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Original Novel MOTOKA Presents



エンジェルズ・サーチャー


第8話

学校へGO!



「よいこらしょっと」
一樹はまだ寝ている(と、思っている)ユーティアをソファーにおろす。
「ふわああぁぁぁ……、眠ぅ……。早く風呂入って寝よ」
目をこすりながらぼやく一樹。
「って、その前にユーティア起こさなきゃ。ユーティア」
「はい」
「うわっ!」
こんなにあっさり起きるとは思ってなかった一樹は驚く。まぁ、もっともユーティアはとっくに起きていて、眠ったフリをしていただけなのだが。
「び、びっくりした。あっさり起きるとは……」
「?」
とっくに起きているとは言っても一樹に背負われて駅を出たあたりで目が覚めたので、一樹に起こされていたことは知らないユーティアだった。
そんな不思議そうな顔をしてたのだろう。一樹は首を振る。
「いや、何でもない。ところでユーティア、お風呂は?」
「もちろん入りますよ」
「じゃ、先いいよ」
一樹がそう言うとユーティアは、はい、と頷いてお風呂に行く。そこで、一樹は気付いた。
「しまったあ!先、僕が入って寝ておけばよかったあ!そうすりゃ精神集中しないですんだのにいぃぃ!!」
と、叫ぶが既に遅い。もう、シャワーの音が聞こえ始めてる。
「あああっ!!精神集中精神集中!燃えよ理性ーーッ!!」
一樹は叫んでやおら怪しげな踊りを踊り出す。
ちなみにこれが功を成したのかどうかはわからないが、ユーティアが出てきて、
「一樹さん、何やってるんですか」
と、冷静に突っ込まれるまで一樹はユーティア入浴中には頭がまわらなかった。よかったのやら、よくなかったのやら。
それはともかく、その場のしらけら空気にたえられず一樹は逃げるようにリビングを出ていったのであった……。
―二五分後。
お風呂から出てきた一樹はユーティアにおやすみ、と言ってとっとと部屋に戻る。今日は一日中歩きっぱなしだったせいか、滅茶苦茶疲れた。そのおかげでかなり眠い。
一樹はベッドに入りこむと泥のように眠りに落ちて行った。
そのおかげでユーティアのことを意識せずにはすんだのであった……。


「う〜ん、よく寝た!」
一樹は大きな伸びをしてベッドから降りる。そして、シャッ、とカーテンを開ける。
眩しい日差しが部屋に入りこんでくる。
一樹はもう一度大きな伸びをすると、着替えをする。
風のように、素早く。
あまり……、と言うかほとんど人に見られる心配はないのだが、一樹は早く着替えることにしていた。自分でもあまり見ていたくないから。見る度に六年前の事故を思い出してしまうから。
一樹は着替えを終えるとリビングにおりていった。どうやらまだユーティアは寝ているようだ。起こすのもかわいそうなので、起こさずに料理を作り始める。
五分ほど経過しただろうか。突然、チャイムがなる。
ピンポーン。
何だろうと思い、玄関に行き、扉を開けた。
そこには、祐一と瀬名がいた。今度は何しに来たかわかってるので別に驚きはしない。
「荷物か。ちょっと待ってろ」
そう言って扉を閉めようとする一樹に、二人は待ったをかけた。
「待った!」
「朝御飯食べさせて!」
「何でッ!?」
一樹の言葉に二人はさも当然と、
『お腹減ったから!』
と、言ってのけた。まさに好き放題。一樹は深いため息をついた。どうせこの二人には勝てないと思ったからだ。
「はいはい。まだ、作り途中なんだよ。ちょっと待ってろ」
一樹はそう言いリビングに戻る。二人もしっかりついてきた。
―さらに五分後、ユーティアが起きてきたと同時に朝御飯が作り終わった。
『いっただっきま〜す!』
四人全員で食べ始める。ふと、一樹は思った。
こうやって、みんなで食べるのが、こんなに楽しいなんてな……。
一樹は長いこと一人だったことからこういうささいな出来事でも嬉しかったのだ。その点については祐一や瀬名、そしてユーティアにとても感謝している。
ただ……、
人ん家に朝御飯食べにくるのはやめてくれッ!!
一樹、心からの叫びだった。
聞き入られる可能性は限りなく低いが……。
『ごっちそうさま〜!』
と、いつのまにか御飯を食べ終えていた。考えごとをしていたせいであまり味わえなかった。まぁ、自分の作った料理なんだから味は大体わかるが。
「さて、これからどうするか……」
みなが食べ終わったのを見計らって一樹は話を切り出す。
「何が?」
何もわかってない祐一がぽけっ、と聞き返す。瀬名が呆れた声で言う。
「バカ、ユーティアのことでしょ?かずちゃん」
「さっすが瀬名。わかってらっしゃる。……で、その通りユーティアのことなんだけど……。どうする?」
「どうするって……?」
ユーティアが不安そうな表情で一樹に問う。一樹は、ああ、と言って、
「ユーティア、羽根見つかったろ。だからさ、明日からどうしようかと……」
「えっ!?」
ユーティアの顔に一気に不安が広がる。
明日からどうしようって……、どういうこと!?ま、まさか、私一樹さん家を追い出されちゃうとかじゃ!?それとも……。
数々の根拠のない憶測が頭の中を飛ぶ。そんなユーティアに気付いたのか一樹が安心させるような声で言う。
「どうしたんだよユーティア。あ!まさか、この家追い出されるとかそんなこと考えてたんだろ」
「……はい」
ユーティアが沈んだ声で答える。しかし、一樹は明るい声のまま、
「な〜に考えてんだよ!僕がユーティア追い出すわけないじゃん!別のことだよ」
「別のこと?」
ユーティアは明らかにホッとした声で一樹に問う。そのホッとした声に一樹は、ユーティアを心配させたことに罪悪感を感じた。
今度からはユーティアを心配させないようにしよう。
そう決意する一樹だった。
握りこぶし作って決意する一樹を不思議そうな表情で三人は見ている。
「あ、いや、何でもないよ。気にしないで。それで、別のことっていうのは、ユーティアを学校へ入れるか入れないかってことなんだよ」
「学校ですか?」
聞き返すユーティアに一樹は頷く。
「うん。羽根が見つかったろ。でも、ユーティアは天界へ帰るすべを知らない。ってことは下手に動かず一箇所で待ったほうがいい。つまりはここで。でも、迎えが来るのがいつかわからないじゃないか。だから、迎えが来るまでの間でも人間界の学校―あ、僕たちが通ってる学校だよ―に行かせようかなと思ったんだけど。どう?」
一樹の問いかけにユーティアは一瞬も迷わず即答した。
「行きます!」
「は、早いなぁ。別にいいんだよ、無理にいかなくも」
「いえ、絶対行きます!」
いつになく熱っぽいユーティアの口調に一樹はややたじろぐ。なんでこんなに熱っぽいのか一樹にはわからなかったが、ユーティアが行きたいようなので別にいいだろう。
一方、ユーティアは、
かっずきさんと同じ学校〜〜♪
てな理由で熱っぽいのであった。
「じゃ、決定だね。それじゃ祐一、瀬名!」
「ん?」
「へ?」
一樹が視線を向けると二人は呑気にジュース飲みながらテレビを見ていた。
「なに勝手に人ん家のジュース飲んでテレビ見てんじゃ!……これじゃ、聞いてないか……」
一樹がそう言うと二人はあっけらかんと、
「いや、聞いてた。それで?ユーティアちゃん学校入れるとこまでは決定したろ」
「その後私たち呼んだよね。何か用なの?」
本当に聞いていた。
き、器用なやつらだな……。
一樹はそう思ったのだが口には出さない。出す意味もないし言ったら言ったで二人につつかれそうな気がする。それも、言葉じゃなくて、腕で。
「あ……、そうそう、ユーティアの転入手続き。どうしようか?」
「そっか、そげな厄介な物が……。瀬名、どうにかなる?」
祐一が問うと瀬名は少し考え込む。
「かずちゃんの従妹ってことで転入させる。そうすれば一緒に住んでても変に思われない。編入試験は外せないと思うけど、それはユーティアに任せるわ。あとは何とかおじいちゃんを誤魔化すわ」
瀬名の祖父は現役校長。つまりは、一樹たちが通う学校の校長先生なのだ。ちなみに現在五六歳。非常におおらかな人物で大抵のことは気にしない。優しい人物でもあり、生徒からの信頼も厚い。ただ、欠点を言えば、おおらかすぎ。気にしなさすぎるのだ。きっと彼は、校内で殺人事件があっても、
「ほほう。そんなことがあったのですか」
で済ますだろう。ある意味恐ろしい人物である。
だがまぁ、今回はそれが助かる。もし万が一ユーティアが一樹の従妹ではないとばれても、一〇〇歩ゆずってユーティアが天使だとばれても、
「そうですか。なるほどなるほど」
で済ましてくれるだろう。生徒はそうはいかないだろうが。
「うっし、それで決定!じゃ、いろいろ動くとするか!」
『おーう!』
三人は元気よく返事をした。
―それから四人は大変だった。書類を用意したり、制服のサイズを測ったり、久しぶりに多忙な一日になったのであった。
ちなみに瀬名の祖父―要は校長の鶴の一声で、ユーティアの編入試験は今日行われたのだが、ユーティアは全教科九〇点以上という高得点を叩きだし、あっという間に入学を許可された。
しかし、後で聞いた話によると、たとえテストの点が悪くてもユーティアを入れるつもりだったらしい。
理由はこうだ。
「別に一人ぐらい増えたってどうってことないぞ」
……恐るべし。校長先生。
そんなこんなで日曜日はふけていったのであった……。


そして、やってきました月曜日!
ユーティアはるんるん気分で、一樹、祐一、瀬名の三人と学校への道を歩いていた。
「いやあ、ユーティアちゃんよく似合ってるよ。可愛いよ」
「うん。本当。よく似合ってるね」
祐一と瀬名が誉めるのを聞いてユーティアは頬を赤くする。
「えへへ、ありがとう」
照れたのか、ちょっぴし視線をそらすユーティア。
「一樹さん、どうですか?」
ユーティアが聞いてくる。しかし、一樹は二人のように簡単にうん、可愛いよ。とは言えなかった。何故なら、羽根が視えてしまうからだ。つまり、ユーティアは一樹に可愛い?と聞いているわけではなく、自分の羽根とこの制服があっているかどうかを聞いているのだ。
「う〜ん、そうだなぁ。似合っているとは思うけど……、でも個人的な意見をいわしてもらえば前の服のほうがあってた気がするなぁ……」
「やっぱり一樹さんもそう思いますか」
ユーティアはなるほどぉ、という表情をしている。
「おいおい一樹、何で前の服のほうがいいって言うんだ?前の服も確かに可愛かったが制服も可愛いじゃねえかよ」
祐一が一樹に言ってくる。一樹は勘違いしている祐一に言った。
「勘違いするなよ。僕が言ってるのはユーティアに制服が似合うのどうのじゃなくて、ユーティアの羽根に制服が似合うかどうかを言ってるんだよ」
「あっ、そっか。かずちゃんユーティアの羽根が視えるんだ。そっか……、確かに羽根とこの制服はちょっと似合わないかもね」
瀬名も同意する。祐一も想像してみたようで、う〜ん。確かに。と唸っている。
「でも、普通の人は視えないんだし。それに、そのうち慣れるよ。気にしないほうがいいんじゃないかな?」
「そうですね」
ユーティアは頷く。と、学校が見えてきた。どうやらついたようだ。
「それじゃあね、ユーティア。また後で」
「はい」
校舎に入ったところでユーティアと別れた。ユーティアはこれから先生に連れられて教室に行くことになっている。
「じゃ、僕らも行くか」
「そだな」
一樹たちも自分の教室向けて歩き出した。ちなみに三人とも同じクラスだ。クラスに入ると、やはりと言うかなんと言うか既に転校生の話題で持ちきりであった。
―二〇分後。
そろそろ、ユーティアが来るようだ。耳が早い者たちは既に互いにどんな転校生か情報交換しあっている。そのせいかかなり正確にユーティアの情報が伝わっているようだ。どこから漏れたのかテストの点まで出ている。一体誰が入手してくるんだ。そんな情報。
ガラガラガラ。
と、教室のドアが開き、先生とユーティアが入ってくる。すると、生徒の間から感嘆の呟きがもれた。
「うわぁ……」
「すげえ……」
「か、可愛い……」
今のは男子諸君である。ただし、若干二名除く。
「きょ、強敵……」
「う、うぅ……」
「ま、負けた……」
今のは女子諸君である。ただし、若干一名除く。
そんなクラスの様子に気付いているのかいないのか、先生はさらりと言った。
「今日からここのクラスに入るユーティアだ」
「ユーティアです。よろしくお願いします!」
うおおおおおぉぉぉッ!!
男子諸君が雄叫びを上げた。ただし、やはり若干二名除く。
キッ!!
女子諸君が睨みつけるを使った。ユーティアに精神的に一二〇〇のダメージ。ただし、やはり若干一名除く。
ユーティアは困ったように一樹を見る。一樹は、目で言った。
ごめん!耐えて!
わかったのかユーティアは小さく頷く。と、先生が致命的な言葉を言った。これでもかッ、っていうぐらい致命的な言葉を。
「一樹の知り合いで今は一樹ん家に住んでるそうだ。仲良くしてやってくれ」
一樹はズッコケた。
い、従妹って説明はどうしたー!?
心から叫ぶが先生に聞こえるわけがない。いくらなんでも当初の設定と違いすぎる。
これは、あらぬ誤解を生むのでは!?
一樹がそう心配した、その時!
ズゴオオオオオオオオッ!!
その時、一樹は確かに視た。
男子諸君から発せられる黒きオーラを。ただ、一箇所だけ出ていなかった。誰だろうと思ってその席に座る人物を見た。そして、納得した。
祐一の席だった。
こんな状況にもかかわらず一樹はこんなことを思った。
嫉妬って、黒い、オーラなんだ……。
しかし、今はそんなことを思ってる場合ではない。今は、一触即発状態なのだ。危険極まりない。って言うかヤバすぎる。
一樹が冷や汗を垂らしてうぅ……、と唸っていると、助け舟が出た。
「ほらほら、そのへんにしときましょ」
瀬名だった。そのおかげで、一触即発状態はなんとか解除された。一樹は瀬名にこれでもかッ!というぐらいに頭を下げた。瀬名はいいのよ。と笑っていた。一樹はその時ばかりは瀬名が女神に見えた。
「うぅ、瀬名、ありがとおおぉぉ……」
一樹は瀬名にまた頭を下げる。しかし、何故か瀬名はバツの悪そうな顔をした。一樹が不思議そうに見ていると、瀬名は一言、言った。
「今日の、朝御飯食べさせてもらったおかえしなんだけど……」
一樹は滅茶苦茶複雑な気持ちになったのであった……。


一方こちらは天界。
メリアとミカラの二人はそろって風邪でダウンしていた。しかも、かなり重度の風邪。おかげで二人は病院行きになってしまっていた。
連日深夜まで歩き回って人を捜しているのだ。風邪でダウンしても仕方ないだろう。風邪をひかなくとも疲労で倒れたっていいはずだ。
ディラールやユアーナも責任を感じているようで先ほどまで見舞いに来ていた。もっとも、ユアーナはともかく、ディラールはいると怖かったが。
失礼な物言いかもしれないが、それが二人の気持ちだった。
ちなみに二人は同室だった。
「ぐ、ぐぞお。これじゃユーディア捜せねえじゃねえがよ」
ミカラがヒドイ鼻声で言う。
「仕方ないじゃない。風邪びいちゃったんだがら」
メリアも同じようにヒドイ鼻声で言う。
「ぐおぉ……げーほっげほげほ!」
「ちょっと!こっちとばざないで……けほけほけほけほ!」
「げほっげほげほ!」
「けほっけほっ!」
その後、かなり長い時間、セキのハーモニーは続いたのであった……。

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