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機動戦艦ナデシコ original story



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第15話 隔意

by FireWind




−− 月・ネルガルドッグ −−

戦闘自体は、地球側の勝利という形で終わった。
今は月のネルガルドッグにてナデシコの改修が行われている。

しかし、ナデシコクルーにとっては手放しで喜べない勝利だった。


「・・・・・・・・・・・・」

アキトは無言で自室へと歩く。
誰もアキトに声をかけない。
遠巻きに眺めるだけだ。

先程のアキトの戦いぶりを見てしまったためか、アキトに対して恐怖・嫌悪と言ったマイナスの感情が渦巻いているのだ。

ラピスは何も言わずに黙ってアキトに寄り添っている。
言葉ではアキトを救うことは出来ないから、せめて一緒にいたいと。


そのまま部屋に入っていく姿を見たアカツキ。
「やれやれ・・・・しばらくはそっとしておいた方がいいかな。
 それよりも・・・・・・」

(彼を恐れるナデシコの空気。こちらの方も問題だね)

アカツキは全てを口にせず、心中でひとりごちた。



ブリッジ要因の面々は、アキトの戦闘を全て目にした。
映像から来る直接的な恐怖は、乗機であるBS2の黒と相まって「漆黒の死神」「闇の破壊神」という言葉を連想させる。

「ミスター」

ゴートがプロスに声をかける。

「なんですか」

「テンカワアキトは・・・・本当に我々の味方なのか」

「ふむ」

プロスは顎に手をやり、しばし考える。

「確かに、副提督の力ははおよそ人とはかけ離れております。
 ですがそれらは全て敵を倒すことに使われているじゃないですか。
 もし敵であれば、今までにいくらでもチャンスはありますよ」

「しかしな・・・・アレは人が御することなどできるようには見えん。
 いつか我々と道が分かれたとき、脅威となりうるのではないか」

「御する必要などありませんよ。
 そもそも人が人を御するなどと言う考え自体、傲慢では?」

「うむ・・・・・それはそうだが」


そのような会話をおじさん二人がしているとは知らず、ルリはオモイカネとともにアキトの情報をもう一度調べ直していた。



リョーコ達は、同じエステバリスパイロットであるからこそアキトの戦いぶりは人間の業を越えていることを理解しており、また恐れもする。

「あいつ・・・・何なんだろうな・・・・・・・」

リョーコの問いは、何を指しているのだろうか。

「自分で機動兵器持ってる変な人」

ヒカルの、場を和まそうとする一言。

「・・・・・・・・・・・」

今回は、ギャグを言う雰囲気ではないので・・・・ではなく、単に思い浮かばないため黙っているイズミ。

「そんなんじゃねえよ。
 俺には、いつも冷静で、幼女趣味で、やたら腕が立つ変な奴だと思ってた。
 でも、あいつはヤマダの奴が死んだことに怒って、我を忘れて・・・・・
 わけわかんねえよなぁ」

なお、この三人はガイが死んだことに多少は動揺したモノの、他のクルーほどではない。
戦争時のパイロットとはそう言う物だと割り切っているのだ。




このリョーコの考えが、今までのナデシコクルーのアキトへの評価だ。
だが、今度の戦いで見せたアキトの戦いぶりは、「狂っている」とか「獣」「死神」といった言葉がピッタリ来るものであり、まるで冷たい爆弾を抱え込んだがごとき錯覚を皆に与えた。




だが。


ここに、アキトを心配する者がいた。



その者の名前はメグミ・レイナード。



かつて月ドッグでの戦闘後にアキトの本質の一端に触れた彼女は、アキトの怒りがヤマダを戦死させてしまったことによるものだと理解し、今なお”人の死”に敏感なメグミには嫌悪とはならなかったのだ。


この年頃の女性特有の独善的な正義感により、メグミはアキトを救うことに使命感を見いだしていた。

(あの時はアキトさんが私を助けてくれたんだもの。
 今度は私がアキトさんを助けてあげる番!!)

いつの間にか、呼称が「テンカワさん」から「アキトさん」になっている。


この後、メグミはアキトの部屋に赴き、ラピスと戦闘状態になったことは言うまでもない。





ーー 新生ナデシコ ーー

月・ネルガルドッグにて改修を受けたナデシコは、二つ大きな変更点がある。
グラビティーブラストが二つになったこととオペレーターシートが複座になったことだ。

グラビティーブラストの追加は言うまでもなく今までの単砲ではとうてい勝ちがおぼつかないため。
因みに一発あたりの威力も出来うる限り上がっている。
オペレーターシートを複座にしたのは、単に一人余らせておくのがもったいないから、と言う理由だけではない。
なお、複座の片方が埋まっていなくても何の問題もない。
二人同時にオペレート出来るので、戦闘時に役立つと言えば役立つ。
後々、エステバリスと連携した戦略的オペレートも出来るようにと言う考えもある。



「え〜、軍と共同戦線を敷くにあたって、ナデシコに新しい仲間が増えます。
 提督としてムネタケサダアキさん、副操舵士としてエリナ・キンジョウ・ウォンさんです」

扇子片手に有頂天なムネタケと、そんな物体を軽蔑の視線で見ているエリナ。

「おっほっほ。
 これからは私の指示の元、きりきり働いて貰うわよ」

そして、軍人としてどうあるべきかなどとうんちくをたれ始めるが、ナデシコクルーはすぱっと無視。

「副操舵士として着任したエリナよ。
 私が来たからには、だらけきったナデシコの綱紀を粛正するつもりです。覚悟して置きなさい」

何故にそこまで居丈高なのかと皆が疑問に思ったが、会長秘書と聞き納得。
「厄介なのがきたもんだ」というのが皆の総意だ。



アキトも一応この場に来ていた。
もちろんあの姿(バイザー・黒マント)なので、ムネタケはすぐにアキトに気がつく。

「フン・・・あの時は世話になったわね。
 でもこれからは私の指示に従いなさい。
 何せ私は”提督”ですからね〜〜。オーッホッホ」

勝ち誇るムネタケ。

「自分の実力で敵わなければ、今度は権力か。
 どうやらまた海水浴がしたいと見える」
「アキト・・・・このキノコ、いらない」
「食べたら食あたりを起こすぞ。無視しておけ」
「分かった」

あからさまに喧嘩を売ろうとしているアキトとラピス。
しかしムネタケが何か言う前にアキトの肩を叩いた人物が居る。

「ま、ま、ま。
 テンカワ君もそれくらいにしておきなよ。
 仮にも相手は軍から正式に派遣されてきた提督様だ」

アカツキだ。

「あら、よく分かっているじゃない。
 お友達の教育は、きちんとしておいた方がよくてよ。
 じゃあね。おーっほっほ」

アカツキの言葉に満足したのか、どこかへ行ってしまったムネタケ。

「アカツキか・・・・・」

「あんなのは放っておくにかぎるさ。
 君にはそんなことよりも大切なことがあるのだろう」

「まあな。
 それにしても、エリナまで連れてきて、どうするつもりなんだ」

「エリナ君かい?
 しようがないじゃないか。”会長がいらっしゃるところに居なくては会長秘書ではありません”なんて言い出してね」

「上司がこれでは、エリナも苦労するだろうな」

「あはは・・・エリナ君にも言われてるよ」


なにやら親しげに話すアキトとアカツキ。
ラピスはアカツキなんかの相手をしているアキトが気に入らないのか、ふくれている。






(テンカワ君攻めアカツキ君受け・・・・いけるわね・・・・・・)

この光景を見てメガネを光らせた者が一名いることは、誰も知らない。






〜〜 続く 〜〜




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