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機動戦艦ナデシコ original story



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第11話 火星、再び

by FireWind




−− 火星 −−


長くも短くもあった1ヶ月。
ようやく、火星に到着したナデシコご一行である。


「ふむ、思ったより赤くないな」

ゴートの台詞。
普段むっつりして怖い印象のゴートが、この台詞を吐いたのでブリッジのクルーは皆意外そうな表情でゴートを見る。
気まずい沈黙も降りる。

(ゴート、その洒落は笑えん)

アキトは前回ブリッジにいなかったので、このゴートの台詞は初めて聞く。
前回何処にいたかって?
もちろんコック(見習い)だったのだから、食堂の厨房である。

「な、なんだ?」

ゴート、うろたえる。

「ちょっと、もしかしてマジ?」

ミナトの問いかけ。

「?? なんのことだ?」

ブリッジのクルーは皆『この人マジだよ』と思った。

「・・・あのねぇ、昔の火星は赤かったけど、今の火星はテラフォーミングが済んでるからもう赤くないんだけど。おじさんはこれだから困るなぁ」

「なに! そうなのか」

ゴートは自分が恥ずかしいことを言ってしまったことを理解し、赤面した。
まるでゴートが考えていた昔の火星の色のように。

『アキト、ゴートって実は面白い人なの?』
『・・・・・分からん』

プロスペクターも謎だが、ゴートもやはり謎であると認識するアキトであった。




そして火星大気圏に突入・・・・・とは行かない。
火星駐留艦隊が鎮座ましましていた。

といっても、今のナデシコにとって、数が多いだけで大した敵とはなりえなかった。

事実、敵艦隊のグラビティーブラストはナデシコのグラビティーブラストによって拡散してしまうし、(数は少ないが)パイロットの揃っているナデシコに対して無人兵器を大量に出しても、次々に落とされる。

ガイが熱血しながら機動兵器を破壊する。
リョーコも負けじと破壊しまくる。
イズミは寒い駄洒落を発しながら破壊する。
ヒカルは自分が書いている同人誌のネタを考えながらも破壊する。

アキトはと言うと、戦艦クラスに狙いを定めて破壊していた。
流石に普通のエステバリスでは戦艦を相手にするのはちょっときついので、アキトががんがん破壊して回る。
グラビティブラストを死角から撃たれれば、エステバリスではひとたまりもない。
もっとも一流の腕を持つナデシコのパイロット達はそのような死角を見せるような真似はしないが。


そうして、一方的とも言える展開のまま戦闘を終えたナデシコは、火星の大気圏へと突入した。



−− 火星上空 −−

「え〜、ネルガルの施設に進路を取って下さい。
 ルリさん、データをお願いします」

「はい」

ルリがオモイカネにアクセスして、火星ネルガル施設への針路を出す。

「ミスター」
「はい、なんですか」
「ユートピアコロニーを調査する必要がある」

アキトはそこにイネス達がいることを知っているので、そう言う。

「ほう・・・どうしてですか?」

プロスがメガネをクイッと上げて問う。

「誰かさんが落としたチューリップと、木星蜥蜴のおかげで、コロニーの人間は全滅した。
 まさかそんなところに人はいないと誰もが考える。
 ・・・・・学者のような頭の良い者なら、裏をかいてそう言ったところに避難している。
 そう考えられないかな」

「誰かさん」の部分に反応した殆ど出番のない提督が一名いたが、事実を知っているアキト以外気が付かなかった。

「ふむ・・・しかし、ここは敵地です。
 調査をして敵に各個撃破される危険が・・・・・・」

「大丈夫だ。俺が一人で出る」

やりとりを静観していたブリッジのクルーだが、アキトのこの一言にもっとも反応したのはガイであった。

「テンカワ!! おまえ、またしても良いところ持ってゆこうとしてるんじゃないだろうな。
 敵地に残された一般市民を救出する正義の味方!!
 お前にはやらせらねえ。代わりに俺が出る!!」

「それでも構わないが、単機でもっとも戦闘力の高い機体はBS2だ。
 敵、それも艦隊との遭遇を考えれば、俺が行くのが妥当だと思うが」

「ならあのロボットで俺が出る!!
 あれを俺に貸せ!!」

めちゃくちゃなことを言うガイ。

「・・・・・・ふぅ、わかりました。
 テンカワさん、調査をお願いいたします。
 我々はネルガル施設へ向かいますので・・・・・・」

「ああ。 では行って来る。」

さっさとアキトは出ていった。


「おい! どうしてあんな奴に任せたりするんだ!!
 ここに俺というヒーローがいるじゃないか!!!」

アキトが素早く出ていったので、ガイはプロスに食ってかかる。

「テンカワさんの主張は理にかなっております。
 ネルガルとしましては損害を最小限に押さえるために、最善の方策を選ぶ必要がありまして。
 それに、以前にも申し上げましたが、あの機体はテンカワさんの個人所有ですから、他人に貸す必要もありませんし、無理強いすることは契約に違反します。
 それに、失礼ながらヤマダジロウさん、あなたにあの機体を操縦できるとは思えませんが・・・・」

「俺はダイゴウジ・ガイだって何回言えば分かるんだ!!
 それにヒーローたる俺に出来ないことはないぜ!!」

自信満々に言うガイを、白い目で見る一同。
流石に無理があるというものだ。
それに、いい加減この暑苦しい言動をやめてもらいたい。

(テンカワさんは、どうやら本当の目的を知っていらっしゃるようですね。
 流石会長の推挙なだけありますねぇ。
 もっとも、みなさんには申し上げられませんが)



−− 通路 −−


<ラピス・・・・・起きてるか>
<・・・・・・・・・・・・>

呼びかけるが返事はない。
遅番だったので夢の中のラピス。

(無理に起こすこともないか)

そう考えたアキトは、そのまま格納庫へと向かった。




−− ユートピアコロニー跡 −−

「過ぎ去りし過去、か。それとも・・・・」

破壊し尽くされているユートピアコロニー。
アキトはBS2を降りて、単独で目的の地点へと向かっている。


「たしか、ここだったか」

足で音を確かめると、中が空洞。
力を込めて踏み抜くと、穴が空いて下に落下する。

覚悟して落ちたので、きちんと着地できた。

拍手。

「お見事ね」

白衣の女性が拍手をしながらそう言う。

「鍛えているからな」

アキトはこともなげに言う。
なお、アキトの格好はと言うと、バイザーに黒いマント、マントの下には防具を付けている。
白衣の女性以外は得体の知れない来訪者を警戒している。


「で、何処の生き残りかしら?
 ずいぶんと怪しい格好をしているようだけど」

「俺の名前はテンカワアキト。
 ネルガル社の戦艦、ナデシコのエステバリスパイロットだ」

アキトがそう言うと、まわりの人間から殺気に似た気配が立ち上る。

「あなた達が地球の人間を憎んでいることは知っている。
 俺も嫌がっている者を無理に連れ出すつもりはない。
 俺の目的、いや、ナデシコの目的は、イネス・フレサンジュを確保することだ。
 着いてきていただけるかな、ドクター」

そう言って白衣の女性、イネスの方を向く。

「良く私のことが分かったわね。
 あなたとは初対面のはずだけど、会ったことがあるかしら?」

「いや、初対面だ。
 で、どうする?
 残念ながらあなたの嫌いなフクベも乗っているが・・・・・・・」

フクベという名は、彼らの感情を逆撫でするに充分だったようだ。
明らかな殺気が立ち上り、アキトに向けられる。


と、イネスに通信が入る。
しばらく話していたが、スイッチを切ると話し始める。

「正体不明の戦艦がこちらにやってくるそうよ。ナデシコかしら」
「オリンポス山近くのネルガル施設を調査すると言っていたが・・・・・調査が終わったのかも知れないな。
 さて、丁度ナデシコも来たことだ。
 ドクター、ナデシコに来ていただけませんか」

「しょうがないわね。
 どうせプロスさんも乗っているのでしょう」

「ええ、ではいきましょう」




そう言って地上へと上がる二人。

アキトの黒い機体を見てイネスが聞く。

「あら・・・・エステバリスじゃないのね」

「これは俺の個人所有機体です。
 詳しいことは後で話しましょう」

そう言ってイネスを促す。
もうそろそろ木連が襲ってくることを知っているアキトは、さっさとナデシコに戻りたかった。




<ナデシコブリッジ>

ブリッジでは、イネスとナデシコクルーが顔をあわせていた。
アキトはブリッジに案内した後さっさと出ていった。

「イネス・フレサンジュ博士、お久しぶりです」
「お久しぶりね。
 早速言わせていただくけど、私たちは火星を離れるつもりはないわ」

「どうしてだ!? 俺達正義の味方が助けに来たんだぞ!!
 俺達が信用できないって言うのか」

ガイの科白。

「あら、よく分かっているじゃないの。
 私たちは地球に見捨てられたのよ。だからもう信用しないの。
 それに、たかだかナデシコ一隻で火星から脱出できるとでも思っているの?」

「どうしてですか? 今までの戦いは全て勝利していますよ」

ユリカの言。

「連戦連勝の無敵の戦艦って言いたいのかしら?
 私はネルガルでこのナデシコの開発をしていたのよ。
 ナデシコのことはあなた達よりも知っているわ」

「ディストーションフィールド、グラビティブラスト、相転移エンジン。
 これらは既に木星蜥蜴が実装しているものよ。
 相手の攻撃が本気なら、数で押されてナデシコなんてかけらも残らないわ」

緊迫の面々。
敵の接近を知らせる警報が鳴り響く。

「本艦に巨大な物体が接近中。どうやらチューリップのようです」

「総員第一種戦闘態勢!! ディストーションフィールド展開してください」
「だめ、ルリ、展開しないで」

命令をオモイカネに電送しようとしたルリを、直接ラピスが止める。
ラピスはアキトに頼まれてここに来ていた。

「ラピスちゃん、どう言うこと?」

ユリカが訊ねる。

「フィールドを展開すれば下の人達がつぶれる。
 水平に離れてから展開しても、木星蜥蜴の攻撃に晒されてやっぱり下の人達が死んでしまう。
 アキトがこの二つの行動を止めろって言ってた」

ラピスの言葉で、初めてアキトがここにいないと気が付く。

「あれ? テンカワ副提督はどこ?」
「外」

ラピスの答え。

「BS2、敵戦艦に向かっています。
 戦艦、一隻破壊されました。
 チューリップから戦艦が現れ続けています。
 戦艦から機動兵器が射出されています。
 その数2000です」

ルリが報告する。
メインスクリーンを見ると、大量の戦艦や機動兵器に囲まれながら、次々と敵を破壊している黒い機体があった。

「俺達も出るぞ!!」

ガイが真っ先に我を取り戻し、出てゆく。
それに続く三人娘。

「私たちはどうすれば・・・・・・・・・・」

動けば下の人達が晒される。
動かなければこのまま標的になっていつかは沈む。
まさに進退窮まっている。



−− 外 −−

「流石に今までとは違うな」

そう一人呟くアキト。

高機動モードで強烈な負荷が掛かったまま次々と戦艦、無人兵器を破壊して行く。
その姿はまさに黒い悪魔。

チューリップから次々と現れる戦艦。
密集しているためにグラビティブラストを撃つことは出来ない。

(いくら無人兵器とはいえ、資源の乏しい木連は軽々しく破壊するわけには行かない、と言うところか)

味方ごと主砲を撃ってこないことに、そのような理由を考えるアキト。


敵の密度が変わる。
どうやらガイ達もやってきたようだ。

(チューリップは流石にグラビティブラストでなくては破壊できない。
 ・・・・あれを使えば大丈夫だとは思うが、荷物になるから今回は置いてきたんだよなぁ。
 あとはユリカが気が付くかに掛かっているわけだ)



−− ブリッジ −−

「敵戦艦、機動兵器ともにエステバリス戦闘で減少していますが、チューリップから新たな戦艦が現れています」

このままではジリ貧であることは誰にでも分かる。

「ミスマルユリカ、アキトからの伝言。
 『火星の人を犠牲にしない方策でナデシコを運用して見せろ。ヒントはラピスに言わせたことの中に入っている』
 これでアキトからの伝言は終わり」

ラピスはそう言った後スクリーンに向く。


(テンカワアキト。
 何者かしら。
 自分たちが全滅するかどうかと言うときに、まるでレクチャーするかのような言動。
 確かにこの場合、艦を浮上させてからディストーションフィールドを展開すれば下もつぶれないけど。
 あのラピスとか言う子に伝言したのだから予測していたと言うことになる。
 そして、あの戦闘能力。個人が所有できるものではないわ。
 テンカワと言えば、テンカワ博士だけど、一家揃ってネルガルに殺されたはず
 本当に気になるわね・・・・・・・)

イネスは表面上沈黙を保っていたが、内心では思索を広げていた。

(このまま展開すると下がつぶれる。
 そして水平に動くと下の人が攻撃に晒される。
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・
 あっ!!)

「ミナトさん、ナデシコを上に上げて下さい。
 ルリちゃん、地表に影響が出ない距離になったらディストーションフィールド展開して」

ユリカの指示が飛ぶ。

「了解」

ナデシコが急上昇する。
そして展開されるディストーションフィールド。


−− 外 −−

BS2の中でにやりとするアキト。

「やれやれ。気が付いてくれたか」

<アキト、どうして答えを教えなかったの?>
<いずれ居なくなる者に依存するようになってしまっては困るからな。
 どうしても気が付かないようならラピスに指示を出してもらったけどな>
<そう>

ユリカは正解に辿り着いた。
攻撃に晒されることもなくなり、無事にチューリップを撃破した。




〜〜 続く 〜〜




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