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Original Novel MOTOKA Presents



人間と精霊と


第5話

精霊界―二つの剣―



一方こちらはリリィ。
歌を口ずさみながら目的地に向かい飛んでいた。
ぽかぽかと天気は良く、気を抜くと眠ってしまいそうな陽気だ。
事実、今まで何回か眠りそうになった。
昨日、よく寝たはずなのに……。
昨日のことを思い出す。それはつまり圭介のことも思い出すというわけで……。
と、いきなり憂鬱になってしまったリリィだった。
しかし何とかその憂鬱を振り払い気分を変え、進んでいく。
―それから十数分は何事も無く平穏無事に過ぎた。
だが、その平穏無事は今、まさに破られようとしていた。
シュピィィッ!
風を切るような音が聞こえてきた。
その時リリィは強烈なデジャ・ビュを覚えた。
この音は、前に聞いた―…!
そう頭で考えた瞬間!
ピシイ!
前に感じたのとほぼ同じ痛みがリリィを襲う!
また、リリィは荷物―『生と死を司る剣』を落としてしまった。
だが今回は運良く下には地面があり前みたいなことにはならない。
急ぎ地面に向かい荷物を抱える。
そして、飛び立とうとしたその時!
「ふふ、その荷物をこっちに渡してもらおう」
そう言いながら数人の男たちが現れた。
手には各自それぞれの武器。
「女の子一人にちょっと物騒じゃない?」
少し余裕を持って言う。
だが、男たちは慌てず騒がず、
「荷物を渡せ」
とだけ言う。
「い・や・よッ!」
叫び飛び立つ。
だがしかし、男の一人が放った光球が足を掠め痛みのあまり転倒してしまう。
じりじりと男たちは近づいてくる。
だが、彼女は諦めず、必死に抵抗を試みる。
かなり大きい光球が出現する。
その光球はまっすぐに男の一人を狙う!
こんなに強い光球を生み出せるとは思ってなかったのかもろに直撃をくらう。
光球をくらった男は遥か後方に吹き飛ばされていく。
「私だって、戦闘訓練はうけてるんだから!」
言い、再び光球を生み出そうとする。
しかし、残った男たちが先に攻撃を仕掛けてきた。
リリィは咄嗟に攻撃を止め、飛び退る。
だが、男たちの攻撃は正確でリリィの身体の数カ所に攻撃がヒットする。
「きゃあッ!」
悲鳴を上げ倒れふす。
男たちは残忍な笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。
もはや逃げられない。
そして、男の一人が武器を振りかぶり、振り下ろした。
キンッ!
甲高い音がした。
男の持つ武器はゆっくりと地面に落下していた。
いや、吹き飛ばされていた。
そして、武器を吹き飛ばした何者かはなめらかな動きで男の一人を倒す。
「な、何だてめえはッ!?」
ようやく我に帰った男の一人が言う。
問われた何者かは静かに答えた。
「精霊界王室第一近衛兵団隊長、ユーザス・ゲインブレッドの息子、大野圭介だッ!!!」
叫び手に持っていた剣―『始まりと終わりを司る剣』を振りかぶり男たちに向かう。
圭介は滑らかな動きで次々と相手をねじ伏せていく。圧倒的な強さだ。
だが男たちに焦りは無い。何か秘策があるのだろう。
「やるな。しかしコイツに勝てるかッ!」
男が叫ぶと一体の怪物なようなものが出現した。
「グロい……」
小さく呟く圭介。慌てず騒がずゆっくりと近づき、
「ゲインブレッド流奥義、斬翔破斬」
ブオウッ!
風が巻き起こり―そして、風がおさまった時には既に怪物らしきものは真っ二つにされていた。
こうもあっさりと倒されるとは思ってもいなかったのか男たちは明らかに狼狽していた。
「て、撤退だ!」
号令で一目散に逃げる男たち。
それを見送ってから圭介はようやく一息ついた。
「いきなりだったからうまくいくかどうか心配だったけど……成功してよかった」
ほっ、と息をつく。どうやら内心は結構ドキドキもんだったらしい。しっかし生か死かという場面で成功するかどうかわからない技を使うとは……肝がすわってるんだかなんも考えてないだけか……。
と、圭介はくるりと振り向いた。
リリィを見て圭介は柔和な笑みを浮かべた。
「ごめん。助けにくるのおくれて」
「ううん。いいの。圭介が助けに来てくれた。それだけで、十分だから」
「でも、僕がおくれたせいで君に怪我をさせてしまった」
「大丈夫。これくらいの怪我なら」
とは言ってるもののかなり大きい怪我だ。傍目にも無理をしているのがわかる。
「大丈夫なわけないだろ」
言い、リリィの怪我に手を翳す。
すると仄かな光がリリィの身体を包み込む。
その光はリリィの怪我を次々に癒していった。
「け、圭介……?」
その顔に気づいたのか、ふっ、と微笑を浮かべた。
「改めて自己紹介しよっか。―僕は、精霊界第一近衛兵団隊長、ユーザス・ゲインブレッドの息子、大野圭介。つまりは、半精霊。―母さん、人間だから」
絶句。リリィも見事に絶句した。圭介が裕造から聞いたような顔をしている。
それを暫し愉快そうに見ていた圭介だが、あまりにもリリィがボケーとしているので肩を揺さぶった。
「あっ、あ、圭介。突然だったからびっくりしちゃった。でも、もう大丈夫。―ところで圭介、何で精霊界に来たの?」
その問いに圭介は急に神妙な顔つきになって、
「君の荷物―『生と死を司る剣』を破壊しに来た」
暫し、静寂の時が流れた。
「わ、私の預かってた荷物って剣だったの!?」
「あえてそっちに驚くの……?」
呆れ顔になって呟く。
リリィは慌てて話を戻した。
「それで、えと……『生と死を司る剣』…だっけ?…を何で破壊しに来たの?」
問うと、圭介はまた神妙な顔つきになって静かに語りだした。
『生と死を司る剣』『始まりと終わりを司る剣』
二つの剣にまつわる話を……………。

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