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Original Novel MOTOKA Presents



人間と精霊と


第6話

二つの剣―秘められし力―



いつ、誰が、何処で、どのようにして、二つの剣が造られたのか。
それを知るものはただ一人としていない。謎に包まれている。
ただ、能力については大体わかっている。
造った者が書き残したのか二つの剣について文献が残っていた。
二つの剣はほとんど酷似していた。
『生と死を司る剣』はその名の通り人、精霊等、ありとあらゆる生物の生と死を操ることが出来る。
何の知識も持たないで聞くと、恐ろしい剣のようだが実際はそうではない。
剣を操るためには強大な精神力とそれ相応の儀式が必要なのだ。
それでもせいぜい虫一匹を殺せるかと言う程度。
しかも使った後には運が悪けりゃ剣を使った本人が死んじゃうというおまけつき。
―というわけで実際にこの剣を使うものはいなかった。
『始まりと終わりを司る剣』は能力的にはほとんど『生と死を司る剣』と変わらない。
始まりが生にあたり、終わりが死にあたる。
しかし、『生と死を司る剣』と決定的な違いが一つある。
それは、『生と死を司る剣』は生と死しか操れないのに対して、『始まりと終わりを司る剣』は夢と希望を操れるということだ。つまり、一つの夢があったとしよう。その夢を実現するために一歩踏み出すのが、始まり。夢を実現したときが、終わり。だけれども夢や希望はいくらでもある。それを司ることが出来るのがこの剣なのだ。
この二つの剣、デメリットが多すぎるため誰も使おうとしなかった。
―というより長らく二つの剣が人目に触れなかったと言う方が正しいだろう。
しかし、この二つの剣、一つ一つではなく、二つ揃って初めて力を発揮する剣なのだ。
二つの剣が揃うと、多くのデメリットがなくなる。互いに打ち消しあうのだ。
つまりは、一つでは虫一匹殺せるかといった程度だったのに、二つ揃った時から人でも殺せるようになってしまうということだ。
造った者も造った後で気付きあまりにも恐ろしい力なので二つの剣を何処かへと封印しようとした。
ところがとある賊に片割れの剣を盗まれてしまったのだ。だが、もう一つの剣は残った。一つ一つならほとんど心配ないので造った者は安心して剣を封印したと言う。
―それから長い時は何事も起こらず平和に過ぎた。
しかし、ごく最近になって賊に盗まれたと言う剣を見つけた者がいた。
その者こそがリリィを襲った奴等だと言う。
リリィの父親は奴等から剣を奪い取りリリィの荷物の届け先である人物に剣を封印してもらおうと思ったのだ。なお、リリィをむかわしたのは父親が囮になるためである。
―そして、奴等はその二つの剣を使い、全てを意のままにするつもりなのだ―

―以上が圭介の語った二つの剣についての話だった―
「そ、そんなことが……」
全てを聞き終えたときリリィはまさに放心状態だった。
無理もないだろう。軽い気持ちで運んでいた荷物がまさかそんなに重要な物だったなんて。
「だから、僕は、その剣を破壊する」
リリィには拒む理由は無かった。
だから、ただ黙って頷き、成り行きを見守っている。
圭介は静かに剣を地面に置き自分の持っている剣―『始まりと終わりを司る剣』を振りかぶった。
だが、振り下ろせはしなかった。
圭介はどさりと前のめりに倒れたのだ。
「圭介ッ!?」
慌てて駆け寄ろうとするリリィだが、それは出来なかった。
先ほど逃げたと思われた男たちがリリィを羽交い締めにしたのだ。
「残念だったな。剣とコイツはもらってくぜ。出来ればお前の剣も取りたいところだが下手に取ろうとしてやられても厄介だからな。勝ち目はないから取りはしないさ。だが、コイツは人質だ。お前は剣を持ってこの場所に来い。逃げたら……判ってるな。コイツを殺すぞ」
凄みのある口調で言うと男たちはリリィを連れて去っていく。
その姿が完全に見えなくなったころ圭介はようやく起き上がった。
男たちは勘違いしていた。あの時圭介は動けなかったのだ。
「あの時、剣を取らなかった事を後悔させてやる……」
静かに、しかし確実に怒りを込めて圭介は呟いた。
そして、男たちが置いていったリリィの居場所を示す紙を握り締めた……。

「来たか……」
男の一人が低く呟く。
「見ているがよい。あやつが無惨に殺されるさまをな……」
その男は隣に囚われているリリィに向け話し掛けていた……。
―その数分後、男はその表情を歪めることとなる………。
―リリィの囚われている場所。
そこは巨大な洋館だった。
普段なら威厳と怪しげな感じに満ちているのだろうが、今はその影も形もない。
何故なら、圭介通るとこ全て破壊されているからだ。
「ボ、ボス!もう駄目だ!早く―うわあッ!!」
報告をしていた男が吹き飛ぶ。
そして、ゆっくりと圭介が姿を現した。
「リリィを放せ」
低く、それでいて抑揚のない声。殺気を隠そうともしない。
「剣が先だ」
男も低く言う。
「リリィが先だ」
「剣だ」
男がついに銃をリリィの胸に突き付ける。
圭介は仕方なく剣を放り投げた。
「ふっ、ふははははッ!ついにやったぞ!!これで全てが思いのままだ!―今までご苦労だったな。二人とも。では、ここで死んでもらおう」
男は自然な動作で銃でリリィの胸を撃ちぬいた。
一瞬、二人とも何がおきたかわからなかった。
だが、ゆっくりと倒れていくリリィを見て圭介は絶叫した。
急いで駆け寄ろうとする。しかし、近くまで来たところで男に剣を突き付けられた。
「貴様………よくもリリィを殺してくれたな………!!!!」
圭介の周りをどす黒いオーラが吹き荒れる。
その感情は……憎悪……………………。
「殺してやるよ……貴様を、跡形もなく殺してやるよ……絶対に貴様は殺す……」
今、この時を圭介を知る者が見たら恐怖に慄くだろう。それぐらい、恐ろしいのだ。
グアアアアッ!!
『始まりと終わりを司る剣』が不意に男の手を離れ、圭介の手にするりとおさまる。
その剣からはどす黒いオーラが吹き荒れていた。
「殺すッ!殺す殺す殺す殺すッ!」
圭介は剣を振りかぶった。
男は咄嗟に防御しようと剣を構えた。
―不意に圭介の動きが止まった。
驚愕の表情で後ろを見ている。
そこには、よわよわしい手付きで圭介の服を掴むリリィの姿があった。
「リ、リリィ!生きてたのか!!」
一瞬喜びに顔を輝かせるがすぐにその表情は曇る。
どう見ても助からないことがわかったからだ。
胸からは血が大量に噴出し、普通ならもう死んでいるはずなのだ。
最後の力を振り絞っているのだろう。
リリィが静かに口を開いた。
「……だめ……だよ……圭介……怒りに……流されないで……憎悪にのまれてる圭介なんて……圭介じゃないよ……。そんなの……私の好きな圭介じゃ……ない……。お願い……優しい圭介のままで……いて……」
言い切ると、ついに力を使い果たしたのかリリィはゆっくりと崩れ落ちていった。
パタリと倒れ、もはやピクリとも動かないリリィを暫し見てから圭介はゆっくりと振り向いた。
その瞳はもはや憎悪ではなく、静かな強さを秘めた瞳だった。
「ありがとう。リリィ……。―『生と死を司る剣』そして『始まりと終わりを司る剣』よ。我が命に従え」
静かに言うと男の手を離れ二つの剣が圭介の手におさまる。
圭介は静かに続けた。
「二つの剣よ。今一度真の姿を現せ。我の力、全て、託す」
言い終えると二つの剣は眩い光を放った。
そして、その光が消えた時、そこには一つの剣があった。
「な、何だそれは?」
今まで呆然としていた男がようやく口を開く。
圭介は律儀に答えてやった。
「これが、二つの剣の真の姿。
『悠久の時を司る剣』さ。―さあ、行くぜッ!!」
圭介は地を蹴った。
その剣からは先ほどまでのどす黒いオーラはなく、逆に眩いまでもの光を放っていた。
それはすなわち圭介の心は既に憎悪を振り払ったことを意味していた。
「ちいっ!」
男は舌打ちし飛び退る。
だが、圭介はそれを見越していた。
ぴったりと男についていた。
男が焦りの表情をみせる。
だが、圭介はそんなことはおかまいなしに斬りつけた。
「や、やめろ!人を殺していいと思ってるのか!?」
自分の事は棚に上げて言う男。
「その言葉、そっくりそのままお前に返す!―それに、僕は好きな人を殺されて許せるほど、人格者じゃないんだよッ!!」
バッと飛び、上段から斜めに斬りつける。
そのまま続いて横斬り縦斬り。
止めとばかりに大きく振りかぶって真っ二つに斬りかかった。
男は、ゆっくりと二つにわかれ倒れていった。
凄まじいまでもの鮮血が飛び散る。
だが、哀れみ、同情といった感情はない。
この男はリリィを殺したのだ。そんな感情があるわけがない。
―リリィのことを思い出すと、急に憂鬱になった。リリィを守れなかった自分が悔やまれてくる。
暫く、そうやって自分を責め続けていた。すると、突然、『悠久の時を司る剣』が今までにないほど眩い光を放った。
「な、何だ!?」
慌てた声を上げる圭介。だが、剣はさらに光を増す。
突如唐突に圭介はこの剣の能力を知った。
「そうか。そういうことなのか。……力を貸してくれるのか?……ありがとう」
圭介は静かに言うと『悠久の時を司る剣』を地面に突き刺した。
すると、恐ろしいまでもに巨大な魔方陣が剣を中心に出現する。
その魔方陣の中心へとリリィが静かに浮かんでいった…………。

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