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Original Novel MOTOKA Presents



人間と精霊と


第4話

知られざる真実―始まりと終わりを司る剣



翌朝、圭介は目を覚ました。
隣では静かな寝息を立ててリリィが眠っている。
圭介は立とうとしたが、やはり無駄だった。
昨日のまま、しっかりと服は握られている。
圭介は苦笑しそのままの状態でいる。
どうせ、今日は学校休みだ。いつ、リリィが起きてもいいさ。
と、考える。
現在時刻は6時47分。いわゆる普通の時間だ。
時計を見てそんなことを思う。
ふと、リリィを見ると何やら口が動いていた。
「…けーすけ……」
「……寝言か……」
呟きそして微笑む。
彼女と知り合えただけでも感謝すべきかな。
と思ったりするができればもっと一緒にいたかったな。とも思う。
そう考えると憂鬱になった。
ああ、もう、考えるのやめやめ!!
圭介は考えることを放棄した。
今は隣にリリィがいる。それだけでいいじゃないか。
ん?よく考えればリリィは隣にいる。そんでもって無防備に寝ている。…………。
……ちょっと動けば押し倒せる……か…………?
などど考えている自分に気づきハッとなる圭介。
それに気づいたのかそうでないかは不明だがリリィが起きた。
「おはよう。圭介」
「あ!?う、うん、おはよ!」
やけに慌ててあいさつをする圭介を不思議そうに眺めるリリィ。
だがその表情はすぐに暗くなる。
それに気づき圭介の表情も暗くなる。
「圭介……今日がお別れ、なんだね……」
「ああ…………」
短く、静かに答える。
「さ、行こ。……見送り、来てくれるよね?」
「当たり前だろ」
苦笑しリリィとともに家を出る。
家から歩いて数十分。
ただっぴろい草原に二人はいた。
暫くするとリリィは静かに歩いていった。
そして草原の中央に立ち止まるとこちらにむけて大きな声で言った。
「圭介!荷物を届けて来たらすぐに戻ってくるよ!だから……待ってて!!」
こちらも負けじと大きな声で言った。
「ああ!待ってる!!」
力強く、はっきりと言う。
リリィも頷く。
暫く、そのままの時間が続いた。
そして、意を決したのかリリィはくるりと後ろを向きとん、とかるく地面を蹴り空へと舞った。
しばしその姿を目で追っていた圭介だが、その姿が完全に見えなくなるとくるりと踵を返し家へと向かう。そして、家へ帰って来たとたん電話が鳴り響いた。
何だろと思いつつ受話器を取ると意外な相手が出た。
『圭介か?』
「父さん?どしたの?」
そう、かけてきた相手とは圭介の父親、裕造(ゆうぞう)だった。
『お前に伝えたい事があるんだ。圭介、リリィはいるか?』
「いや、ついさっき精霊界に帰ったばっかだけど……って何で父さんがリリィのこと知ってんだ!?」
圭介は驚愕の声を上げた。
そりゃそうである。いきなり電話越しにリリィいるか?だから。まったく精霊を知らないはずの裕造が何故知っているのか不思議でたまらない。
『…実は私はお前に言ってない事があるんだ』
その後暫くの沈黙があった。
『私は……精霊なのだよ』
絶句。まさに絶句。だが絶句の規模が違う。これなら普通なら父さんなに言ってんだ。で終わらせられるのだが、リリィいるか?と言われた後ではいまいち反論できない。
「ま、マジ!?父さん!?」
『マジだ。大マジ』
聞いてはみたがあっさり肯定された。
『ふむ。お前にはいつかは話さねばならんとは思っていたがどうやら今がその時のようだ。圭介、これから私が言うことをよく聞け』
いつになく神妙に言う父の声を聞き圭介も押し黙った。
しっかしこの親父真面目に言う声が似合わないなぁ。などと圭介は思っていたのだが無論裕造は知る由もない。
『私の本当の名はユーザス・ゲインブレッド、精霊界王室第一近衛兵団隊長だ。私の家は代々剣術を教えている家でな。ほら、お前にも教えただろう』
確かに教えてもらったことがある。裕造―ユーザスの道楽がわりに。
『私は精霊界出身だ。だが、ある時ある物を発見し、それの管理のために人間界に降りてきた。そしてそのある物とは『始まりと終わりを司る剣』だ。リリィの持っていた荷物、『生と死を司る剣』と対をなす』
「なッ!?リリィの持っていた荷物の中身って剣だったのか!?」
驚く。知らなかったから無理もないが。しかし何故自分家に剣があるのを不思議に思わないのか。
裕造はちょっとばかし呆れた。
『そうだ。今からこの事件の全貌をお前に話す。心して聞け』
そして、裕造―ユーザスの話が始まった……。

そして、今圭介は裕造の部屋にいた。
ここに、『始まりと終わりを司る剣』があるというのだ。裕造はこう言った。
『その剣が全ての元凶なのだ。『始まりと終わりを司る剣』と『生と死を司る剣』が互いに出会い、間違った使い方をされれば大変なことになる。だが、二つの剣は互いの剣でしか壊せない。…皮肉なものだ」
裕造はふと哀しい声で言った。
そして、言葉を続けた。
『今奴等は二つの剣を狙っている。あれが奴等に渡ったら大変なことになる。その前にリリィと出会い二つの剣を消滅させるのだ』
圭介はこのことを承知した。
だから圭介は今、剣を取ろうとしている。
裕造に言われた通りの操作をし、隠し金庫をだす。そして、金庫のパスワードを入力する。
かちゃ。小さな音をたてて金庫が開く。
中には長い剣が入っていた。これが『始まりと終わりを司る剣』なのだ。
圭介はそれを手に取ると金庫を閉め、家を出ていった。

今、圭介は先ほどリリィを見送った草原に来ていた。
ここに精霊界へと通じる『門』があるのだ。それに、リリィに近づくにはここが一番手っ取り早い。
「『始まりと終わりを司る剣』よ!我を精霊界へと導け!!」
剣を高く上げ叫ぶ。すると圭介の身体を光が包み込み、一瞬、光ったかと思った瞬間に消えた。
圭介は、今、精霊界へ旅立っていた…………。

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