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Original Novel MOTOKA Presents



人間と精霊と


第1話

人間と精霊と



この広い広い世界とは別次元にあると言う精霊界。
その精霊界は世界の何処かにあると言う『門』…要は出入り口で人間界と繋がっている。
しかし、その『門』の存在を人間が知ることは無い。
偶然入ってしまい精霊界に人間が来る事はたまにあるのだが、その確率は恐ろしいほど低い。
それもそのはず。『門』を開くためには多少なりとも力が、要は精霊たちが使う力、空を飛んだりとかいったものだ―が必要なのだ。
人間の中にも時々そういう力を持った人間が生まれてくる場合がある。
そういう人間が迷いこむことがあるのだ。まあ、ここ数百年はないが。
万が一入ってきた場合は即刻帰している。と、言うか即刻迷い込んできた人間があっさり帰るのだが。こ、ここはなんかやばい!…といった感じで。
ちなみに精霊だからと言って寿命が長いわけではない。ほぼ人間と同じだ。
今、その精霊界でちょっとした会話をしている親子がいた。
どうやら父と娘のようだ。
父は温和そうな顔つきで優しそうな人だ。
娘は年の頃15,16歳といったあたりだ。見事な流れるような長髪だ。
渋谷を歩いたら10人中、8,9人はナンパするほどの美形だ。
はっきしいって超・をつけてもいいぐらいの美少女であろう。
「―というわけだ。よろしく頼むぞ」
「うん。わかった。父さん」
彼女はうなずくと、とん、と地面を蹴り、父親から預かった荷物を持ち、空へと舞った。

「う〜ん。気持ちいい青空〜」
彼女―リリィ・アーディンはそう呟いた。
確かに今日は素晴らしい快晴だ。荷物運びを頼まれてなければ草原で昼寝したいぐらいに。
「そう言えば父さんから預かった荷物って何だろう?」
リリィの父親はこれをとある人に渡してほしいと言っていた。本来なら父親自信が出向くのだが、どうしても外せない用事があるということなのでかわりにリリィがこうして出向いているのであった。
その荷物とは何やら細長い物体だった。
何故かやたらと長い。
「何だろ?」
リリィが訝っていると、シュッ、と風を切る音が聞こえた。
思わず空中で止まり周りを見渡してみる。
しかし、何も見当たらなかった。
「気のせい…かな?」
気を取り直しまた進もうとしたその瞬間!
ピシイ!リリィの手に鋭い痛みが走る。
「痛ッ!」
思わず声を上げ手を抑える。
結果、荷物はしごくあっさりと落ちていった。
「え?あ、きゃーーッ!!」
慌てて荷物を追いかけるリリィ。
荷物はとある『門』へと落ちていった。
その『門』とは、人間界、そして日本へと通じる『門』だった……。


東京都内某所。
現在時刻は9時37分。もう寝る人もちらほら現れる時間帯だ。
とあるマンションに一人の少年―大野圭介(おおのけいすけ)が窓から顔を出していた。
「風が気持ちいいな……」
別に青春を感じているわけでもロマンティックに星を眺めているわけでもない。
単に涼んでいるだけだ。
「ん?」
圭介は何か勘が働き、咄嗟に顔を引っ込めた。
するとその瞬間、何かやたらと細長い物体が落ちていった。
「な、何だ?」
慌てて窓に駆け寄ると下を見てみる。
だがそこには何もなかった。
地面が広がるだけである。
「あれ?変だな?」
と、訝っていると今度は上から何か聞こえた。
「―――てーッ!」
「?」
不思議がり辺りを見回す。
すると先ほどよりはっきりした声が聞こえてきた。
「きゃーーッ!どいてどいてー!危ないーー!」
ハッとして上を向く。
しかし、それが命取りになった。
上から落下(?)してきた何者かは、見事に圭介の身体にに強烈な体当たりをくらわしてくれた。
よって、しごくあっさりと圭介の意識は闇へと落ちていった……。

翌日圭介は目を覚ました。
「……あれ?」
圭介は声を上げた。
何故なら自分がベッドに寝ていたからである。
昨日は何が何やらわからないまま気を失ったはずだ。
確かその時は窓際で気を失った気が……。
でもベッドにいる。
考えられる事はただ一つ。
「昨日の事が…夢だ…ってことだよなぁ……」
やけにリアルだったような気もするが……。
「う〜ん…昨日の事が夢だとは思わないんだけど……」
「うん。そうだよ」
「わあッ!?」
いきなり横手から声がかかったので思わず飛び退く圭介。
声をかけてきたのは一人の少女だった。
どきっ、とするような可愛い顔。見事な長髪。
圭介は咄嗟に全ての脳味噌をフル活動させた。
自分の歩んできた16年間を振り返ってみるが今目の前にいるような美少女とは出会った記憶はない。
それ以前にこんな美少女は見たことがない。
「……君、誰?どうして僕の家にいるの?」
放心しかけそうなのをなんとか堪えつつ聞いてみる。
「あ、ごめん。自己紹介がまだだったね。私、リリィ・アーディン。リリィ、って呼んで」
「あ、うん。リリィ。僕は大野圭介。16歳だよ」
「あっ、奇遇ね!私も16歳なのよ!」
「へー。同い年かぁ。……ってそうじゃなくて。ねぇリリィ。どして僕の家にいるの?君と僕は初対面のはずだよね。僕の家にいる理由が判らないんだけど……」
まさに、はーさっぱりさっぱりだったので聞いてみた。
「ああ、そのことね。昨日ね、圭介に体当たりしちゃったでしょ。あの後圭介気を失っちゃってて。ほっとくわけにもいかないからベッドに寝かして様子を見てたの」
なーるほど。と圭介は思った。
理由はわかった。にしても優しい性格なんだな。圭介は感心した。
しかしそれで圭介の疑問が全て氷解したわけではない。
よって次なる質問。
「ね、リリィ。どして…上から落下してきたの?」
そう。これだ。これが一番聞きたかったのだ。
普通飛び降りるような馬鹿はいない。
いや、事故とか自殺とか映画の撮影とかは置いといて。
ともかく普通の人間はよっぽどの事情がなけりゃ飛び降りたりしない。
いやまあ1,2メートルなら飛べるぞ。とかいうツッコミは置いといて。
要は十数メートルを飛び降りる人間はいないということだ。
しかし、リリィは落ちてきた。
しかも見たとこ外傷もないみたいだし、彼女が自殺するようには見えない。
じゃあ、何で上から落下してきたんだ?と言うのが圭介の疑問だった。
「う……それは……その……」
やけに言葉を濁すリリィ。
その時圭介の頭に閃くものがあった。
本当は彼女、自殺しようとしてたんじゃないか!?
とてもそうは見えないけど実はそうかもしれない……
それを僕が止めた(?)から……
と、勝手な憶測をし、数秒で言葉をまとめたあと言った。
「リリィ!自殺はだめだ!君は若いんだから自殺なんてするものじゃない!」
それを聞いてリリィはしばし呆然とした。
(…どうも勘違いしちゃってるみたい…。私は自殺なんてしようとはこれっぽちも思ってないんだけど…)
と、思い口を開こうとした時、圭介と目が合った。
その目は冗談でも何でもなく、真剣にリリィを心配している目だった。
純粋な目。今時珍しい目かもしれない。
(圭介……本気で私のことを心配してくれてるんだ……)
その時リリィは不思議な気持ちがした。
ほんのり温かいような気持ち……。
この時リリィは決心した。
自分の事を包み隠さず話そうと。
実はこの地球人口の約1%が精霊である。
それ故、この世界には精霊がいると知っている人も極僅かだがいる。
ここらで一人くらい増えたって関係ないよね。
ま、信じてもらえないとは思うけど。
と、しごくあっさりとリリィは決定した。
いいのか。それで。
「圭介。私は自殺なんてしないよ。私がね、空から落下できたのはね、私が精霊だからなの」
呆然。まさに呆然。
圭介は暫くボケーと突っ立っていた。
そして暫くしてから口を開いた。
「普通なら嘘でしょ。とか言うとこだけど…実際にみせられたんじゃしょうがないよ。思い当たる節もあるしね。リリィ、人間とは思えないほど綺麗&可愛いしね。って人間じゃないのか」
最後の方は少し困った顔をしつつ言う。
この言葉を聞いて多少なりともリリィは驚愕した。
第一に圭介があっさりリリィを精霊だと認めたということ。
こんなあっさり信じるなんて。珍しい。
そして第二にリリィを可愛いと言った事だ。
リリィ自信精霊界での女の子の友達には可愛いと言われた事はあるのだが、男の子から、それも同年齢の人間の男の子に言われたのは初めてなのだ。
よって嬉しかったし、多少恥ずかしくもあった。
「あ…あの…ありがと…」
多少顔を赤くしながらポツリと囁くように呟くリリィ。
それを不思議そうな顔で見つめる圭介。
こやつは恋愛には疎い。多分。
と、純粋な顔で見つめられさらにうつむくリリィ。
と、そう、うつむいている場合ではなかった。
「ねえ、圭介。細長い物体を見なかった?」
これを聞かなければならなかった。
リリィはこれを追いかけて人間界まで来たのだから。
「見たよ。でも、すぐに下に落ちていったし…、それにその後下を見ても何もなかったし…、あ!もしかしてリリィはそれを捜しに人間界まで来たの?」
「うん。実はね……」
と、リリィは人間界に来る事となった経緯を話し始めた……。

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