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Original Novel Musel=Grassfield Presents



Angel Princess


プロローグ



 2014年。
 当初の計画より、少しも遅れることなく、NASAによる火星への有人探索が開始された。

 火星での500日にも及ぶ滞在を経て、二年後の2016年、火星の有人探索隊は、地球へと戻ってきた。
 誰もが熱狂的な歓迎で、彼らがスペースシャトルから降りてくるのを待った。

 だが、彼らがスペースシャトルから降りてくることはなかった。
 彼らは機内で死亡していたのだ。
 直前まで、NASAと交信をしておきながら、だ。

 この探索に、巨費を投じていたアメリカは、血眼になって犯人を探そうとしたが、遂にその犯人は見付からなかった。
 そもそもの有人探索隊隊員の死因すら特定できなかったのだ。
 この事件は、チャレンジャー号に続く、宇宙開発史上最悪の事件になってしまった。

 誰もが、この事件を忘れ、新たな火星への有人探索を模索しようとしていた矢先、今度は信じられない事態が起こった。
 スペースシャトルの着陸から三十一日後、北アメリカ大陸全土が、一瞬のうちに消滅したのだ。
 世界でも有数の軍事力を誇るアメリカやカナダが、一瞬にして滅んでしまう戦力。
 それが誰とも解らない恐怖に、全人類が怯えることとなった。

 その北アメリカ大陸消滅から一ヶ月後、国際連合の事務総長から、ある驚くべき発言が全世界に流れた。
 北アメリカ大陸消滅の首謀者が解ったという発言だった。
 しかも、それを国際連合が掴んで置きながら、放置してきたと言うことであった。

 火星から帰ってきたスペースシャトルを捜索した際、有人探索隊隊長の死体の右手には、一枚のDVDが握られていた。
 そのDVDを解析した結果、その内容は、

【我々の領土である火星を侵略した地球に対し、我々は強い不快感を表明する。
 無人探索機までは我々も我慢できたが、火星侵略への足がかりとなる有人探索は、我慢の範疇を越える。
 今後、三十日までに、謝罪と、侵略の撤回の意思を表明しない場合には、有人探索の要であった、アメリカ合衆国を攻撃させて貰う。
 それからさらに二ヶ月後までに、謝罪と、侵略の撤回の意思を表明しない場合には、地球全てを攻撃させて貰う。
 宇宙共和国連合】

 という、常人であるならば、一笑に付してしまう物であった。
 これを入手した国際連合のスタッフも、有人探索隊隊員の誰かの冗句として処理していた。
 だが、結果として、書かれていることと同じ内容が起きてしまったと言うことなのだ。

 これを重く見た、日本の民主党中心の連立政府は、安全保証理事会の開催を強く各国に呼びかけた。
 その当時、既に国際連合の常任理事国入りしていた日本は、戦争反対の憲法の立場から、早期の謝罪を提案し、
この提案は、アメリカを抜いて世界一の経済大国になった日本の強権発動で、あっさり通ってしまうことになったのだ。

 国際連合が、各地の天文観測所から、謝罪と侵略の撤回の意味を含んだ電波を、宇宙に向けて流してから数日後、
一隻の大きな宇宙船が、日本上空に現れた。
 そこから地球に降り立った、宇宙共和国連邦の大統領と、国際連合の事務総長は、長きに渡り、
地球の主権確認や、火星への侵略の意志の有無確認や、宇宙共和国連合への参加への確認などが話し合われ、
2017年の4月14日に、地球は宇宙共和国連合へと加盟することになったのだ。

 これを機に、地球は宇宙共和国連合の一員になり、宇宙進出時代へと本格的に移行していくことになった。
 地球は、宇宙の数段進んだ技術を手に入れ、よりよい暮らしを手に入れることに成功した。
 だが、その代わりに、多くの地球外人が地球へと入ってくることになった。
 それが、地球における新たな問題の火種となることも、少なくはなかった。

 地球の国際連合が、翌年の2018年に、宇宙共和国連合の強い勧告を受け、存在する全ての国を併合し、
地球共和国連邦として再出発する事になった時に、当時の地球大統領、ユリーシカ・エクセリオの呼びかけにより、
地球における地球外人犯罪の増加を食い止めようと、特別チームが結成されることになった。

 宇宙人犯罪特別捜査チーム、通称、設立者の名前を取って、「ユリーシカ」と言われる組織は、こうして誕生したのである。
 ユリーシカは、地球共和国連邦の治安維持に、最大限の恩恵をもたらす、重大な組織になっていった。

 100年経ち、全宇宙に地球の存在が知れ渡り、犯罪者達にとって美味しい市場であると認識されるまでは。



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