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機動戦艦ナデシコ original story



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第13話 8ヶ月

by FireWind




−− ユーチャリス −−

アキトとラピスがナデシコに行ってしまったあと、ダッシュはする事がなかったので、各方面にハッキングを仕掛けていた。
オペレーターがいなくても自律作動ができる域にまで、ダッシュは進化していた。

広域ECMを目的とするナデシコCの先行開発艦であるユーチャリスは、ほぼ同等のECM機能を備えており、ハッキングを仕掛ける上で大変有用だったと、ダッシュは後に語っている。

連合宇宙軍、ネルガル、クリムゾン、その他あらゆるコンピューターにハッキングを仕掛け、情報のコレクションに勤しんでいた。


情報を収集して楽しむ以外する事がないダッシュは、「睡眠」というものを試してみたりもした。
もっとも、人間のように体力が回復すると言うことはなく、大規模な情報の整理・統合・削除など、艦を制御していては出来ないような作業を行うだけであったが。



そして、今日も今日とてハッキング・・・・・となるはずだったが、予定が変わった。

<艦内にボソン反応>

反射的に警告音とともにメッセージを出したダッシュ。
しかし、見るものも聞く者もいない。


ボソンアウトしてきた物体を確認する。

<スキャン・・・・・コード確認。
 テンカワアキト、ユーチャリス艦長兼ブラックサレナ2パイロットと確認。
 お帰りなさい、アキト>

「ただいま、ダッシュ」

<ラピスはどうしたの?>

「置いてきた」

<どうして?>

「わざわざ破壊活動の片棒担がせる必要もないからな」

<・・・・・・・・・・・ということは、動くの?>

「ああ。
 でも8ヶ月したらまた戻る」

<ナデシコがチューリップからボソンアウトするころだね。
 ・・・・・・・前は飛んじゃったから何があったか分からないよ>

「俺も分からない。
 まぁ、大したことはないだろう。
 それよりも、早速動くぞ」

<ラピスがいないから出来ないこともあるよ。
 グラビティーブラストはアキトがいないと撃てない。
 無人兵器は僕が制御するけど、パターン通りの動きになっちゃう>

「ボソンジャンプで逃げられるから問題はない。
 今のうちに出来るだけ情報を集めておく必要がある。
 ・・・・・欲を言えば木連を単機で落としたいところだ」

<木連の単独壊滅は不可能。
 最低でもナデシコC級2隻、ナデシコ所属クラスのパイロット及び機動兵器20機は必要>

「分かっているよ。
 BS2も持ってきていないんだ。無駄な戦いはしない」

<ラピスも安心すると思う。
 情報については、アキト達がナデシコに乗った頃から収集したものを保持しているよ>

「インデックスは出せるか?」

<宇宙軍の分は可能。
 他はまだ未整理>

「わかった。
 しばらくは情報の確認、ということか。
 他のもののインデックスもなるべく早く頼む」

<了解>


アキトは私室へと戻った。
ブリッジでなくても情報の閲覧は出来るからだ。





−− 1ヶ月後 −−


1ヶ月ほど経ったある日、アキトはアカツキと連絡を取った。


『やあ。久しぶりだね。
 何処へ行ったかと思っていたところだよ』

「ナデシコのことか?」

『そうだよ。
 何しろ火星に行ったきり、音信不通だからね。
 せっかく作ったのに、壊されちゃったかと心配しているんだよ』

「大丈夫だ。
 火星で木連の戦艦に囲まれて、チューリップに入ったんだ」

『ボソンジャンプかい?
 まさかナデシコで出来るとはね』

まるきり驚いていない調子でアカツキが言う。

「知っていたんだろう?
 ナデシコのディストーションフィールドがあれば中の人間は死にはしない事を。
 もっとも行き先を指定できない以上、何処へいつジャンプアウトできるかは不明だが」

『ふむ。
 流石に経験者は語ると言った所かな。
 所で君はどこから話しているんだい?
 こちらではナデシコ発見の報告は来ていないんだけど』

「ユーチャリスだ。
 ナデシコがジャンプする前に跳んだ。
 8ヶ月は短い時間とは言えないからな」

アキトの言葉は、分かるものにしか分からない。

『8ヶ月?
 ・・・・・
 ああ、8ヶ月後にナデシコが現れるって事かな。
 テンカワ君の言うことは、どうにも分かりづらいね』

「そうか。
 で、補給のことだが月面基地で良いのか?」

『うん?
 まぁそこしかないだろうね』

「機密の方は大丈夫か」

『手を打って置くけど・・・・・何かする気だね』

「・・・・・・・・」

『君が何を背負っているかは聞かないけど、あまり派手なことされちゃうとこっちでも庇いきれないから気をつけてくれたまえ』

「わかった。
 補給は4ヶ月先だ。
 シークレットラインでこちらに繋がるようにしておくから、ジャンプ研究で用事があるときには呼んでくれ」

『オーケー。じゃ』


通信が切れる。






−− 3ヶ月後 −−

ナデシコのジャンプから3ヶ月、アカツキとの会話から2ヶ月が過ぎた。


ダッシュが気の赴くままに集めたデータの整理には、結局2ヶ月も掛かった。
データ量もさることながら、アキトのための生活維持装置の分、ダッシュに負担が掛かっているためだ。


「木連とクリムゾン・・・・・・・
 どうも怪しいな」

<ラピスがいれば、もっと奥まで入れたんだけど>

「無理をしてガードを堅くされるよりはまし、か。
 それにしても、この時期から繋がっていたとはな・・・・・・・・・・
 殺るか?」

<アキト。現在は戦力が不足しているから無理>

「分かってるさ。
 それでも・・・・俺は奴らを生かしておくつもりはない。
 あの時は俺がけりを付けられなかった。
 二度起こる前に始末を付けてやる」

顔のナノマシンの奔流が光る。

<アキト。
 僕はルリとも、ラピスとも一緒に仕事した。
 だからルリの思っていることも、ラピスの思っていることも知っている。
 二人とも、アキトを必要としている。
 僕がルリやラピスが必要なのと一緒・・・・であると推測できる。
 だから、死んではいけない>

「・・・・・・・・・・・
 ダッシュ、ラピスは今のままでしあわせだと思うか」

<「しあわせ」の定義は各個人によって異なるため、判別は不可能。
 しかし、アキトといるときのラピスの各種データ、及び僕との会話記録を分析の結果、ラピスはアキトといることにしあわせを感じていると思うよ>

「ラピスには、普通の女の子としての生活を送ってもらいたいんだ。
 復讐の片棒を担がせて、二度と帰れないところまで連れてきてしまった。
 まったく、保護者失格だ」

<ラピスはアキトと居たいと言っている。
 当人同士の気持ちの問題であると推測できるから、僕はもう何も言わない>

「・・・・・・・・・・・」

<そういえば、ラピスがアキトへの不満の愚痴を僕に言っていた>

ラピスはアキト至上主義であると、アキト自身も考えていたので、この言葉は非常に気になった。

「珍しい。内容を教えてくれるか?」

<「アキトが一緒に入浴してくれない、ラピスの身体を洗ってくれない、どうして」だよ>






アキトは、その後しばらく何も喋らなかった。








オモイカネに表情があったとすれば、「ニヤリ」と言う表情だっただろう。(笑)











〜〜 続く 〜〜




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