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機動戦艦ナデシコ original story



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第7話 死者との再会?

by FireWind




−− 格納庫 −−

「勝手にさわらないでくれ」

格納庫でラピスと待っていたアキトは、いつの間にかわき出てきたウリバタケ以下の整備部隊に囲まれていた。

あの鬼神のごとき強さを見せつけたB・S2がどんなものか、みんなで見に来ているのだ。

「これは俺の私物だ。・・・こら、さわるな」

荷物にまで手が及ぶのを防ぐ。
B・S2はもう諦めている。
こんなごちそうを前にしてウリバタケさんがじっとなどしていないのは百も承知だから。


「アキト・・・・この人達、怖い」

この場合の怖いというのは、かつての北辰達へのものではなく、おぞましいというか、不気味というか、そう言う感じのことである。

「大丈夫だ。敵じゃないんだからな・・・・今のところ」

最後に保留をつけているのが今のアキトらしい。


「出来ればずっと味方であって欲しいですねぇ」

プロスが声を掛けてきた。
既に、ナデシコはマスターキーを持って戻ってきたユリカ達のおかげで機能を回復し、再発進に向けて準備中のところだ。

「会長からお話は伺っておりますよ。はじめまして。わたくしこういうものです」

と、光速の早さで名詞をビッと出す。
(まるでヤマザキみたいだ)

「エステバリスパイロット、テンカワアキトです。こっちは予備のオペレーターのラピス・ラズリ」
「・・・・・よろしく・・・・・・」

よろしくなさそうに、挨拶をするラピス。
アキトが言うから挨拶しているだけである。

「ほほぉ。これはまた、かわいらしいお嬢さんですな」

プロスがメガネをクイッとあげ、言う。


「えー、あなたにはパイロット兼、この艦の副提督として乗艦していただきます」
「副提督? そのような話はなかったはずだが・・・・・・」
「いえいえ、先ほどナデシコを救っていただいたあなたならおわかりでしょうが、副提督が造反しましてね、丁度空いていたのです。会長からのご連絡では、戦艦の指揮経験もおありだそうですし、ま、お嫌でしたら名前だけでも構いませんので」

「分かった。引き受けよう」
「それはたいへん結構なことです。つきましては・・・・」

宇宙そろばんを弾く。
その姿はまさしく商人。

「こんなところでどうでしょうか」

示された数字は、たいへん大きかった。
パイロットの危険手当、副提督としての給料、その他、いろいろな事柄が考慮されているからである。
ラピスの保護者としての、扶養手当も入っている。

「ああ、構わない」

「えー、それではラピスさんのお給料ですが・・・・・」

再びパチパチという音。
ラピスの場合、被保護者であり、正オペレーターのルリが駄目な場合のみの予備であるため、正規のオペレーターよりは給料が少なかった。
もっとも金額に頓着するラピスではないが・・・・・・

「それで、いい」

一言で済んだ。
だいたい宇宙で金を使うところなど、ナデシコ内の売店か、各コロニーや月くらいしかない。

「お給料の話も済んだことですし、艦内の案内をかねて、お二人のお部屋へ行きましょう」

プロスがそう言って先頭に立って行こうとする。

「ミスター、俺達は食堂以外あらかた回ったのだが・・・・」

艦内中駆けめぐって敵を排除したのだから当然だ。

「いえいえ、何事も形式というものがありますから。それにまずブリッジに向かい、艦長にこの件をお伝えしなければ・・・・」

「そうか・・・ミスターの言うとおりにしよう」

そう言って、ラピスに手を差し出す。
手を繋ごうというのだ。
アキトの場合、単に年長者の配慮というものであるが・・・。

ラピスは、アキトと手を繋ぐと『・・・アキトの手・・・・暖かい・・・・大きい・・・・』という考えがループ状に固定してしまった。


−− ブリッジ −−

シュイーン(←ドアが開いた音)


「えー、艦長は・・・・と」

プロスがユリカを探す。
しかし、艦長の席どころかブリッジ内にユリカは居なかった。

「ふむ。副長、艦長はどちらですかな」

ジュンに尋ねる。

「ユリカですか? なんかお花畑とか行ってましたけど」

プロス、手をぽんと打つ。

「ははぁ。そうですか。では代わりに副長にご紹介いたしましょう」

そう言ってアキト達を促した。

「ムネタケ元副提督とその部下の方々を倒して下さったテンカワアキトさんです。この子はラピス・ラズリさん。
実はもうじき来るといっていたパイロットと予備のオペレーターの方々はこの方達なんですよ。
いやー、偶然とは言え、大変助かりましたよ」

その説明に、にわかにブリッジが騒ぎ出す。

「はぁ・・・・・・・」
「すごーい」
「この子、ルリルリに似てるわね」
「結構良いセンいってるじゃない」
「(ナデシコで唯一の普通の人になるのかな)」

誰が誰かいうまでもないと思う。

「ミスター」
「はい、何ですか?」
「荷物を片づけたいんで、部屋に案内してくれませんか」
「いえ、艦長にご報告しようと思って待って居るのですが・・・・・」

シュイーン(←ドアが開いた音)

「あれ、みんなどうしたの?」

ユリカが戻ってくる。

「艦長、新しいパイロットと予備のオペレーターが到着しましたので、その報告をしていまして・・・」
「へぇー、この人達がそうなの?」
「はい。彼はパイロットのテンカワアキトさん、彼女はオペレーターのラピスラズリさんです。お二人はご家族だそうです。そうそう、テンカワさんには副提督も兼任していただきます」
「よろしく」
よろしく

「テンカワ・アキト・・・・・どっかで聞いたことがあるような・・・・・」

ユリカは何かが引っかかるのか、考えている。

「プロスさん、テンカワさんって軍の人なんですか」

メグミが聞く。
確かに軍人でなければ戦艦の運用などする事はあまりないだろう。

「いえ、軍の方ではありませんよ。テンカワさんは以前戦艦の艦長をなさったことがおありだそうですから、丁度空いた席に座ってもらおうと思いまして」

「へぇー、凄いんですね」
「でも、軍人でもないのに戦艦の艦長なんて出来るものなの?」

ミナトが当然の質問。

「さぁ・・・・ワタクシはデータベースの資料を見ただけですので・・・・」

アキト・・・・アキト・・・・って、ああ!!

「グワッ!!」

ユリカの至近距離にいた数名が、いきなりの大声にやられて倒れる。

「ど、どうしました?」
「ゆ・ゆりか・・・・・」

ジュンは耳をやられて悶絶。


アキトっ!アキト、アキト、アキトだーーーっ!

いきなりアキトに抱きつくユリカ。
微動だにしないアキト。
ラピスはユリカに視線のみを向けている。

『アキト、アキトの助けたユリカって、この人?』
『そうだ。だがこっちでは俺は死んでいるらしいから、多少は元のところのユリカと違うかと思ったんだが・・・・』

「艦長、お知り合いですか?」
「はい。アキトは私の王子様なんですっ! あの黒い機動兵器って、アキトのなんでしょう? ユリカがピンチの時に、助けてくれたんだから、私の王子様なんです!!」

艦内が「なんだ、そうだったのか」というムードに染まろうとしていたとき、アキトが口を開く。

「艦長」
「昔みたいに、ユリカって呼んでよー」
「貴女の言っているテンカワアキト氏と私は別人です。だいたい、艦長の言うテンカワ氏はお幾つですか?」
「んーと、確か18歳だったと思う。ユリカが小学生だったときにまだ幼稚園だったし」
「私は23歳です。それに貴女に会ったこともありません。ですから、人違いですよ」
「でも、アキトはアキトだもん」

アキトは、プロスの方を振り返り、言う。

「ミスター、艦長の言うテンカワ氏のことを何かお知りですか?」
「テンカワ? 確か、火星のネルガル研究所で研究なさっていたと記憶しておりますが。艦長の幼なじみと言うことでしたら、そのお子さんと言うところでしょうな」
「で、その人は今はどうしてるんですか?」
「木製蜥蜴が火星を襲ったときに、研究所の方は全員死亡したと聞いておりますよ」

アキトはユリカを引き剥がし、言う。

「艦長。私は火星にいたことはありません。ですから、艦長の人違いです。ミスター、そろそろ・・・」
「おお、そうですな。参りましょうか」

プロスが先頭となり、アキトとラピスがその後をついてゆく。

「アキト、違うの・・・・・?」

ユリカは落ち込んでいる。

「ユリカ・・・・・・・」

ジュンも落ち込んでいる。


「偶然って、こわいわねー」

どちらの意味で言ったのか不明なハルカの言。



−− 通路 −−

「いやはや、艦長には驚きましたなー」
「ええ、私もびっくりしました。まさか同姓同名の人が居るとは思いませんでしたから・・・・」
「で、本当に別人なのですか?」
「ミスターの方がご存じではないですか?」
「さて・・・・何のことですかな」

『アキト・・・・・・どうして嘘言ったの?』
『こっちの俺は間違いなく死亡しているんだ。死人が生き返ったらまずい』
『書き換えれば平気だと思う・・・・・・・』
『俺はここの人間じゃない。それに俺と居ればいずれ不幸になる。ここでするべき事が終わったらユーチャリスに戻るのだから、わざわざ告げることもない』

「ここです」

二人が連れられた部屋は、以前の二人部屋より幾分か大きかった。
二人が家族であることと、仕事などを考慮して、ということなのだろうか。
コンテナの中にまだにもつがあるので、空っぽだ。

「どうも」
「では、勤務シフトなど、細かいことはこちらからご連絡いたしますので、今日のところはごゆっくり・・・・」

そう言って、プロスは去っていった。

「ラピス、疲れたか」
「大丈夫」
「とりあえず必要なものだけ持ってくるか」
「うん」

二人は当面必要なものだけ持ってくることにした。
といっても、この二人は余計なものなど持ってきていないので、BS2の兵装を除けば大した量ではないが。



そんなこんなで数時間後、引っ越しが完了した。
荷物を全て自分でもって来たのは、私物に触るなというアキトの意向があったからである。
別に潔癖性ではなく、ナデシコのクルーに見られるとまずいものが結構あるのでそうしただけである。





〜〜 続く 〜〜


改訂について

ご助言を賜りましたので、アキトの台詞について少々変更しました。
また、アキトのウリバタケに対する呼称が統一されていなかったので「ウリバタケさん」に統一しました。
なんだかんだいっても年上ですから。




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