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Original Novel MOTOKA Presents



人間と精霊と


第2話

お荷物捜して右往左往



「そ〜ゆ〜わけなんだ」
「そ〜ゆ〜わけなの」
リリィからひとしきり話を聞き終えうんうんとうなずく圭介。
「と、なると気になるのはリリィが感じたっていう痛みだな」
そう、それなのだ。
リリィは突然その痛みを感じたから荷物を落としたのだ。
まあ、その痛みがなければ圭介と出会うことはなかったから、今はその痛みにちょっと感謝かな。
などとリリィは密かに思っていたりするのだが圭介はそんな事を知る由もない。
「いきなりつった…ってことはないよね?」
「うん。あの痛みは鍼で刺されたような痛みだった。それだけ痛かったから私も荷物、落としちゃったの」
ちょこん。と正座をしながら言うリリィ。ちなみに圭介はベッドに座ってたりする。
「う〜〜む。怪しいな。それだけの痛みとなると自然には起こりにくいよな。と、なると……故意におこされたのか?リリィ、心当たりある?」
「ううん。そんなのない」
と、ぶんぶん首を横に振る。
結構激しく振っている。
どうやらそういう恨みを買う精霊じゃない。と言いたいらしい。
というか疑われるのが嫌なのだろう。圭介に。
「そっか。ん〜…じゃとりあえず痛みの件は保留にして……次の問題だ。その落ちた荷物を捜さなきゃな。……ねぇリリィ。その荷物って何時までに届けなきゃならないの?」
これも重要なことだ。
これを知らなきゃ結構というかかなりマズイ。
「ええっと、確かね……一週間後までのはず……」
「一週間?やけに長いね」
「父さん一週間以内に届けろって言ってたし。届け先が遠いから余裕を持たしてくれたんじゃないかな」
と言う。実際はリリィもあまりよくわかってないみたいだ。
「よし!一週間も時間があるなら大丈夫だろ。よしッ、さっそく捜しに行こう!」
と圭介は勢いよく立ちあがる。
それにならいリリィも立ちあがる。
しかしふにゃっとなってしまう。
立ちあがれないリリィに手を貸しながら圭介は呟いた。
「……リリィ、もしかして正座弱い?」
「ふみゃ〜〜」
意外な弱点発見。
少し意地悪い笑みを浮かべながらリリィを見る圭介。
その顔に気づいたのか少し怒ったような顔でリリィは言った。
「圭介……もしかしてからかってる?」
「とんでもない」
と慌てて首を横に振る。
「嘘でしょ」
「いやいや」
「嘘でしょ」
「い……」
そこで圭介は言葉を切った。
リリィの表情が怖い。怖すぎる。
可愛い顔なので迫力はあまりないのだが、その胸の内に秘められた怒りは本物だ。
よって、リリィが本格的に怒らないうちに圭介は話題をかえた。
「さ、さっ、行こっ」
慌てて逃げるように歩いていく圭介。
「け〜すけぇぇぇ〜〜」
リリィの恐ろしげな声が聞こえてきた。
そして、数十秒後、圭介はお久しぶりに本気で悲鳴を上げることとなった。

「それじゃ、改めて行きますか……」
用意をして、完全遠出装備を装着して家を出る二人。
リリィは装備なんてものはないが。
「まずは情報収集よね〜」
と、リリィがお決まりの言葉を言う。
いやいや、情報収集は大事だぞ。本当に。
「そうだな。目撃者がいないか聞いてみよう」
と言って圭介は歩き始める。
その後を追いながらふとリリィが聞いてくる。
「ねえ、圭介。心当たりあるの?その目撃者って人」
「いんや。ない」
はっきりきっぱり断定する圭介。
「じゃ、じゃあどうするの?」
「大丈夫。まかしとけって」
そう頼もしく言う圭介の顔はどことなくいやそーな顔をしていた…。

そしてとある喫茶店に二人はいた。
が、いま席に座っているのはリリィ一人だけだ。
圭介は数分前に電話探してくると言ったきり帰って来ない。
ちなみにその本人の圭介はというとようやく見つけた電話ボックスでとあるところに電話をかけていた。
ごくりと唾を飲み込み精神を落ち着かせる。
出来ればあまりかけたくないところだが場合が場合なので覚悟を決める。
「…………頼む!神様仏様精霊様!って精霊はリリィか…。…じゃなくて!ともかく誰でもいいから助けてください!どーか厄介事になりませんよーにッ!!」
これは嘘偽りなく圭介の本音だった。つまりはそれだけ圭介が苦手とする人物なのだ。
そして数回コールしたあと相手が出た。
『はい。もしもし』
ついにその相手が出た。
圭介は気持ちを落ち着かせゆっくりと話始めた…。

「あ、圭介お帰り」
席で飲み物をすすっていたリリィが顔を上げて言う。
だが圭介はそれには答えずテーブルに突っ伏した。
その顔は多少大袈裟かも知れないが死刑宣告を受けたような顔だ。
圭介のただならぬ気配を感じ取ったのかおずおずと聞いてくるリリィ。
「け、圭介……どうかしたの?」
おずおずと心配そうに聞いてくる。
ついさっき知り合ったばかりなのになんでそんなに心配そうな顔が出来るんだろ?
と思ったりする圭介だったが自分もよくよく考えたら似たようなもんだ。
いきなり空から降ってきた自分が精霊だと名乗る女の子に出会いその女の子が落としたという荷物を捜すのを手伝うなんてお人好しにもほどがあるな。
そう思い圭介は苦笑した。
もとから圭介はお人好しだ。
圭介の父―今は外国に行っている―が滅茶苦茶お人好しなのだ。
困っている人を見かけたら助けられずにはいられない。
恐らく…というか確実に父親の遺伝だろう。
また苦笑する。
そして気をとりなおして質問に答える。
「いや…単にこれからくる人が苦手なだけ」
引きつった笑顔を浮かべる圭介。
とその時扉の開く音がした。
そして一人の少女が入ってくる。
年の頃16、17歳ぐらいだろう。
セミロングに伸ばした髪をカチューシャでとめている。
その少女は圭介たちのいる席にくると問答無用といった感じで席に座る。
その少女を見て少なからずリリィはムッとした。
何で圭介はこの子を呼んだの?
といった感じで。
そしてゆっくりと圭介が声をかける。
「…調べてきてくれた?」
「もちろん。私の情報網に引っかからないものは無いわ!」
得意そうに胸を張って言う少女。
そして反らしてた胸を戻すとじぃぃくりっとリリィを見出した。
「この子ね。今回の依頼人は」
「かなり違うような気もするけど…まあそんなもんだよ」
なるべく少女と目を合わせないようにしている圭介。
その少女はリリィを見終わるといきなりこう言った。
「圭介……どうやってこんな可愛い子口説いたの!?」
ずごっ!圭介は思いっきりテーブルに突っ込んだ。
「ちょ、ちょっとまて、亜希ッ!僕はリリィを口説いちゃいないぞ!なあリリィ!」
答えを求められ多少呆気に取られつつも素直に答えた。
「う、うん。口説かれてはいないよ……」
「ほれみろ!」
と勝ち誇った声を上げる圭介だが亜希は慌てず騒がず冷静に言った。
「一つ、既に名前を呼び捨てで呼んでいる。二つ、随分親しい。以上のことからあなたたち二人はデキてると考えても不思議ではない。―反論は?」
絶句。二人とも絶句。
(し、しまったぁぁぁーッ!あ、亜希に言葉で適うわけがない!迂闊だった!)
と圭介は後悔の渦に巻き込まれていくが、リリィは別の意味で絶句していた。
(私と圭介って恋人同士に見えたりするんだ……)
とぽーっとしたりしまっている。
それを見ながら亜希は呟いた。
「もしかして…マジでデキてる?」
その問いに二人は答えなかった……。

数分後ようやく落ち着いた二人を見ながら冷静に亜気は言った。
「圭介が捜している物だけどね……その荷物ってやつはどうやらトラックに乗っちゃったみたいなの。そのトラックはこの東京を巡回している宅配便なの。それでしらみつぶしに捜してみたところ、最後の目撃情報が渋谷辺りで終わってるの。つまりはその辺りにある確率が高いってわけ」
亜希はやや…というか結構なトラブルメーカーではあるのだが、亜希の持つ情報網は物凄いので意外と役立つ。おかげで荷物の行方もわかった。
「ありがと、亜希!助かったよ!今度なんかおごるわ!」
そういって勘定をすませ出て行く二人。
亜希もならい出ていった。
そして歩き出そうとする二人に亜希は声をかけた。
「圭介」
「何?」
足を止め振り返る圭介。
「あなたたち二人のこと噂しとくから」
「なぬッ!?」
驚きの声を上げ亜希を見る。
だが亜希は恐ろしいまでものスピードで逃げていく。
速い。速すぎだ。五十メートル5秒いってんじゃないか?
などど考えてた圭介。
もちろんそんなことを考えているうちに亜希はとっとと逃げたのだった。
「まっ、いっか」
対して気にした様子もなく言う圭介。根がお気楽な人だから……。
「さッ、いこうリリィ!渋谷へッ!」
「うんッ!」
二人は大きく頷き歩き出す。
渋谷へむけて……。

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