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Original Novel MOTOKA Presents



エンジェルズ・サーチャー


第7話

見つけた!



「りゃああああああああッ!!!」
メリアは大きな叫び声を上げて銃を乱射した。無論、本物ではない。って言うか本物だったらヤバすぎる。
一樹たち四人が羽根を探してるのと同時刻。
メリアとミカラはゲームセンターにいた。何故こんなとこにいるのかと言えば、人の出入りが多いのと、もう一つ。要はゲームで憂さ晴らしをしたいのだ。
現在メリアはガンシューティングをやっているのだ。難しいと評判のゲームなのだが、メリアはわずか一コインで進んでいる。つまり、未だノーコンティニュー。いつのまにかメリアの周りにはたくさんの人が集まってきている。それだけメリアの腕が鮮やかなのだ。これがこのゲーム始めてのプレイだというのに。まるで、プロのようだ。
つまるところそれだけメリアが怒ってるということなのだが、無論、周りの人々はわかりはしない。横で見ているミカラは戦慄しているが。
と、どうやら最終ステージのようだ。ラストだと言うのにメリアの腕はまったくブレていない。一体どれほどの体力があるというのか。
怒ってるコイツには逆らわないようにしよう。
ミカラは固く心に誓った。
と、いつのまにかラスボスのようだ。さすがのメリアもラスボスの激しい攻撃に徐々にやられていく。
「あ〜あ、こりゃやれちまうな」
と、見ている誰かのうち一人が言った。
ぴくぅ!
メリアはその言葉に反応する。段々と肩が震えてくる。
「……ないわよ」
「え?」
メリアの言葉が聞こえなかったので思わずミカラは聞き返す。
と、メリアが顔を上げた。
その時、その場にいた全員は確かに見た。
メリアに龍が降臨するのを。
「ふざっけんじゃないわよーーーッ!!!」
ズガドドドドドドドドドドドドッ!!
もし、メリアの持つ銃が本物だとしたらこんな音が聞こえただろう。実際は違うのだが。
それはともかく、メリアは物凄い勢いで銃を連射する。まるで鬼神の如く。
先ほどまでの不利はどこ吹く風、推定三七秒でラスボスを撃破した。
エンディングが流れる中、メリアは言った。
「ふ、弱い」
「あんたが強すぎるんだよ。あんたが」
ミカラの言葉に、その場にいた一同大きく頷く。メリアには聞こえなかったようだが。メリアはすっきりしたのか先ほどまでの怒りはなく、さわやかな笑顔でミカラに話しかける。
「ここにはユーティア来てないみたいね」
「いや、ユーティアはこういうところは来ないと思うぞ。俺は」
ミカラは意見を述べるがメリアは軽く首を横に振る。
「ううん、ユーティア結構ゲーセン来るよ。ガンゲーとかも上手いし」
「そ、そうなのか!?」
メリアの意外な言葉にミカラは驚く。あの、ゲーセンとはまるで縁のなさそうなユーティアがゲーセンに行ってたとは。しかもガンゲー上手だとは。
そんなミカラには気付かずメリアは話を続ける。
「そだよ。ここ大きいゲーセンじゃない。来るかな〜、って思ったんだけど……」
そこでメリアは辺りを見回す。
「やっぱり来てないわね〜。まぁ、あんまし期待してなかったけど」
おいおいおい!それじゃあ何のために来たんだよ!
のどもとまで出かかったその言葉を慌てて飲み込む。言ったところでこう言われるのは目に見えている。
「私の憂さ晴らしのため」
悲しいことにミカラのその予想は大当たりだったりする。
「それじゃ、次のとこ行きましょうか」
「へぃへぃ」
二人はそう言ってその場を後にした。
と、その後、二人の後ろ姿を見ながら呟く者がいた。
「へ〜、天使でもゲーセンって行くんだ……」
何故、二人を天使だとわかったのか。そして、呟いている者は誰なのか。
それは、今はまだ、謎である……。


「見つからないぃぃぃッ!!」
まったく寸分の狂いもなく、メリアと同じ言葉を瀬名は叫んだ。
現在時刻は六時三八分。日も傾いてくる時間だ。ひとまず多摩の郊外を調べてみたのだが……、それらしいところはまったくなく、ひとまず、都心に帰ってきて途方に暮れているのだ。
「本当だよ……どうしてないんだぁ?」
祐一が疲れきった声で言う。そんな祐一と同様の声でユーティアも言う。
「ここに、あるはず、なんですけど……」
「案外都心部にあるのかもよ?灯台もとぐらしってね」
そう言って一樹が指差した先には……、
都心部だと言うのに大きな建物がなかった。
都心部だと言うのに木々が生い茂っていた。
まさに条件にピタリ一致していた。
しばし、みんなは呆けていたが……。
『あ、あったぁッ!!』
先ほどまでの疲れなぞ何のその。再び元気になった四人は一樹が指差した場所目掛けてどたどたと走って行った。
―五分後。
目的の場所に到着した四人は思わず感嘆の呟きを漏らす。
『わぁ……』
そこは、小さな神社だった。
木々が生い茂り、夕日が微かに木漏れ日となり降り注いでいる。思わず声を漏らすほどの神秘的な場所だった。
そして、中央に境内があった。四人はこくん、と頷くと、境内に入る。
その、中央には、淡い光を放つ物体があった。
大きく、薄いピンク色をした、羽根が。
「あった……」
祐一が呟いた。それに呼応するように瀬名も言う。
「あったよ……」
そして、ユーティアは目に涙をため、言う。
「あった……、ありましたよ一樹さん!祐一くん!瀬名!」
そんなユーティアを見て一樹は微笑んだ。一樹だけではない。祐一も、瀬名も。
「さあ、取るんだ。きみの羽根をッ!!」
「はいっ!!」
一樹の言葉にユーティアは力強く頷く。
そして、ゆっくりと中央に歩いて行く。すると、羽根は自然にゆっくりと浮かび上がった。ユーティアが手を頭上にかざすと、羽根はゆっくりユーティアの背中にくっつく。
そして、光が辺りを覆い尽くした。
温かい光の帯が幾重にも重なっている。それを感じた直後、光が一段と強くなり、一樹たち三人は目をそらした。
そして、光が晴れたとき、そこには、天使がいた。
羽根の戻った完全なる天使、
ユーティアが。
ユーティアは閉じていた目を開けると、みんなに微笑んだ。その笑顔があまりに眩しく、そして可愛かったので一樹と祐一は赤面する。
どご!
あ、祐一のやつ瀬名に蹴られた。
そんなことを思う一樹だったが、もし祐一と同じ立場だったら一樹も蹴られてただろう。
「みんな……、本当にありがとう!!!」
ユーティアはあふれんばかりの笑顔でそう言った。
「気にしないでよ!」
「そうそう!」
祐一と瀬名が口々に言う。そして、一樹も。
「僕たちは、ユーティアの力になりたいって思っただけなんだよ。だから、気にしないで。……よかったね、ユーティア。羽根が戻って!」
「……はいっ!!」
ユーティアは涙を流しながら一樹に抱きつく。一樹は最初、優しい笑顔を浮かべていたが、祐一と瀬名がからかうと、急に顔を真っ赤にする。
「あ、あうぅぅ……」
ユーティアの口癖がうつったのかあうあうを連発する一樹。しばし二人はそんな一樹を楽しそうに見ていた。と、瀬名が言う。
「さ〜て、お二人さん!ラブラブはそこまで!」
「帰ろうぜっ!」
二人がそうからかうと一樹とユーティアは、ぱっ、と離れた。一樹もユーティアも顔を赤くしているが互いに笑い合っている。
「そうだね。帰ろっか」
「はい」
そして、四人は歩き出した。
自分たちの街へと……。


ガタンゴトン……。
帰りの電車の中、さすがにこの時間帯になると帰る人も多いのか、混んでいる。とまではいかないまでも、それなりに人はいた。
そんな中運よく座席をゲットできた四人は悠々と座っていられるのだ。
祐一と瀬名はお喋りに没頭しているが、一樹は緊張していた。
電車の中で何に緊張するんだよ、と思うかもしれない。しかし、仕方ないのだ。
ユーティアが一樹に寄りかかって寝ているのだから。
疲れたのだろう。電車に乗って数分もしないうちにすっかり寝てしまったのだ。一樹も出来れば一眠りしたいところだったのだが……、この状況ではそれも出来ない。
ユーティアの可愛い寝顔が救いと言えば救いだが。
まぁ、いいか。女の娘によりかかられるなんて一生に一回あるかないかだし。
とりあえず一樹はそう思うことにした。そうでも思わないと緊張でまいってしまいそうだ。
急にコーヒーが飲みたくなった。
ぶんぶんと頭を振り何故か浮かんできた考えを消し飛ばす。
「ふにゃぁ……」
ユーティアがそう声を上げるのを聞いて、一樹は慌てて頭を振るのをやめる。
「危ない危ない。危うく安眠を邪魔してしまうところだった」
一樹はふぅ、と胸を撫で下ろす。
安眠邪魔する者、死刑なり。
母親の言葉だった。確かになぁ。と一樹は思っている。
ちなみにどうでもいいことだが、母親は生前休日は昼ぐらいまで寝ていたので、朝御飯は父親が作ったのだ。その頃かもしれない。一樹が料理を始めたのは。
と、懐かしい思い出に思いを馳せていると車内アナウンスが聞こえてきた。どうやら、ついたようだ。
「到着っと」
祐一がそう言い、席から立つ。瀬名も習って立つ。一樹も立つがユーティアを起こさねばならない。
「ユーティア」
呼びかけるが返事はない。よく寝ているようだ。
しかし、だからと言って寝かせておくわけにもいかない。一樹はユーティアを揺さぶり起こす。
「ユーティア!」
しかし、ユーティアは起きなかった。よっぽど熟睡しているようだ。
「どうしよう?」
祐一と瀬名にたずねると、二人は同時にどきっぱりと言った。
『おぶって運べば?』
「僕が!?」
一樹が驚いて問い返すと二人はさも当然といった口調で言う。
「一樹以外に誰がいるんだよ」
「かずちゃん以外に誰がいるの」
二人にあっさりと言われた。
仕方ないので一樹はユーティアを背負う。意外とユーティアは軽かった。おかげで大した苦痛にもならずにすみそうだ。
―と、駅を出たところで二人と別れることになった。
「それじゃな」
「ばいば〜い」
そう言って去ろうとする二人を一樹は呼びとめた。
「おいおい、荷物はどうすんだよ?」
一樹が問うと二人はあっ、と声を上げた。昨日一樹ん家に泊まったので荷物がそのままなのだ。しかし、二人はすぐに結論を出した。
「明日取りに行く」
「明日取りに行くね」
そう言い残しあっという間に人通りの中に紛れ込んでしまう。
しばらくそうやって二人を見送っていたが、一樹はぽつりと呟く。
「僕も帰るか……」
一樹はよいこらしょっ、と、ユーティアを背負いなおすと家に向かって歩き出した。
一樹は家路の途中、ふと思いを馳せた。
少し前まではこうやって女の娘を背負うなんて、考えもしなかったことだ。しかし、今は背負っている。しかもとびっきりの美少女を。さらに言えば、天使。信じられないが、現実なのだ。
「天使……、か」
一樹は呟き、眠っているユーティアに話しかける。
「天使なら、父さんや、母さんに、会えるの……かな……」
言って、無理だと気付く。死者と生きている者は、住む世界が違うのだ。たとえそれが天使であっても例外ではないだろう。それに、自分や、その代理が会いに行って両親は喜ぶだろうか。いや、喜ぶまい。
それどころか、きっと、怒ってこう言うだろう。
『親に会いにくるヒマがあったら自分のことをしなッ!!』
あまりにもそう言われそうな感じだったので一樹は思わず苦笑する。
そして、背負っているユーティアを見て、何気なく呟く。
「いつか、ユーティアたちの住む、天界に行ってみたいなぁ」
それはウソ偽りなく一樹の本音だった。自分たち人間とは別の、天使の住む世界。一樹には興味があった。
霊感のある一樹は幼い頃からずっと、自分たちの住む世界とは別の世界があるのではないかと思っていた。そして、それは本当だった。
是非とも行って自分の目で確かめてみたかった。いかなる世界なのかを。
と、ユーティアが呟いた。
「いつか……、連れて行ってあげますよ。絶対に……」
その言葉はとても小さく言ったため一樹には聞こえていなかった。それどころかユーティアが目を覚ましているのにも気付かなかった。
そして、ユーティアの言った言葉に、ウソはなかったのである。


一方その頃……。
メリアとミカラは多摩にいた。そう、数時間前まで一樹たちがいた場所である。何故、二人がここにいると言うと……。
見たからだ。
強烈な光を。
それは、ユーティアの羽根が戻った時の光なのだが、そんなことを知る由もない二人は、何だろうと思いえっちらおっちら多摩まで来たのだ。
どこで光が出たのかはわからなかったのだが、幸い、道行く人に聞けば殆どの人が多摩の方だと教えてくれた。中には、多摩のこの辺だよと、教えてくれた親切な人もいた。
そのおかげで二人はさして迷うことなく目的の場所にこれた。
そう、あの小さな神社である。
二人は、その神社を見て、感嘆の呟きを漏らす。もう、日も落ちたと言うのに、神秘的な雰囲気を出している。ここにいれば闇が怖くない。そんな気がした。
「いい場所だな……」
「そうね……」
思わずそんな言葉が口をついて出る。二人は、ゆっくりと境内に入っていく。
「暗いわね」
メリアは言い、先ほど買った懐中電灯をつける。懐中電灯で照らして辺りを見回すと、ふと、ある物を見つけた。メリアは驚きの声を上げる。
「これは!?」
「どうした、メリア」
ミカラが聞いてくる。メリアは、興奮した声で言う。
「羽根があったのよ!羽根が!」
「なに!?」
ミカラは慌ててメリアが照らしているところを見る。確かに、羽根があった。
一枚だけ。
ミカラは無言でメリアを睨みつける。しかし、メリアはそんな考えお見通しとばかりに自信満々の声で言った。
「いい、ミカラ。この境内の扉は閉まってたわ。さらにこの境内には窓がない。この二つの意味するところは何でしょう?」
「鳥は入れない」
ミカラは即答する。それぐらいならいくらなんでもわかる。
「何でそこまでわかっててわかんないのよ。つまり、鳥が入れないイコール鳥の羽根じゃない。要は鳥以外の羽根ってこと。ということは……」
「あっ!」
そこでミカラはわかった。鳥は入れない。なのに、何故かある羽根。この二つの意味するところ。それはすなわち、
「天使の羽根ってことかッ!」
「そういうこと!一〇〇%とは言いきれないけどかなり確率は高いハズよ!」
ミカラの答えにメリアは大きく頷く。今までまったく手がかりがなかったのだが、ここにきて初めて手がかりを手に入れた。
「つまり、ユーティアがここに来てたってことか」
「そうね。あの光もユーティアが関係してると考えた方がいいかも」
「おう。ってことは近いところにユーティアがいるんだな」
なかなかスルドイ読みだ。しかし、いつもこの頭の冴えが発揮されないのはいかんせんどういうわけか。
「よーし!もう少しだ!捜すぞッ!」
「がんばろー!」
二人はそう言ってえいえいおー!と言う。しかし、二人は手がかりを手に入れたことに喜び、単純な問題に気付いてない。
すなわち、ユーティアはここに寄ったことはわかったが、本当に近くにいるかはわかっていないということに。

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