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機動戦艦ナデシコ original story



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第10話 後悔(?)日誌

by FireWind




−− バーチャルルーム −−

私はラピス・ラズリ。
私はアキトの目。アキトの耳。アキトの手。アキトの足。私はアキトと一つ。
でも他の人の前で言ってはいけないとアキトに怒られた。
どうしてなのかは分からないけど、アキトがそう言うからそうする。

航海日誌、艦長のミスマルユリカが書くべきモノ。
でもお葬式というモノで忙しいから、私とルリに仕事として書かせている。
アキトは「何事も経験だからな」と言っていた。
ルリは「はぁ・・・艦長のばか・・・・」と言っていた。


今、ナデシコは火星に向かっている。
アキトのジャンプが使えないから1ヶ月掛かる。
「今はみんなにばれるのはまずい」って言っていた。

時々木連の無人兵器が散発的に攻撃してくる。
プロスペクターは「ミサイルやパイロットの危険手当と、お金が掛かりますからね。お遊びの攻撃に付き合う必要はありません」と言っていた。
どうしてお遊びなのかは分からないけど、アキトが出ないのは良いことだと思う。


アキトがサツキミドリ2から避難させたのに、多くの人が死んでしまった。
他の人は気が付いていないと思う。
アキトは苦しんでいる。私は繋がっているから分かる。

社内規定で「お葬式」というものをしなくてはいけないらしい。
「死んでしまった人を、生きている人が送る儀式だ」とアキトは言っていた。
ナデシコに乗っている人の知り合いの分だけナデシコでお葬式をするらしい。
他の人の分は月面のネルガル基地でする。

「ユリカッ、まだまだたくさんあるんだ。はやくはやく」
「ひえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

考えていたら、お葬式が終わったみたい。
ミスマルユリカがアオイジュンに連れ出されている。
他の人は出てゆかない。

ここはバーチャルルーム。
地球のいろんなお葬式をやっている。

お葬式を立て続けに行っているから、誰も喋らない。
アキトは直接会話をしてきた。

<ラピス。葬式なんて初めてだろう。どうだ?>
<・・・・・よく分からない。足が痛い>

ずっと正座で座っていたから、足が痺れて痛い。
アキトに「足が痺れない正座の方法」を教えてもらったけど、あまり効果がない。

<ずっと座りっきりだからな。後1時間もすれば今日の分は終わるし、我慢しなさい>
<わかった。・・・・えい>

ふと、思いついたので、アキトの足に触ってみる。

「ぐぉ」

アキトが珍しく声を立てた。

<アキトも足が痺れているの?>
<そうだ。だから触らないでくれ>
<わかった>


ミスマルユリカとアオイジュンが着替えて戻ってきた。
お葬式がまた始まる。


−− ブリッジ −−

・・・・・・・・・・・・・

お葬式、今日の分が終わった。

今日の分が終わったとき、正座していた人はみんな立てなかった。
アキトや私もそうだった。
アキトがいち早く元に戻って、私を抱っこで運んでくれた。(ポッ

ルリがミスマルユリカに何か聞かれている。
そのあと、なんだかたくさんのウィンドウが開いた。

「葬式希望者か?」
「そうみたい。」


ミスマルユリカがぐったりしている。

「アキト、どうしてあそこでぐったりしているの?」
「責任持って葬式を行う立場だからな。これから行う葬式の数を考えてああなっているんだ」




−− ブリッジ(一週間後) −−

ホシノルリです。
今日の日誌は私の持ち回りですから、私が書いています。

ようやく全てのお葬式が終わりました。
延々と、実に一週間も。
決まりとはいえ、少々疲れました。


『煩悩退散・・・・・煩悩退散・・・・・』

全部お葬式が終わった後も、艦長はバーチャルルームにこもっています。
なんだか座禅の真似事をしているみたい。
たくさんのお葬式をやって、「艦長って何なのか」と思ったらしいです。

私はそんな艦長を観察しています。
特にすることもないですから。

「・・・・・・・・あいかわらずだな・・・・・・・・・・」

後ろからテンカワさんが私のウィンドウをのぞき込んで、何事か呟きましたが、生憎聞こえませんでした。

「テンカワさん、何ですか?」
「・・いや、ミスマル艦長はどうして座禅を組んでいるのか、と思ってね」
「お葬式をしていて、艦長という仕事について疑問を持ったらしいです。
 それで今は真剣に悟りを開くことになったみたいです」

「・・・・・・放っておこう」
「・・・・・・そうですね」

そのうち戻ってくるでしょう。


・・・・・と、振り向くとなんだかたくさんの人がいます。
よく見るとプロスペクターさんに詰め寄っているみたいです。
ウリバタケさん以下、クルーの大半が来ているみたいです。
何事なのでしょうか?

「艦長大変です。クーデターです」

メグミさんはバーチャルルームに連絡をしています。

「プロスさん、何事なんだ?」

テンカワさんが聞いています。

「いえ、大したことではありませんよ。契約書の内容に対する抗議です」
「それにしてはだいぶ大事みたいだが」

「おう、テンカワ! ちょっとこれ読んでみろよ」

と、テンカワさんに契約書の紙を渡すウリバタケさん。

「・・・細かいな」

「そこ、そこの一番下だ」

「ふむ・・・『社員間の交際は禁止しませんが風紀維持のためお互いの接触は手をつなぐ以外
は禁止です』」

「そうです。仮にも敵と戦う戦艦ですから、風紀をただすのは当然です」

「にしたってやりすぎだ! ここはナデシコ保育園かよ」

少女ですから詳しいことは分かりませんが・・・・・
なんだか、ばかばっかですね。

「くだらないな」

テンカワさんが呟いた。

「なんだと! テンカワ、もう一度言って見ろ」

リョーコさんがテンカワさんに突っかかっています。
向こうでは契約書対ブラスターの突きつけ合いが行われています。
艦長がいつの間にか戻ってきていて、ウリバタケさんに加勢していました。
・・・・・仮にも艦長だと思うのですが。

「こうして騒ぎ立てていることがくだらないと言ったんだ。
 守る気がないなら隠れてやればいいだろう。
 わざわざ決まりとして決めなくても、人前でそれ以上の行為をするのは厚顔無恥な奴だけだ」

ま、もっともですね。
向こうでプロスペクターさんがテンカワさんを渋い顔で見てますが。
仮にも上位の者が、「隠れてやれ」などというのは都合が悪いのでしょう。


艦内のやりとりに気を取られていたら、木製蜥蜴からの攻撃を受けてしまいました。
かなり揺れましたから、みなさん仲良く倒れています。

私はオペレートシートに座っているので別に影響はありません。
テンカワさんはぐらつきはしましたが倒れませんでした。
バランス感覚が優れているのでしょうか。

「艦長、迎撃が必要だ。俺は出撃準備を行う」
「わかりました。
 各エステバリス発進、グラビティーブラスト充填、艦内に戦闘態勢移行への放送、後のみなさんは持ち場について下さい。
 このままでは葬式される立場になっちゃいます」

最後の一言が余計ですが、的確な指示。
役職に置ける能力は確かに一流です。




さっさと出ていったテンカワさんは、1人で木製蜥蜴の大半を殲滅してしまいました。
テンカワさんの戦闘能力と、あのBS2という機体の性能、どちらなのでしょうか?
・・・・・・恐らく両方なのでしょう。

残った木製蜥蜴は他のパイロットのみなさんが倒しました。
リョーコさんは欲求不満みたいです。「ばとるまにあ」と言うやつでしょうか?
ヤマダジロウさんはテンカワさんに食ってかかっています。
見せ場がどうとか言っていましたから、テンカワさんの活躍が気に入らないのでしょう。


それにしても機動兵器を私有しているとは、テンカワさんは謎な人です。
被保護者のラピスは、私と同じ様な感じがします。
でも人間研究所で、彼女のような人の話は聞いたことがありません。



−− 展望室 −−


「アキト・・・・・」
「・・・・・・・・大丈夫だ」



〜〜 続く 〜〜




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