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機動戦艦ナデシコ original story



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第5話 会談

by FireWind



−− ネルガル本社 −−

軟派な外見を持つ男が椅子に座って仕事している・・・・わけではないようだ。

椅子に寄っかかりながら資料を眺めている。

「この謎の機動兵器君は、何が目的なんだろうね・・・・・・」

男の名はアカツキ・ナガレ。

ネルガル会長である。


「失礼いたします」

クールな感じのキャリアウーマンが入ってきた。

この女性は、エリナ・キンジョウ・ウォン。
会長秘書である。


「や、エリナ君。他になんかわかったかい」

「いえ・・・・あのブラックサレナ2(以下BS2)と言う機体は、ネルガルを含む全ての企業で生産された形跡はありません。というよりも、あれほどの機体を造る技術はどこにもありませんでした」

「う〜ん。やっぱりそうか。まぁボソンジャンプを自在に出来るみたいだけど、そんな話は聞いたこともないからね」

「はい。ただ、我が社の開発部に資料を見せたところ、これは全部が機動兵器というわけではないようです」

「どういうことだい?」

「・・・・この黒い装甲は着脱可能であり、中に別のものが入っている可能性がある。もし入っているとするならば、その大きさは丁度エステバリスくらいの大きさとなる、とのことです」

「むぅ・・・それだけじゃあ何の手がかりにもならないなぁ。だってウチでこんなの造った覚えないからね。エリナ君あたりが横領してこっそり造ったんじゃあないの?(笑)」

「そんなことは致しません!!」

「はっはっは。冗談だよ・・・・・でも、このボソンジャンプは魅力的だよ。なにせまだ理論上のものなんだから」

「全くです。何とかこの機体の持ち主と連絡が取れればよいのですが・・・・・」

「なに、そのうち来るだろうさ」

「なぜですか?」

「まさか、『通りすがりのお人好し』ってわけじゃないだろうし、わざわざナデシコを助けたんだ。魂胆は分からないけど、何か目的があるのは確かだし」

「はぁ・・・・」



と、いきなり電話が鳴り響く。

「ほら」
「ほらって・・・・これ、プライベートコールじゃないですか!! これの持ち主って、会長知って居るんですか!?」
「いんや。でも、わくわくするじゃないか」
「・・・はいはい・・・・・」

アカツキが電話を取る。

「もしもし、愛の伝導師、アカツキナガレだ」
『はぁ・・・・・・』

電話相手は失笑しているようだ。
こちらではエリナがあきれた視線を投げかけている。

「もしもし? 君はだれだい? もしかして、BS2のパイロット君かな?」
『相変わらず良い勘しているな。アカツキ』
「正解かい? でも僕は君を知らないんだけどなぁ」
『今から其処へゆく』ブツッ

いきなり切った。

「切れちゃったよ」
「で、なんと?」
「今からここに来るんだって」
「ここ?」
「うん」

広い会長室の中のある場所に光が現れる。

「アレは・・・・ボース粒子!?」
「お客さんが来たようだね」

やがて、何者かがワープアウトしてきた。

黒いコートとバイザーを身につけた男性。
テンカワアキトである。

「はじめまして、と言うべきかな・・・・・」
「そうだねぇ。僕は君に会ったことないもの」
「俺の名はテンカワアキトだ。聞き覚えがあるだろう」
「テンカワですって!?」

エリナが驚く。

「ああ。俺の両親はネルガルに殺されたんだからな。まぁそんな些細なことはどうでもいい」

流石に未来(過去?)でネルガルにさんざん付き合ってきただけあってその辺りはクールだ。

「そうかい。そのテンカワアキト君はいったい何の用だい?」
「商談だ」

「ふぅむ・・・・・興味あるねぇ。ああ、自己紹介が遅れたけど、僕はアカツキナガレ、ネルガル会長だ。彼女は・・・・」
「秘書のエリナ・キンジョウ・ウォンよ。よろしく」
「改めて自己紹介しよう。俺はテンカワアキト。ナデシコC先行開発艦ユーチャリス艦長兼ブラックサレナ2パイロットだ」

「ナデシコC?」
「そうだ。その話はあとで話す。早速商談と行こうか」
「オーケー。エリナ君、お茶入れてきて」
「はい」

突っ込んで聞きたかったが、あとで話してくれるならまぁいいかと思ってアキトの話を聞くことにしたアカツキ。

「現在の俺の艦ユーチャリスには4〜5ヶ月分の物資しかない。かといって気軽に補給するドッグは持っていない。
壊れたときも、ある程度の修理なら出来るが、整備となると無理だ。
そこでだ。ネルガルの方で補給や整備を頼みたい。
料金はネルガルでのボソンジャンプ研究への協力とユーチャリスやBS2の稼働データだ。
どうだ?」

一息に言うアキト。

「・・・・補給や整備くらいでそれだけのものくれるんならこちらとしては大歓迎だよ。
僕としてはまったくもって構わないが・・・・・それだけかい?」

「そうだな・・・・あとは、ナデシコに俺ともう1人を乗せるということでどうだ」
「あれ? でも君は戦艦持っているんじゃないの?」
「同乗して一パイロットとしていた方が何かと都合がいいんでな。
 ナデシコクラスの所属不明艦がしょっちゅう現れては都合が悪い。
 時期が来れば艦を降りる」

「その間船はどうするの?」
「勝手にその辺りを散歩しているさ」

「そうかい・・・・・ま、オーケーだ」
「理由は聞かないのか」
「話してくれれば聞くけど?」

「そうか・・・・」

アキトは一旦口を閉ざす。
しばし瞑目し、話し出す。

「もう気がついているとは思うが、俺は未来から来た。
原因は、ボソンジャンプの事故だ。
戻る術は今のところないし、戻るつもりもない。
今の俺がすることはただ一つ。
未来の悲劇の芽を今のうちに潰すことだ」

いつの間にかエリナが戻ってきて、茶を置く。

「イネス博士あたりが居たら『過去への干渉は極力避けるべきよ』などと言うだろうが、そんなことは俺には関係ない。
俺は俺らしく、俺の願いを達成するために動くのみだ」

「・・・・・・・・・・」

「ナデシコに乗る理由は、未来を知る俺がいればスムーズに事が運ぶだろうと言うことと、情操教育だ」

「情操教育?」

「ああ。未来から来たのは俺ともう1人、ラピス・ラズリと言う名の少女だけだ。
ユーチャリスはワンマンオペレーションシップの実験艦としての役割があった。
ラピスはナデシコオペレータのホシノルリと同等の処理能力がある。
だが、人間としては幸福な人生を送ってきてはいない。
ラピスを普通の少女にするための情操教育として、ナデシコはうってつけだ」

「ラピス君とやらは、君の娘かい?」
「いや」

短く否定する。

「娘でもない女の子と二人きりかい。まずいんじゃないの」

アカツキが軽口を叩く。

「だからナデシコに乗るんだ」

「・・・・分かった。君たちにナデシコに乗って貰う。君はパイロットで良いとして、ラピス君はどうする?」
「オペレータの予備と、俺の看護役と言うことでどうだ。俺を保護者として登録すれば同室でも問題はあるまい」
「確かに。そのあたりはプロス君はうるさいからねぇ」
「あとは、どの時点で合流するか、だが・・・・・」
「サツキミドリ2号でパイロットを補充するから、そのときで良いんじゃないの?」
「それでも良いが、そのタイミングだとナデシコが沈むぞ」
「なんで・・って、未来知っているんだっけね」
「ああ。それと、サツキミドリ2のほうもさっさと引き上げないと、木連に襲撃されるぞ」
「ほう?」
「助かったのはパイロット3名とエステ3機だけ。他のエステは木連に乗っ取られて破壊するしかなくなる」
「・・・・・分かった。至急月の方へ引き上げさせよう。で、君は?」
「連合軍のミスマル提督がユリカの説得に来る。そのときナデシコに乗艦する」
「ミスマル提督が?」
「それはおかしいわ。軍との話し合いは済んでいるのよ」
「軍にはナデシコを火星にやるだけの余裕がないと言うことだ」
「よし。至急プロス君に連絡を取って、君たちを乗れるように手配しておくよ」
「今すぐ頼む。
 ユーチャリスは、補給の必要が出来たら月のドッグへ入港する。
 俺とラピスはあと半日後にBS2でナデシコに乗り込む」

「分かった」
「俺へのシークレットラインはナデシコ搭乗後に追って連絡する。
 では、そろそろ失礼する」

アキトは出てきたところあたりに歩を進め、C.Cを取り出す。
ユーチャリスのブリッジを思い浮かべ、飛ぶ。

「・・・・・・ジャンプ」

アキトは光に包まれ、消えていった。

「エリナ君。プロス君への手配を頼む。僕はしばらく休憩させて貰うよ」
「分かりました・・・・・」

エリナが自分の仕事を果たすために部屋を出ていったあと、アカツキは1人思いに耽る。

(よっぽど未来ってのは酷かったんだな。でなければあんな悲しい目をしているはずがない・・・・・)





〜〜 続く 〜〜




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