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Original Novel MOTOKA Presents



エンジェルズ・サーチャー


最終話

そして、天使は戻ってくる



一樹と別れてから、二週間がたった。
両親はユーティアの顔を見ると、安心したようで、ホッ、と息をついていた。しばらくは天界の生活を懐かしんでいたのだが、一週間ほどたってから、人間界に行きたい!と言い出した。
だが、今のとこの結果はダメ!だった。
母親の方のユアーナは別にいいんじゃない。と言っているのだが、父親の方のディラールがダメ!の一点張りなのである。
あんな思いはもうごめんこうむりたいと言うのがディラールの意見だ。良くも悪くも過保護すぎるのだ。ディラールは。
厳格という感じがあるだけにギャップが激しい。
そんなわけで、人間界に行きたい!というのはいまのとこ平行線なのであった。自力で帰れるところを見せられればいいのだが、あいにくと『生命の翼』を使っちゃったので羽根がない。
どうしようかなぁ……。
ユーティアがそんなことを考えると、ふと、ユアーナが声をかけてきた。
「ユーティア、長老様があなたに会いたいそうよ」
「長老様が私に?何の用だろ?」
ユーティアはそう言って長老の家へと向かう。
長老とはこのあたりで一番長生きの老人のことで、みなは親しみを込めて長老様と呼んでいる。様がつくのは、穏やかな雰囲気でみなに慕われるのと、いろんな物事についてくわしく知っているからである。
―と、長老の家についた。ユーティアはチャイムを鳴らす。すると、老人が出てきた。彼こそが長老である。かれこれ一〇〇年以上は生きているはずだ。
「わざわざすまんな。お主に話したいことがあるのじゃ」
「いえ、お気になさらないでください。それで、話って何でしょうか?」
「それは中で話そう。さ、入るがよい」
ユーティアは長老に連れられ中へと入る。居間に来ると、若い女性がお茶を出してくれた。話によるとひ孫らしい。
「では、話そうかの。お主は、『生命の翼』を使ったのじゃな?」
「はい。人間の男の子を助けるために……」
長老はそこで一口お茶を飲むと、ユーティアに言った。
「わしの娘もな、『生命の翼』を使ったのじゃよ」
その言葉にユーティアは驚く。過去一度だけ使われたと言う『生命の翼』。それを使った人が目の前にいる人物の娘だとは……。
「お主と同じでな。人間の男を助けるために使ったのだ。だから、お主がどういう気持ちでその人間を助けたのかはようわかる。……だから、お主に渡したい物がある」
「渡したい物?」
ユーティアは聞き返す。すると、長老は意外な言葉を口にした。
「羽根じゃ」
「羽根!?」
驚愕の声を上げるユーティア。何故、羽根をくれるのだろうか。ユーティアが考えていると、長老が言ってきた。
「わしの娘が死んだ後にな、羽根が残ったのだ。羽根が精神生命体だと言うことはお主も知っておろう?」
ユーティアはこくんと頷く。長老は頷くと、話を続けた。
「わしには、その羽根は娘の魂が変化したように視えたのだ。その時わしは決心したのじゃ。いつの日か、この羽根をつけるのに相応しい人物がくるまで待とうと。そして、その人物は来た」
ユーティアは神妙に言った。
「それが、私……、ですか?」
「そうじゃ。娘も、お主のような心優しき少女なら、喜ぶだろう」
「それはとてもありがたいですが……、波長が合わないのでは?」
ユーティアは言う。波長とは、羽根と自分のパターンがあっているかということだ。簡単に言えば、羽根がピタッとはまるか否かと言うことだ。
だが、長老はことも何気に、
「いや、ピッタシじゃった。百万人に一人出るか出ないかというぐらいピッタシじゃったのじゃ。だから、わしはお主にこの羽根を託すことに決めたのじゃ」
「でも、いいのですか?」
ユーティアが問うと、長老は微笑んだ。
「好きな相手と別れるというのは辛いぞ。そんな思いを味あわせるのはもう、十分なんじゃよ」
どこか、淋しげな表情をする長老。
「……わかりました」
ユーティアはそんな長老の表情に気付きつつも、気付いてないふうに装った。
「うむ。では、こちらにくるがよい」
そう言って、長老は歩き出した。ユーティアもすぐに立ちあがり、長老の後を追ったのであった……。


パチパチパチパチ……。
一樹は自分の席で拍手をした。
既にユーティアと別れてから一ヶ月がたっていた。ユーティアはまだ帰ってきてはいない。だが、一樹は信じていた。ユーティアが再び帰ってくる日を。
今日がその日である。つまりは今日が一年生の演劇発表会なのだ。一樹たちの番は最後、あと二番ほど後だ。
「一樹」
ふと声がかかってきた。そちらを見ると、祐一がいた。
「そろそろ準備するぞ」
「了解」
二人はこっそりと席を立ち、舞台袖に向かう。そこでは既に瀬名たちが慌しく動いていた。
「それはそこ!あーそこ違う!」
瀬名はかなり忙しそうだった。一樹は手伝ってやれよ。と祐一に言ったが、祐一は、
「さっき手伝おうか?って言ったら、邪魔って言われた」
と言った。祐一、哀れ。
と、瀬名が二人を見つけて駆け寄ってくる。
「二人とも、ユーティア来た!?」
「いや、見てないな」
「僕もだけど……」
一樹と祐一が口々に言う。
「く、もう来ないと間に合わない。……仕方ない!急遽代役……」
瀬名の言葉はかき消された。栄一の言葉によって。
「ユーティア!!」
その言葉にみなが次々と反応する。顔を上げる。そして、見た。
ユーティアがこちらに駆け寄ってくるのを。
「すいません!!遅れました!」
はぁはぁ、と息をするユーティア。瀬名はニッ、と笑うと、ユーティアに言った。
「遅いよ!さ、早く準備して!もうすぐ、始まるわよ!」
「はいっ!」
ユーティアはすぐさま準備に取りかかる。
一樹も慌しく準備をする。と、その時、ユーティアが近寄ってきた。
「ただいま、一樹さん」
「お帰り、ユーティア」
二人はそう言って、微笑みあう。みんなもその光景を見て、微笑んだ。
そして、瀬名の号令のもと、みなは叫んだ。
「よーし!いくよぉ!」
『おうッ!!』
―そして、劇は始まった。
みんな完璧に演技をこなし、笑いや、感嘆の声をとっていった。
瀬名たちの書いた台本も凄いが、それを完璧にこなすみんなも凄い。相当気合入ってるようだ。もちろん、それは一樹とユーティアにも言えたことで、二人も次々と演技をこなしていく。ユーティアなんかは一体どこでこんな技術を身につけたのかと言うほど素晴らしい演技だった。
そして、いよいよラストシーン。残すところ、あとはキスシーンのみ。
「待ってたよ。ずっと……」
劇中のセリフなのだが、一樹が本当にユーティアを待ってただけに物凄い実感がこもっている。瀬名なんか思わず熱くなって拳を握り締めてる。
「ずっと、逢いたかったです……」
これもやはり劇中のセリフなのだが、ユーティアがずっと一樹に逢いたかった分、感情がこもっている。瀬名のみならず、みな力が入っている。
そして、二人は互いに目を閉じ、ゆっくりと顔を近づける。観客席にも弥が上に盛り上がってきた。無論、瀬名たちもだ。
そして、二人は、ゆっくりとキスをした。
その途端、会場は拍手の渦に巻き込まれた。一樹とユーティアは身体を離すと、互いに微笑みあった。その微笑みは、とても温かく、優しい微笑だった。
さらに拍手は強くなった。みな立ちあがり、拍手をしている。
そう、今、ステージにいる二人に向けて。
いつまでも、いつまでも拍手は続いていた……。


                                 
                                  完







どうでもいいようなあとがき。(時間のある人だけお読み下さい)


やっとこさ書き上げました。
ユーティアSS(既にショートじゃない気もするが)ことエンジェルズ・サーチャー。
まさかここまで長くなるとは書いた本人である僕も予想がつかなかった。
余計なことばっかり入れてるからだ。という説もありますが。(汗
さて、気を取りなおして内容をば……。
今回の主人公は僕の書くSSにしちゃ珍しく、何の力も発揮してません。霊感は持ってますがユーティアの羽根を視るのに使っただけですし。顔が女の娘っぽいです。それを使って殺人犯の塒を倒してましたが、決して力が強いというわけではありません。怒りパワーでしょうね、きっと。(笑
また、本文中で何回か謎の人物が出てますが……、わかる人だけわかってください。(笑
って言うかわかる人いるのかね?亜希って名前だけであの二人が誰か。(爆
ちなみに主人公の一樹くんはその謎の人物(笑)の男の子の方の従弟です。と言っても男の子の母親の方の家系なので、精霊ではありません。何故か霊感は持ってますが。(笑
読みづらい部分等たくさんあると思いますけど、そのあたりは何卒ご了承お願い申し上げます。
それでは、次回(あれば)またお会いしましょう。それでは。

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