く。フライパンとおたまを持って。 部屋の中に入ると一樹はニヤリと笑い、行動を起こす。おたまでフライパンを叩くという行動を。 「起きろーッ!」 カンカンカンカン!!! ばんさんかん。 何て声が聞こえてきそうなリズムだ。 『わあっ!?』 三人は悲鳴を上げて飛び起きる。 「ほらほら、起きた。もう、七時三〇分だぜ。朝御飯出来てるから着替えてリビングに来いよ〜」 一樹はそう言うとリビングへ向かう。 ―しばらくすると全員が集まった。それぞれ席に座る。 『いっただっきま〜す!』 そして、四人は朝食を食べ始める。 「ん、美味い!久々に一樹の料理食ったなぁ……」 「うん、久しぶりだね。本当に美味しいよ。かずちゃん!」 祐一と瀬名の二人が口々に誉める。 「サンキュー。でも最近マンネリでなぁ……。あ、そだ、ねぇ、ユーティア」 「ふぇ?」 御飯を食べるのに夢中になっていたユーティアは一樹に呼ばれてハッとする。 「何ですか?一樹さん」 ユーティアが問うと一樹はああ、と言って、 「今度さ、上の料理教えてくれない?」 無論のこと、上とは天界のことである。ユーティアはこくんと頷いて、 「はい。喜んで!」 と言った。と、祐一と瀬名が怪訝な表情をしている。 一樹は気になって二人に聞いた。 「どうした?二人とも?」 一樹が問うと二人は同時に言った。 『上って……どこ?』 「あっ」 一樹は思わず声を上げた。この二人にはまだユーティアが天使だとは知られていなかったのだ。一度ユーティア自身が言っているものの、二人は比喩表現だと勘違いしていたのだ。 しまった……失言だったか……。 どうやって誤魔化そうかな〜と考えてた一樹だが、ユーティアが先に言ってしまう。 「どこって……天界ですよ」 『天界ぃぃ!?』 二人が驚愕の声を上げるが、ユーティアは特に気にした様子もなく、普通に言う。 「はい。こちらでは天上界とか呼ばれてるんじゃないかと思いますけど」 ユーティアの言葉に二人は開いた口が塞がらない。ウソを言っているようには見えない。しかしだ。信じがたい話だ。二人は答えを求め傍らの一樹を見る。 一樹はしばらく考えてから言った。 「いや、まぁ、その……。ユーティアさ、最初会った時自分のこと、天使だって言ったじゃん」 二人はこくんと頷く。それを見て一樹は続けた。 「それ、本当なんだよ」 『えええぇぇぇえッ!!?』 二人は先ほどより数倍強い驚愕の声を上げる。口も開きすぎ。あごが外れるんじゃないかってぐらい。 「あが!」 祐一のあごが外れた。 瀬名はため息をついて祐一にアッパーをかます。 がご! 祐一のあごが治った。 夫婦漫才か? 一樹はそう思ったが言わないことにした。言ったが最後、二人に殺されるのは目に見えている。 「ほ、本当なの!?かずちゃん!」 瀬名がまだ信じられない、といった口調で一樹に問う。一樹は冷静に、 「本当なんだって。ユーティアがウソ言ってるように見えるか?」 一樹の問いに二人はう〜ん、と唸る。 「ウソ言ってるようには見えねえんだけど……」 祐一の言葉に瀬名はうんうんとうなずく。と、瀬名があることに気付いた。 「ねぇ、かずちゃんはどうしてそんな簡単に信じたの?」 その質問に一樹はああ、と言って答える。 「ユーティアの羽根が視えるんだよ。だから」 あまりにさらりとした答え方だったので二人は一瞬硬直する。しかし、何とか硬直を解除して一樹に向けて言う。 『み、視えるぅぅ!?』 二人の驚きように一樹は一瞬ぽけっ、とした顔をする。 「あれ?言ってなかったっけ?僕、多分霊感があるんだよ」 『言ってない!!』 二人はまったく同時に言う。そんなことは初耳だった。聞いちゃいない。祐一でさえ。ただ、一樹は子供の頃よく幽霊などが視える。といっていたのだが二人はまるで信じちゃいなかった。要は聞いたが忘れてるのだ。この二人は。 「ま、そういうわけで僕はユーティアの羽根が視えるんだ。だからあっさり信じたんだ」 「そっか……」 「なるほど……」 二人はそう言う。しかしイマイチ信じきれてないようだ。 そんな二人を見て一樹はユーティアに声をかける。 「ねぇ、ユーティア、二人に羽根を見せるってことは出来る?」 「ええ。多分大丈夫だと思います。ちょっと待っててください」 ユーティアはそう言うとしばし目を閉じる。 バサアッ……。 そんな音と共に一陣の風が起こる。三人は思わず一瞬顔をそむける。そして……、三人が再び視線をユーティアに向けた時、ユーティアの背中には大きな薄いピンク色をした羽根が生えていた……。 ただし、片方だけ。 事情を知っている一樹は別段何とも思わないが祐一と瀬名はそうは思わなかったようだ。何やら呟いている。 「天使の羽根って……」 「片方しかないんだ……」 ずごお! 一樹とユーティアがずっこけたのは言うまでもない。 起き上がった二人は勘違いしている祐一と瀬名に説明する。 「こらこら。ちゃんと天使の羽根は両方あるよ」 「そうですよぉ。ちょっと事故で片方ないんですけど……」 『事故?』 二人は同時に聞き返す。 一樹とユーティアは顔を見合わせ、こくん、と頷くと話し始めた。 天使であるユーティアがここにいるわけを……。 「っていうわけなんです」 「わかった?」 説明を終えた(一樹は横で相槌うってただけだが)二人は祐一と瀬名に問う。 二人はお茶(話が長くなるので一樹が用意した)を一飲みしてこくん、と頷く。 「そういうことだったのか……」 「それなら羽根が片方ないわけもわかるわね」 納得した二人はうんうんと何度も頷いている。 「それで多摩にあるんでしょ?ユーティアの羽根」 「多分ね。でも多摩のどこかはわからないんだ。だから今日探しに行くんだよ」 『えっ!?』 一樹が言うと二人は声を上げる。唐突すぎたのだろう。ぽかん、と口を開けている。 「何だよ、そんなに驚くことか?」 「いや、唐突すぎたもんでな。おっし、そういうことなら俺も行くぜ!」 「もちろん、私も!」 「言うと思ったぜ」 そう言って三人は笑う。ユーティアには信じられなかった。一樹が探してくれるというだけでも驚愕にあたいしたのに、さらに祐一と瀬名まで探してくれるなんて! いつのまにか目頭が熱くなっていたユーティアはみんなに気取られぬように、そっと涙を拭う。 本当に、ありがとう……。みんな……。 ユーティアは心の中でそう呟いた。 「よおっし!そうと決まったらさっそく行きましょ!多摩へ!」 『おう!』 みんなは元気よく、返事をした。 ガタンゴトン……。 電車の振動音がみなを包み込む。早朝、休日だということもあるのだろうか。電車の中はすいていた。混んでてもよさそうなものだが意外や意外、がらがらだった。 一樹はう〜ん、と伸びをする。隣に座っているユーティアを見ると、物珍しそうに外の景色を眺めている。やはり天界と人間界では景色も違うのだろうか。今度そのあたりユーティアに聞いてみるかな、と思う一樹だった。 と、車内アナウンスが聞こえてきた。 「次は〜……」 多摩まではもうしばらくかかる。あと十数分ぐらいだろう。 「なぁ、一樹」 「ん?何だ、祐一?」 一樹は祐一に問う。祐一は少し納得いかない顔をしている。 「多摩に木々が生い茂る場所なんてあったけかなぁ?」 その問いには一樹も同意見だった。 「僕もそう思う。でも、今はユーティアの言葉を信じるしかないさ」 「そうだな」 祐一は笑って、今度は瀬名と話し始める。 一樹は再び、う〜ん、と伸びをして、とりあえず先に調べとくか、と多摩の地図(先ほど購入。六三〇円、消費税込み)を開く。 あんましわからなかった。 意味ないかもしんない。この地図買ったの。 一樹はちょっと後悔した。でもないよりはあったほうがいいだろう。そう考えることにした。 と、再び車内アナウンスが聞こえてきた。どうやら多摩についたようだ。 「とうつき〜!」 ユーティアがそう言うのを聞いて三人は間髪入れずまったく同時にツッコンだ。 『いや、それちゃうちゃう』 「えっ!?そうなんですか!?」 ユーティアは驚いたようにこちらを見る。 もはやこれは天然というより漢字能力がない。 そう思った三人なのだが、次のユーティアの言葉で完全に天然ボケだと気付く。 「だって……とうちゃくって読まないんでしょ?」 『何でやねん!!』 思わず三人は再びツッコンだ。しかも何故か関西弁。と、ユーティアは明らかに狼狽した。 「え……!?だ、だってメリアがそういうって……」 メリアとは誰だか三人ともわからなかったが、ユーティアの友達であろうということはは容易に予想できた。 そして、三人は期せずしてまったく同時に思う。 騙されやすぎ。 ちなみにメリアがユーティアにとうつき〜、何て言葉を教えたのは八歳の時である。それからずっと信じてきたのだから、ユーティアの純粋さに拍手を贈りたくなる。 「さて、問題も解決したところで……」 一体何の問題が解決したんだ? と、一樹は思ったが無論のこと祐一は気付かず言葉を続ける。 「羽根を探しに行こう!」 『は〜いッ!』 ユーティアと瀬名は同時に言う。と、祐一が不思議そうな声を上げる。 「れ?一樹は?」 「へ?僕はちゃんと返事したよ」 祐一の言葉に即座に一樹は反論する。しかし、祐一は未だ納得いかない顔で、 「でも、女の娘の声しか聞こえなかった……」 そこで祐一は気付いた。一樹の特徴に。 「そっか……、お前女の娘っぽいもんな。声も……」 「言わないでくれえええっ!!」 一樹は一人悲鳴を上げた。と、 リリリリリリリリ! 音が鳴り響く。電車が発車するらしい。しかも、気付いてみればまだ電車を降りていなかった。 「やばっ!急いで降りなきゃ!」 祐一の声と共に四人は急いで電車を降りる。 そして、何故かそのままの勢いで駅も出てしまう。この勢いで駅を出る意味はまったくないのだが……、つい。というやつだろう。 「一樹、ヒントなんだっけ?」 祐一の問いに一樹は答える。 「周りに大きな建物はない。木々が生い茂ってる。以上!」 「ってことは郊外にあるってことね」 瀬名の意見に一樹は頷く。 「僕もそう思う。だからその辺を回っていけばすぐ見つかるんじゃないかって思ってるんだけど」 「うし!そういうことなら善は急げだ!さっそく行こうぜ!」 と、とっとと行く祐一を見て一樹は思った。 お前の場合は急がば回れだと思うぞ……。 そうは思いつつも、一樹たち三人は祐一の後についていった……。

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