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機動戦艦ナデシコ original story



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第14話 定命

by FireWind




−− ナデシコ −−

皆が気がついたとき、ナデシコは戦闘のまっただ中であった。
オモイカネによって自動防御システムが作動しており、ディストーションフィールドによって主だった被害はでていないが、このままじっとしていればいつかは沈む。

一番最初に意識を取り戻したのは、ルリであった。
強化体質の関係なのだろうか。

ルリは艦内にエマージェンシーコールを鳴り響かせ、システムのチェックをおこなう。

オモイカネプログラム・・・・・正常
全生命維持システム・・・・・正常
ナデシコの全武装システム・・・・・正常
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・

ナデシコそのものに異常は発見されなかった 。
それを確認すると、艦を少しでも戦闘域から離脱させるようオモイカネに命令する。
本来その手のことを命令すべき艦長、ミスマルユリカが居ないからだ。

ついでに言うと、ジャンプ時にブリッジにいた者のうち、イネスやアキトも居なかったりする。
が、今は敵のまっただ中という状態なのでそこまで気が回らない。


やがて、ブリッジの面々が完全に目を覚ます。
他の部署でも同様だろう。

「現状報告!!」

気の弱い副長の替わりに、ゴートが指示を出す。

「現在ナデシコは連合宇宙軍と木星蜥蜴と思われる敵艦隊との戦闘の真っただ中にいます。
 自動防御システムによって損害はありません」

ルリが報告する。

「180°転針。
 最大戦速でこの宙域から離脱!
 しかる後に体制を整えて木星蜥蜴への攻撃をおこなう」

ゴートは続けて指示を出す。

「了解。180°転針の後最大戦速で離脱します・・・・・って、360°全部囲まれちゃってるよ〜」

ミナトがそう反論する。

「うぐっ!」

ゴート、言葉が詰まる。
やはり前歴があっても現役じゃないから・・・・・

『ブリッジ、聞こえるか?』

アキトの声。

「はい。こちらブリッジ」

『これから外にでて敵と戦う。開けてくれ』

「艦長の指示もなくそのようなことは出来ない。
 そもそも艦長は何処にいるのだ」

『展望室だ。
 しばらく前にラピスを迎えにやったからそろそろブリッジに着く頃だろう。
 それに、用兵上の順位で言えば一応副提督なのだが・・・・』

「だったらブリッジで指揮を執ってくれ。
 指揮をする者が居ないのだ」

『アオイ副長が居るだろう?』

「・・・・それはそうだが」

(はっきり言って副長に任せるのは非常に不安だ!!)

ゴートも気遣いくらいは出来るので、表立って言うことはしない。
言いはしないが・・・既に態度で表しているとおもう。

(・・・・・・・・僕って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

さめざめと涙を流しつつ、オブジェと化したジュン。


『では納得してもらったところで、俺は迎撃に出る。
 開けてくれ』

アキトは”開けなければ蹴破ってでも出る”という体勢で出口に向かう。

ゴートは、これ以上論議していては艦自体が沈むと言うことと、どうせ止められないのなら壊されない方がよいということで、出口を開けさせる。

『発進後に無人兵器を掃討しつつ艦のまわりの敵を引きつける。
 隙が出来たらそちらから逃げて月面基地に向かえ。
 他のパイロットにまわりを守らせれば大丈夫だろう』

発進体制に入るBS2。

「まて。
 それではお前がエネルギーウェーブから外れてしまうぞ」

『別動力を積んであるから問題ない。では発進する』


BS2はレールガンを持って発進した。
(なお、見えないところにDライフルが格納されている)

「く・・・・仕方ない。
 テンカワの言うとおり、ここから離脱して月面基地へと向かう。
 パイロット全員をたたき起こして艦の防御にあたらせろ」

ゴートは最善の行動をとるべく次々と指示を出す。

「ディストーションフィールド出力、及び強度を確認しつつグラビティーブラストエネルギーを充填しろ。
 周囲の敵の密度を逐次確認しておくんだ」

「「「了解!!」」」


−− 外 −−

「まわりは敵だらけ・・・・
 アカツキ達が来るまでの辛抱とはいえ、なかなか厳しい状況だな」

BS2からの通信は既に切ってあり、滅多なことを呟いても問題ない。

<ラピス・・・ラピス>
<何アキト>
<ユリカはまだか>
<今着いたところだけど、全然起きないの。
 隣りにイネス博士が寝てる>
<どっちも起こしてくれ。
 アカツキ達が来るまで持つだろうが、寝かせておくわけには行かないからな>
<手段は?>
<任せる>
<分かった。頑張る>

「さて・・・・こっちはこっちで掃討しておくか」

高機動モードに変形し、敵戦艦群へと突っ込んで行く。



−− 展望室 −−

ユリカとイネスが転がっている展望室。
アキトに言われてきたラピスは、全力で揺らすなどして起こそうと試みた。

しかし、どれほど揺らしても全く起きる気配がない。
アキトに頼まれているのに、その頼みを叶えられない。
ラピスの心中は、『アキトのためにこの二人を起こす。手段は選ばない』となっていた。
(二人がいけないんだよ。ふふふ・・・・・・・)

ラピスが手段を選ばないとまで考えた理由。
「うう・・・・ん・・・・アキトぉ〜〜〜〜・・・・・・・・
「う・・・く・・・・おにいちゃん・・・・・・・

(怒怒怒怒怒怒怒!!!)


・・・・・・・・ま、深くは問うまい。



−− 外 −−

アキトはナデシコのまわりの敵を引きつけるようにレールガンを数発撃つ。
レールガンの破壊力を放ってはおけないと判断したのか、戦艦数隻と無人兵器がBS2に向かってくる。

それらの動きをを背面に感じつつ、アキトは前面の戦艦や接近してくる無人兵器を攻撃していた。

8ヶ月経ったためか攻撃力も防御も強化されている無人兵器。
しかしBS2の兵装からすれば問題とはならない。
対戦艦用のレールガンを収納し、Dライフルを構えて無人兵器を片端から破壊しまくる。
近接してきた相手には空いている腕・脚を用いて一撃で破壊してゆく。
時折、腕から鈎付きのワイヤーロープを射出して相手を捕まえ、振り回して纏めて始末する。

このワイヤーロープは本来一対一の戦闘にて使うモノであるが、ここではその説明は割愛する。


浮塵子のごとき無人兵器の群。
ディストーションフィールドを展開しつつ、連合宇宙軍やナデシコ、BS2を攻撃する戦艦群。


ナデシコは、BS2に向けられた攻撃とガイ達他のパイロットの働きで多少攻撃が緩んだものの依然敵の真っ直中である。
強化された無人兵器に戸惑っているのか、動きはよくないが敵の攻撃が分散されるだけナデシコにはプラスとなっている。

見ると、ナデシコの動きがよくなってきている。
ユリカ達が復帰したのだろう。

(そろそろコスモスが来る頃だが・・・・・)

そうアキトが考えていると、閃光が敵を破壊していった。

カッ!!

大小さまざまの爆発光
宇宙空間なので音は聞こえないが、振動はびりびりと伝わる。

『テンカワ君、ご苦労様。
 後は任せてくれたまえ』

アカツキからの特別通信。
アキトはまわりの敵を破壊しつつナデシコへと下がってゆく。

続けて第2波、第3波とグラビティーブラストがコスモスから放たれ、大方の木星蜥蜴の戦艦群・機動兵器群は破壊された。
8ヶ月で多連装化だけでなく威力も上げたようだ。



−− ナデシコ格納庫 −−

ブリッジ要員は格納庫へと来ていた。
ただ、ユリカとプロスはコスモスへと赴いている。

「やあ、ナデシコのみなさん始めまして。
 僕はアカツキ・ナガレ。コスモスから来た男さ」(キランッ

アカツキは長い髪を掻き上げつつポーズを決めて挨拶(?)した。
アパ●ードを使ったのか、白い歯がまぶしい。

しかし、誰も見ちゃあいなかった。
その中でゴートは無表情だが、どこか苦々しそうな雰囲気を放っている。
・・・アキトとラピスは離れたところから眺めていた。

「アキト、アレどうやるの」
「わからん」


コスモスからはとりあえずの補給物資が積まれる。
今回の戦闘でリフレクターディストーションブレードやその他の各所が破損し、コスモスとドッキングして修理している。

ユリカ達がコスモスから戻ってきて艦内に放送された内容は、「ネルガルと軍は共同戦線を敷くことになり、ナデシコは連合会軍極東方面に編入される事」「それに伴ってナデシコのクルーは軍人となる事」「ナデシコに残る者は契約書類の更新を行い、残らない者については地球に帰還後、ナデシコから降りる事」「苦情は艦長かプロスペクターまで」であった。

無論、様々なところで議論がかわされたことは言うまでもない。

ただ、このままでは強くなった木星蜥蜴との戦闘に耐えられないということで、一旦ネルガルの月ドッグへ向かい、戦闘に耐えられるレベルまで改修することになった。
8ヶ月の期間はナデシコを旧世代の艦としてしまったのだ。



−− 展望室 −−

各所で軍人になってしまうことについて議論が交わされている中、展望室にはアキトとラピス、そしてアカツキがいた。

「君がラピス君だね。改めてはじめまして。
 アカツキ・ナガレだ」

そう言って右手を出す。
ラピスはアカツキの顔をじっと見たまま、とりあえず挨拶を返す。

「ラピス・ラズリ。よろしく・・・・・」

ラピスはアキト以外の男性に触れたくないので握手などしない。

「やれやれ・・・嫌われちゃったかな」

そう戯けるアカツキ。
その左頬には紅い手形が・・・・・

「ラピスは人見知りが激しいからな。
 気にするな」

「それは良かった」

「それより、その手形は何だ?」

アキトが指摘する。

「いやあ、ちょっとお茶にでも誘おうと思って軟派したらひっぱたかれてね」

(ミナトさんか・・・・・)

「で、何の用なんだ。
 まさかラピスへの挨拶だけではないだろう?」

「うん。
 実は・・・・」

そう言ってアカツキが語りだしたことは以下のようなことだった。

・連合軍は一枚岩ではなく、クリムゾンあたりと繋がっている者が居ること
・無人兵器の残骸を調査した結果、地球で作られている可能性があること
・ジャンプ研究の準備が整ったから、これから時々研究に協力してくれとのこと
・ナデシコのオペレーターシートを複座式に変更して、オペレーターを二人同時に運用する予定ということ
・BS2の稼働データを元にしてカスタム機を試しに作ったこと
・アキトのデータを元に作ったDライフルを、ラピッドライフルに代わりエステバリスの標準装備として量産していること(つまり、小型のディストーションフィールド発生装置は完成している)

等々。

「残念だけど現在の技術力では全てを参考には出来なかったよ。
 カスタム機だって君の機体の2〜30%くらいで押さえているんだ。
 100%を扱える君の凄さが改めて分かったよ」

「訓練すればお前でも可能だ。
 やってみるか」

アキトはにやりとしながらそう問う。

「やめておくよ。
 乗りこなせた頃には戦争が終わっていそうだ」

そうアカツキは断った。


そこに入る敵接近の報。




−− ブリッジ −−

アキトとラピスはブリッジへ、アカツキは格納庫へと向かった。
アカツキのエステバリスカスタムは、ウリバタケをはじめとする整備班の魔の手に”まだ”掛かっていなかった。
軍人になることについての議論が交わされていたからだ。

こうして敵が接近してきたのだから、分解されないで済んだのは誰にとっても良いことなのだろう。


「状況は?」

アキトが問う。

「現在ナデシコはコスモスにドッキングし補修を受けているため行動不能。
 コスモスも同様の理由で、戦闘は不能」

ルリが答える。
他の者−ゴートやユリカなど−が答える前にウィンドウを開いて的確な説明を行うため、出番がない。

「パイロットによる機動兵器戦闘しかない、か。
 俺も出る」

「あ」

ラピスが画面を見て驚いている(?)

思わずアキトも画面を見る。

そこには、よりにもよって敵戦艦の主砲前に位置するヤマダ機、と言う映像が・・・・
まわりを無人兵器に囲まれ、動きが取れないようだ。
大方、ポーズを取って倒そうとしたところを囲まれてしまったと言うところか。

リョーコ達を見ても、強化された無人兵器相手に全力で戦闘をおこなっており、余裕がないようだ。
量産されたDライフルを持ってしても、速度まで強化されている無人兵器相手では数の不利は如何ともし難い。
アキトあたりであれば大したことはないのだが、ノーマルエステバリスでは、実力を発揮しきれないのだろう。

「急いでガイを救出に向かう!!」

そう言ってブリッジを駆け出るアキト。
アキトの感情的な行動が珍しい面々は、呆気にとられていた。


−− 外 −−

格納庫内から高機動モードで高速発進したBS2。

(ガイ・・・死ぬな・・・)

アキトはそう念じて出力を更に上げる。
BS2の制御装置でも制御しきれないGがアキトに掛かるが、構わずガイの所へ向かう。


奇跡的にも未だヤマダ機は無事であった。
しかしエネルギー充填が今にも終わりそうな気配の戦艦。

アキトは射程内にはいるとすぐにレールガンで狙撃する。
主砲発射直前に、ヤマダ機正面の戦艦は沈んだ。

(ふぅ・・危なかった・・・・)

そう安心したその時!!



カッ!


別方向からの主砲が無人兵器もろともヤマダ機を襲う。

(しまった!!)

後悔しても遅く。


光が収まった後には、残骸が残ったのみであった。



「チッ!!!!」

気を抜いてしまった自分に激しく怒りを覚えながら、ガイを殺した戦艦を沈める。

ガアアァァァァァァァーーーーーーーー!!!!

そのまま、怒りにまかせて手当たり次第に破壊を繰り返すアキト。
レールガンを的確に、全方位の戦艦に撃ち、全てを沈める。
寄ってくる無人兵器を漆黒の手足で次々と破壊する。
手足では飽きたらないのか、体当たりで破壊する。

今までの操縦が児戯であるがほどのすさまじい戦い方であった。
その様は、通信によって聞こえてくるアキトの怒声と相まって味方であるはずのナデシコクルーにすら恐怖を与えた。





「死神・・・・・・それとも、破壊神か・・・・・・・・」





誰とも無く呟く声が、静寂のブリッジに溶けて消えた。



〜〜 続く 〜〜




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