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機動戦艦ナデシコ original story



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第2話 過去への干渉、新しい未来

by FireWind



−− これからのこと −−


俺は、ラピスにネルガルと宇宙軍のデータベースにハッキングして情報を引き出して置いてくれと頼み、ひとまず自室に戻った。

流石にこの様な事態は想定していなかった。
俺だけならともかく、ラピスがいるのだから、迂闊なことは出来ない。
ここは情報を集めて、よく考えることだ。


ます・・・なぜ過去に跳んでしまったのか、だ。

真っ先に上げられる答えは・・・・ルリちゃんの遺跡への干渉だろう。
というよりそれしか思い浮かばない。

ボソンジャンプは時間軸を超えて跳躍できることは既に分かっていたことだ。
俺もあの時は二週間も過去に逆行したからな。

しかし、今回は別に過去を意識した覚えはない。
ジャンプ自体は幾度も行い慣れている。
いつもと違うのは遺跡への干渉のみだ。

結論。過去へ跳んだのはルリちゃんのせい。


次に、戻る方法。

これは正直言って難しいだろう。
イメージがもっとも重要なジャンプ。
今回のことは、元々俺が居なければ起きなかった悲劇だ。
今の俺に元の時代をイメージすることなど出来ないだろう。
下手をすれば不安定なイメージングでまた事故が起きてしまう。

結論。戻る方法は、今のところない。戻るつもりもない。


ラピスのこと。

俺は、ラピスを復讐の道具として良いように使ってきた。
心が繋がっているだけに、ラピスの俺への感情は我が事のように伝わってくる。
俺の側にいたい、離れたくない、と。
親に捨てられることを恐れる幼子のようなか細い、しかし強い思い・・・・

エリナと暮らしてくれれば、普通の幸せを得られただろうに・・・・・
心が繋がった、初めて自分に近しい存在だから、俺のそばを離れないのだろう。
俺は、ラピスを見捨てることなど出来ない。
今度は俺がラピスの願いを叶えてやるべきだろう。

あのころの俺はそんなこと、考えすらしなかったが・・・・・
復讐を終えてしまった俺は心が弱くなったのだろうか・・・・・・

そこまで考えた俺は自嘲の笑みを口元に浮かべる。

何が弱くなっただ・・・・元々強くなど無い・・・・・北辰の言った通りだ、俺は心の惰弱を鎧で隠していただけじゃないか。


ひとしきり自分を嘲った後、再び思索を始める。


火星の後継者、草壁、北辰、山崎・・・・奴らが、居たから悲劇は起こった。
奴らのことを考えるだけで、俺は怒りに我を忘れそうになる。

だが、もし未来を変えられるのならば・・・あいつらを殺せば、あのような事にはならないはず。


それだけではない。
もしここが俺の知っている歴史をなぞってゆくならば、俺は最善の選択をすることが出来るだろう。
そう、俺と結婚しないことにより、ユリカには悲劇が起こらないだろう。
白鳥九十九も、月臣に殺されることなく、ミナトと幸せになれる。
ガイを、ムネタケに殺させるような事にはしない。


だが、俺は本来の歴史の流れに干渉して良いのだろうか。
ドクターが居たら喜び勇んで説明をしてくれるだろうが・・・・・


それに、ユーチャリスの物資も無限ではない。
補給したばかりなのが幸いだが、二人という少人数とはいえ、半年は持たないだろう。

アカツキにつなぎを取るか・・・・・
ボソンジャンプの研究に協力すれば、それくらい奴にとって安いものだろう。
それが駄目なら物資を強奪するしかない。


今考えられるのはこんな所か。
あとはラピスが呼ぶまで待つか・・・・・




−− 一方ラピスは −−

一方ラピスは、アキトに言われたことを済ませるため、シートに座って情報収集をしていた。

その情報は、ラピスにとっては意味のないものでしかなかったが、唯一、テンカワアキトが死亡していると言う情報を見たとき、感情にゆらぎがあった。


ネルガル、宇宙軍、その他・・・・・

指示されたところだけでなくあらゆる所にアクセスし、情報を集める。


『ラピス、もう良いんじゃないかな』

「うん、そうだね」


情報の収集は終わった。
次は事柄ごとに整理し、まとめる。

まとめながら考え事をするラピス。

(ミスマルユリカ。ナデシコ艦長。未来でアキトの配偶者。大事な人。もう会わない人)
(ホシノルリ。ナデシコオペレーター。アキトの娘になった人。私と同じ人。アキトがさよならした人)
(ナデシコ。初期型。アキトが楽しいと思っている過去)







『ラピス。データの整理が終わったよ』
「ありがとう」

考え事の中身はオモイカネに伝わっていた。
IFS操作中なのだから当然だが。

『ラピス。考え事してるの?』
「うん・・・・」

ラピスは唯一の対等な友人であるオモイカネコピー「ダッシュ」に相談する。

「オモイカネが持っていたナデシコAの記録のアキトは、とても楽しそう。今のアキトと違う。
でも、此処でのアキトはもう死んでいる。アキトは此処を去る必要がない。アキトは、ナデシコAに行ってしまうの?」

『ラピスの質問は、アキトがラピスを置いて何処かに行ってしまうのか、という質問と解釈。
その種の質問は、ミスマルユリカ救出後、37回です。
解答。ラピスはアキトと繋がっており、アキトは肉体の維持にラピスを必要としている。
また、ルリルリの例を考慮し、ラピスを置いてアキトが居なくなることは考えられないと推測』

「うん・・・・わかった。ありがとう。でも」

『なに?』

「ネルガルでまだ訓練しているとき、アキトは私と入浴してくれた。アキトが居ると安心する。
でもユーチャリスに乗って討伐をするようになってからは一緒に入浴してくれなくなった。
この件についての解答を」

AIであるダッシュが一瞬フリーズするほど、突飛な質問であった。
照明も一瞬暗くなる。

このとき、別室のアキトが「ん? 停電か」という事を口にしたかどうかは記録に残っていない。

『解答。アキトがラピスと入浴していたのは、ラピスの心理状態が不安定で、さらわれた際の心的外傷による、水に対する恐怖の対策であると思われる。
ユーチャリス乗艦後のラピスの心理状態は安定しており、心的外傷もある程度緩和されたものと判断される。
また、ある年齢に達した男性と女性が入浴することは、道徳上好ましくない為、アキトはラピスとの入浴を行わないものと考えられる』

律儀に解答を返すダッシュ。

「ありがとう」

とりあえずラピスは礼を言った。

(まだ水が怖いとアキトに言えば、一緒に入ってくれる。でも、アキトと私は一つ。心も繋がっている。本当のことはアキトに分かってしまう)

ラピスは「再びアキトと入浴する作戦」を考えている。









『ラピス、アキトを呼ばなくて良いの?』

ダッシュが、考え事をしてアキトへの連絡を忘れているラピスへ声をかける。
本当に、出来たAIである。

「(忘れてた)うん、今呼ぶ」

ラピスはアキトに心で話しかける。

”アキト、データの収集・整理が終わったよ”
”分かった。今そっちに行く”

アキトの返事はすぐ、そして短いものだった。



−−− 此処のデータを見たアキトは・・・ −−−


此処のデータを見たアキトは黙っている。

(まさか俺が死んでいるとは・・・・)
(と言うことは、時間的逆説は考慮に入れなくても良いか)

(どうやら、俺が死んでいること以外、俺の記憶との違いは無いに等しいようだ)
(ならば、先を知っている俺は、効率的に事を運ぶように干渉できる)
(やって・・・みるか・・・・)


「ラピス。ボソンジャンプで元の所に戻ることは不可能に等しい」
「うん」
「だから、此処で暮らして行く方策を探る。手始めにナデシコを救い、それからアカツキに接触する」
「うん」
「ユーチャリスが身を隠せるところは、何処かに無いか」
「ダッシュ、ある?」
『ポイントxxyの宙域が、最適だと思う』
「有り難う、オモイカネ。ラピス、何か言いたいことはあるか」
「アキトのしたいようにすれば良いと思う。私はアキトと一緒ならどこでも良い」
「わかった」

アキトは返事をし、「もうそろそろ、休むか」とラピスを促す。

ラピスは、うん、と短く返事をし、オモイカネに後を任せてアキトを追った。






〜〜 続く 〜〜




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