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Original Novel MOTOKA Presents



人間と精霊と


第3話

別れ―短き時間―



渋谷―大体人は多いが今日は少し少ないような気がした。
ただ、そう思っているのは圭介だけかも知れなかった。
リリィは人の多さに唖然としているからだ。
さっきから辺りをきょろきょろ見回している。
それを好奇の目で見ていく人々。
好奇の目で見ていくのはリリィの可愛さが大半だろう。
さっきからリリィは道行く人たちにナンパされてばっかりだ。
一度なぞ圭介を突き飛ばしてまでナンパした輩がいた。
その輩は圭介を突き飛ばされて頭にきてたリリィが強烈な平手打ちと罵詈雑言、さらにこちらも頭にきてた圭介が強烈な蹴りをかましたのですごすごと退散していった。
周りの人たちは二人に絶賛の拍手をおくった。
だが圭介はその人たちを見て唖然とした。
亜希情報網グループの人が何人かいたからだ。
ま〜た変な噂がたつんだろうな……。
などど考えちょっと憂鬱になってた圭介だがあっさりその憂鬱は頭の片隅へと追いやった。
だって楽しいじゃないか。デートみたいで…。
そう考え一人で赤面したりしていたのだがぶんぶんと頭を振ってその思いを打ち消す。
少なくとも圭介は女の子と二人で街を歩いていて女の子を意識しないほど鈍感ではなかった。
と、何だか荷物捜しからデートへなってきてるような気もするが、おねむね二人は楽しく歩いていた。
もちろん荷物も捜している。道行く人に聞いているのだ。
ここで何で荷物がこうあっさりと亜希情報網に引っかかってるわけがわかった。
荷物はトラックの屋根の上に乗ってたらしいのだ。
そりゃわかるよなぁ……。
亜希に聞くまでもなかったかもしれん。
と思うがもう遅い。
恐らく亜希はもう学校中に噂を広めているだろう。
そう考えるとさきほどの憂鬱が復活してきた。
だがすぐその憂鬱を追い払う。
憂鬱になっても仕方ないからだ。
と、あっさり憂鬱は消滅した。
立ち直りの早いやつ。
「け〜すけ〜〜」
困ったような顔で話かけてくるリリィ。
リリィの方に向き直り圭介は大きくため息をついた。
そこには一人の男がいた。つまりはナンパだ。本日16回目。
「あああ、くぞう。このままじゃ埒があかねえ。こうなったら亜希を頼りにするしかない。行くぞリリィ」
「うん」
二人は駆け出した。イコールナンパは無視。完全無視。

「…………わかった。サンキュー亜希」
がちゃっ、と受話器を置いて電話ボックスから出る圭介。
電話ボックスの中は結構暑い。まあ仕方ないが。
ちなみに携帯使えばいいじゃないかとか思うと思うけど圭介は見事に携帯を家に忘れてきたのだった。というかもとから圭介は携帯を使わない。電話するような相手もいないのだ。
「どうやらあの辺りが怪しいらしい」
言い指差すその先には非常に入り組んだ街並みが。
自分で指差しといてなんだけど圭介はげっ、とした。
入り組みすぎじゃ。下手な迷路よりすごいぞ。多分。
まあ、仕方ないか。うん。そうだよ。
成せばなる。成せばならぬ。何事も。
圭介はうんうんと頷いた。
「さあ行こう!リリィ!」
「うん!」
そうして二人は歩き出した。
東京都渋谷区渋谷街裏路地巨大迷路へと……。
と、本当にそんなのがあるかどうかははなはだ疑問だが……。

―数時間後。
二人はへとへとになっていた。
「ち、ちくしょおおおぉぉぉぉッ!!」
頭をかかえて絶叫する圭介。
「み、見つからねええぇぇ!!っていうかここ広すぎじゃああぁぁぁ!!」
もはや悲鳴に近い。
リリィは疲れきって叫ぶ元気もない。
「だ、だがしかし!あらかたは調べつくした!あと少しじゃあ!!」
疲れすぎでちょっとハイになっちゃってる圭介。
だがその疲れを押し殺して二人は歩き始めた。
―そして、とある家。
チャイムを鳴らし家の方に出てきてもらい荷物のことを聞いてみた。
すると意外な反応が。
『え?やたら細長い荷物?……あ!それ確か昨日辺り間違って家に届いてたわ』
「や、やったーッ!!」
二人は思わず大声を上げ互いに抱き合う。
二人は暫くそうしていた。
そしてハッと気づき慌てて二人とも身体を離す。
二人とも顔は真っ赤だ。
「え、えと、じゃあ荷物受け取りにうかがいますので」
顔を真っ赤にしたままインターホン越しに相手に言う圭介。
こうしてめでたくお荷物捜しは終了したのだった……。

そして、二人は家に帰ってきた。
だが、二人ともしーんとしている。
荷物捜しが終了した。イコール二人の別れが近いということを知ったからだ。
今、圭介の家には圭介とリリィ、二人しかいない。
静寂の時を今、二人はすごしている。
「リリィ……」
圭介は話しかけるがそれ以上言葉が続かない。
リリィが初めて見せた深い哀しみの表情に戸惑っているのだ。
結局、言葉をつぐんでしまった。
長い長い静寂の時が二人を支配する。
そうしてどれくらいたっただろうか。
ふとリリィが言葉を紡いだ。
「ねぇ…圭介。もう、お別れ……なんだよね……」
そう言うリリィの表情はとても哀しげだった。
リリィにとって圭介は人間界に来てからはじめて出来た友達なのだ。
それまで精霊界に友達はいたのだが、同年齢、しかも人間の男の子に優しくしてもらったのははじめてなのだ。
だから……リリィにとって圭介と別れることはとても辛いことなのだ。
圭介はリリィに何も言えなかった。
ただ黙って聞くだけである。
そうして暫くの時間がたった後リリィは圭介の隣に座り圭介に寄りかかった。
もう、圭介も顔を赤くはしない。
そんな気分ではないからだ。
ただ、何も言わず、黙っているだけである。
圭介も哀しいのだ。短い時間だったけど楽しかった。
だから哀しくない。そう思いこもうとしても駄目だった。
そんな考え事をしているうちにリリィが話しかけてきた。
「ねぇ、圭介……今日は……ずっと、このままで……いさせて……」
「うん……。わかった。……僕も…ずっと、このままで……いたいから……」
優しく微笑むとリリィは涙ぐみ、
「ありがとう……圭介……」
そう言い静かに目を閉じる、暫くすると微かな寝息が聞こえてきた。
その寝顔はびっくりするほど可愛らしい。
圭介は立ちあがろうとしたができなかった。
リリィの手が、しっかり圭介の服を掴んでいた。
圭介は微笑むと毛布を引っ張り出し自分とリリィを包む。
そして、自分も静かに目を閉じる。
そのまますぐに圭介の意識は闇へと沈んでいった……。

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