表の世界からいらっしゃった方々、始めまして!

 

わたくしは、当格闘場の支配人兼司会進行をつとめさせていただきます、福沢と申します!

 

このたびは、ようこそ裏の格闘場へ!

 

みなさまには、これからちょっとしたゲームをしていただきます。

 

そのゲームとは‥‥単純明快、完全無欠でう〜、わぁお! な一発勝負、じゃんけん!!

 

ルールは簡単、ここにいる皆様で、じゃんけんをしていただくだけです!

 

しかし! ただのじゃんけんではありません!

 

皆さまにはそれぞれ番号が振られており、その番号と同じ数字を胸につけた「ジャッジメン」が控えております。

 

彼らには、現金10万円に交換可能な小切手を持たせてあります!

 

そう! 皆さまは互いにじゃんけんをしていただき、勝てばその10万円を手に入れることができるというわけです!

 

このルールにより、例えば10人に勝って110万円を持っている人に勝てれば、一気に110万円を手にできます!

 

積極的に勝負するも、冷静にことを進めて漁夫の利を狙うもあり!

 

まさに一世一代の大勝負なのです!!

 

そして、残念ながら負けた方は、即刻ゲームオーバーとなってしまい、10万円の小切手を失うことになります。

 

参加者は総勢100名! 合計金額は、なんと1億円!!

 

そのうえ、ゲームスタートから30分ごとに、スペシャルボーナスチャンスをご用意いたしております!

 

これは、手持ちの資金総てを賭ける事で参加でき、参加された方々は、私と勝負をすることになります。

 

そして、私に見事勝つことができれば、賭けた金額の倍が手元に!

 

もちろん、負けた方はその場で退場となりますが‥‥しかし、悪い勝負ではないでしょう!

 

このゲームでは、途中退場ができません、ですから、いくらたくさんお金をもうけても、一度負ければ総てパーに‥‥。

 

そんな世知辛いルールを打破するため、こんなシステムを設けました!

 

その名もドロップアウトシステム!

 

これは、手持ち金額が1000万円を超えた方のみに適応されるシステムで、

 

ドロップアウターと呼ばれる男に勝つことができれば、

 

手持ち金額の10パーセントをゲットして帰る事ができるシステムです!

 

最低で100万円‥‥これを持って無事に帰るか、最後まで勝負するか‥‥それは皆さまの覚悟と運次第!

 

では、がんばってくださいませ!

 

 

 

 

 

 

みんなルールに唖然としていたようだが、福沢という男が云った「ジャッジメン」とかいう黒服の野郎共が一人一人の前に

現れると、さすがに信じ始めたらしい。

 

 

ふと隣を見ると、僕よりも年上らしい、大学生っぽいお姉さんが辺りをきょろきょろと見回している‥‥他のみんなも、

そんな状況だ。

 

 

にわかに、ざわついた場所があった。

そちらに視線を投げると、どうやらどこかのチャレンジャーがじゃんけんを始める気らしい。

みんなそちらに集まっていく中、僕は遠くからそれを眺めていた‥‥隣のお姉さんは小走りで人だかりに近づいていく。

 

 

 

「じゃーんけーん‥‥」

 

 

 

意味不明な場所につれてこられたにしては、妙に明るい声。

黒服のジャッジメンにちらつかされた10万円で信じる気になったようだ。

 

 

そして次の瞬間。

甲高い悲鳴が辺りを騒然とさせた。

そしてそれは、あの人だかりの中で、音量を増していく。

 

 

何が起こったのかよく判らない僕はそちらを覗き込んでいるが、たくさん人がいてよく見えない。

と、そのとき、天井の四面ディスプレイに人だかりの中心が映し出され‥‥僕も息を飲んだ。

ほぼ同時に、司会者と名乗るあの男の声がマイクで拡張され、ホールの中一杯に響き渡る。

 

 

 

『おっと、もうひとつ大事なルールを忘れていましたね。

じゃんけんに勝てれば大金持ち‥‥そして負ければ、ゲームオーバー。

じゃんけんのルールは皆さんご存知の通りでしょう‥‥グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つ。

そして、グーチョキパーそれぞれの成す意味も知っていますよね。

そう、グーは石、チョキはハサミ、パーは紙‥‥。

このじゃんけん大会では、例えば相手がグーで自分がチョキだったら、自分は石に負けたということになりますね。

そうなった場合、あなたのジャッジメンが容赦なく、あなたの後頭部を拳大の石で殴り飛ばします。

もし相手がチョキで、自分が負けた場合は、はさみを背中に刺されますね。

そして相手がパーで自分が負けたなら、トイレットペーパーで首を絞められます。

人生、いつでも勝負事。

勝負とは、いつの世も生きるか死ぬかを賭けたギャンブルなのです!!

そしてこのじゃんけん大会は、自らの命と1億円を賭けた、一世一代の大勝負なのです!!!』

 

 

 

背筋が凍った。

冗談だと思った。

けれど、人だかりの中心で背中にはさみを刺されて倒れている男を目の当たりにすると、

血の気が引いたが現実を思い知らされた。

さっきの女子大生のお姉さんは人だかりから走って逃げてくると、僕の前で立ち止まる。

僕を見下ろすその目は、恐怖と狂気のはざまにあった。

 

 

 

「いやあっ!!」

 

 

 

そして僕の横を駆け抜けていく。

やがて、他の人たちも恐怖におびえ、あるいは怒り狂い、互いに目をあわせようとしないまま慌て始めた。

そしていつしか、そのホールの出口に向かって走り出す人々が群れになった。

だが、どうやら出口は閉められている‥‥というか、存在しなくなっているらしい。

 

 

 

『ここから出るには、最後まで勝ち残るか、1000万円以上手に入れてドロップアウトするか、

もしくはじゃんけんに負けるかしか方法はありません!

そして‥‥1時間以上勝負が行われない場合は、皆さんを強制的にボーナスチャンスに参加させることになります。

そこで負けるか‥‥もしくは何も出さなければ、じゃんけんのルールに従ってゲームオーバーとなりますのでお気をつけて!

あ、ちなみに、参加者同士のじゃんけんは、お互いの同意がなければ行われませんので、よくよく考えてくださいね♪』

 

 

 

福沢の声が切れる。

と同時に、絶望に打ちひしがれ泣き喚く人間の群集。

あるいは気力を失ったのか、その場に座り込むものもいる。

‥‥いずれにせよ、このままでいられるタイムリミットはあと57分。

 

 

そんな中、呆然と立ち尽くしているひとりの女性がいた。

その視線の先には、背中を刺されて血だまりの中に突っ伏している男がいる。

おそらく、男にじゃんけんで勝った人なのだろう。

その後ろに立っているジャッジメンが、死んだ男のジャッジメンから何かを受け取っているのを見た。

きっとあれが、小切手という奴だろう。

女性は、それをジャッジメンに見せられているが、実感がわかないのか表情も変わらない。

辺りの人々が好き勝手に暴れたりわめいたりしている中、その女性だけが何かにとらわれたように、ぼうっとしていた。

 

 

僕は、ちらりと僕のジャッジメンを盗み見る。

彼は、ずっと僕のことを、微動だにせず見下ろしている。

僕もあまり身長が高いほうではないけれど、この人も、そしてどのジャッジメンも、背が高い。

もしかしたら2メートルくらいあるかもしれない、それに、日本人のようには感じられない。

どこかの軍隊とかにいたみたいに、体中筋肉だらけな感じがした。

 

 

もういちど、先ほどの女性に視線を投げる。

すると、その女性は別の男の人に肩を抱かれていた。

男の人は優しげな笑顔を浮かべて女性をなだめている‥‥女性はその人に身体を預けて泣き出した。

どうやら知らない人同士みたいだけど、あんなに優しくできる男の人を見ていいなあ、と思った。

 

 

 

「下心丸出しな顔しやがって」

 

 

 

ふと、後ろのほうから声が聞こえた。

振り向くと、僕よりもずっと背の高い男の人━━ジャッジメンじゃなくて━━が、僕と同じようにあの女のヒトのほうを見ながら、小さく「ちくしょう」と云ったのを見た。

 

その男の人は、僕の視線に気付くと、ゆっくりとこっちを見た。

僕は、怖くて目があわせられなくて、じゃんけんしようなんて云われたら断れなさそうで、震えた。

けれど男の人はゆっくりと、目で微笑んだ。

さっきの、女性の肩を抱いた男のヒトとは違う笑い方‥‥僕はこの人に、ここに来てから始めての安らぎを得た気がした。

そして気付いたら、わんわんと大きな声を上げて、情けなく泣いていた。

男の人は、頭をなでてくれた。

 

 

 

※ ※

 

 

 

「かわいそうに‥‥おまえ、いくつだ?」

 

「10さい‥‥」

 

「そうか‥‥なんてこった」

 

 

 

男の人は唇を噛むと、また僕に微笑む。

 

 

 

「おれは秋葉だ、アキバ。よろしくな」

 

「うん‥‥」

 

「おまえの名前は?」

 

「かたせ、ゆき」

 

「ゆきちゃんか‥‥」

 

 

 

男の人の微笑が、優しかった。

 

 

 

「ぼく、お母さんのお使いでねぎとじゃがいもを買ったの」

 

「そうか‥‥ゆきちゃんは、自分のことをぼくって云うのか?」

 

「お兄ちゃんたちがみんな、ぼくって云ってたから」

 

「男の子みたいっていわれたことあるだろ」

 

「うん‥‥みんな云うの、ゆきは男みたいだって」

 

「そうかもな」

 

「‥‥おじさんは、なにしてたの? お使い?」

 

「おじさんは酷いな‥‥これでもまだ24‥‥とにかく、おれのことはアキバって呼んでくれ」

 

「あきば?」

 

「そう。おれは、買い物じゃない。家に帰る途中だったのさ」

 

「ふーん」

 

 

 

気付けば、辺りの人々は誰もが床に突っ伏したり座っていたり、誰一人としてじゃんけんしようとする人はいなかった。

そして秋葉も、僕とじゃんけんしようと云ってはこなかった。

 

 

 

「あきば、じゃんけん好き?」

 

「‥‥そうだな、好き、じゃないな」

 

「ぼくも、好きじゃなくなった」

 

「じゃんけんってのは、自分と相手のどっちが強いか決めるためにやることだ。おれはそんなこと興味ない」

 

「きょうみ?」

 

「気にしないってことだ。別にどっちが強くったって弱くったっていいだろ?」

 

「んー‥‥でも強いほうがいいんじゃないの?」

 

「そうかもしれないな。だが、相手も自分と同じ人間だ‥‥争ったって根本的な解決にはならん」

 

「‥‥?」

 

「ま、あれだな、ゆきちゃんも、けんかは嫌いだろ?」

 

「うん」

 

「つまりそういうことだ」

 

 

 

そんな会話の途中、突然辺りにサイレンが響き渡った。

びくっとした僕の頭に秋葉は手を載せてくれた。

不安がなくなったけど、秋葉は厳しい表情をしていた。

 

 

 

「‥‥30分か」

 

 

 

ジャジャーン、という悪役の登場シーンみたいな効果音が鳴ったかと思うと、天井のディスプレイに福沢の顔がアップで映る。

そして、そのアップが声を荒げて云った。

 

 

『スペシャルダブルアップターーイム!!』

 

 

 

僕が秋葉を見上げると、秋葉は笑顔になって、僕に云った。

 

 

 

「気にしなくていい‥‥まだな」

 

 

ディスプレイが叫ぶ。

 

 

『さーあ、試合開始から30分が経ち、皆さまもルールをよく理解できたことでしょう。

そこで、第一回目のボーナスチャンスを開催します!

参加される方は、自らのジャッジメンにその旨を通達してください!!』

 

 

 

そこで始めて、僕と秋葉のすぐ近くにふたりのジャッジメンが立っているのに気付いた。

秋葉はそいつらを睨んで、云った。

 

 

 

「おれはやらない。この娘もだ」

 

 

そして、僕を見下ろすと、ゆっくりと、僕の目を見て、云う。

 

 

「いいか、あの男に、ボーナスチャンスには参加しないって云うんだ、はっきりと」

 

「?」

 

「これは、自分の口で云わないと意味がない‥‥もちろん云わなくても参加にはならないが、はっきりと自分で云わないと、

あとで痛い目を見る可能性があるからな」

 

 

 

僕は頷いて、ジャッジメンを見据える、そして、云った。

 

 

「ぼーなすちゃんすには、さんかしない」

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

しばらくして、会場の電気が全部消えた。

僕はかなりびっくりしたけど、秋葉が僕を抱いてくれたので安心できた。

そんな僕の耳に、あの福沢の声が響いた。

 

 

『さーあ、今回の参加者は‥‥おっと、意外といますね‥‥21名ですか‥‥思ったより多くて結構結構!』

 

 

 

その言葉を聴いた瞬間、秋葉がちっと小さく声を出した。

 

 

「バカな奴らだ‥‥」

 

 

『では早速参りましょう‥‥参加者にスポットライト、オン!!』

 

 

ばっ、と音がした気がして、目の前がまぶしくなった。

僕の近くには光は来なかったけれど、遠くでライトを当てられて、立ち上がる人たちを見た。

 

 

「あの人たちは?」

 

 

僕が聞くと、秋葉は黙って僕をぎゅっと抱いた。

 

 

 

『はい、いきますよ〜、っと、忘れてました、これは一回勝負ですから、あいこもありえますね。

勝てば2倍、負ければゲームオーバーですが、あいこだとそのどちらもありません、掛け金を全額お返しいたします!

━━では! じゃーん、けーん‥‥』

 

 

会場中に、緊張した空気が張り詰める。

 

 

 

『ぽん!!』

 

 

 

ディスプレイに映った福沢の手が何を出しているのかを見る前に、辺りに悲鳴がとどろいた。

周囲を見渡そうとした僕の目と耳を、秋葉がふさいだ。

けれど、ふさがれた耳の向こうからでも悲鳴は聞こえてきて、凄く怖かった。

 

 

 

『えー、勝者は‥‥わずか6名ですか、6名の方々、素晴らしい! おめでとうございます!

残念ながら負けた方は‥‥11名ですね、これで脱落者は12人になりました、残りは88人!!』

 

 

 

勝ったのが6人で負けたのが11人だと、合計で17人になる。

参加者は21人だったから、21ひく17で、4人があいこになったという計算だ。

僕には、100人の中の21人、5人に1人がコレに参加した理由がわからなかった。

死ぬかもしれないのに、どうして。

その心の中の質問に答えるように、秋葉が口を開いた。

 

 

 

「今のに参加した奴らは、誰もがこのルールに疑問があったんだな。

さっき死んだ男はさくらなんじゃないか、これはただのジョークなんじゃないかって。

━━そして、今回ので現実を思い知るのさ」

 

 

 

さくらとか、よく判らなかったけど、とにかくこれで、みんながこのルールが真実であると信じたらしい。

 

 

 

『さて‥‥最後にひとつ。

このボーナスゲームは、1時間の間に勝負が起こったとは換算されません。

すなわち‥‥あと32分の間に勝負が行われなければ、皆さんボーナスに強制参加となります、お気をつけて!!』

 

 

 

その言葉を最後に、福沢のディスプレイは切れて、会場に電気が戻った。

そしてようやく気付く、辺りにすごく生々しい臭いが充満していることに。

 

 

 

「ゆきちゃん、あまり周りを見るなよ‥‥負けた奴は、このゲームが終わるまでここに放置される‥‥ヘタすれば、

数日間かかって腐り始めるものもある‥‥」

 

 

 

云われなくても怖くて見られなかったけど、僕は頷いた。

そして、32分が過ぎた。

 

 

 

『さー、時間です!

皆さん覚悟はできましたか〜?

1時間ごとに私と勝負するのと、皆さん同士で戦うのでは、私と勝負するほうがいくらかマシですねー。

しかし、そんな人生甘くありません!

人数が70人を切ると、このルールは消滅します!

1時間経っても誰一人として勝負しなければ、皆さんその場でゲームオーバー、勝者なしです!

そのことをよく考えて、今後行動してくださいね?

では、強制ボーナスチャーンス!!』

 

 

 

秋葉は苦しそうな表情を浮かべたまま、僕を見た。

 

 

 

「ゆきちゃん、じゃんけんは時の運だとおれも思う‥‥アドバイスできなくて残念だが、自分の思ったものを出せ。

おれが出すものを教えても、もしふたりとも死んだらゆきちゃんに詫びることができない」

 

「‥‥うん」

 

『さて、ではヒントを出しましょう!!』

 

「あともうひとつだけ」

 

 

 

秋葉が僕を見る。

 

 

 

「他人を、信じるな」

 

 

『わたしは、パーを出します! ですから、私に負けたら窒息死するでしょう!!』

 

『はーい、では、せーの!!』

 

『じゃーん、けーん‥‥』

 

『ぽーん!!!!』

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

窒息死した人は、24人だったそうだ。

生き残ったのは64人‥‥強制ボーナスルールも消滅した。

僕は、秋葉に抱きついて、泣いた。

 

 

 

僕は秋葉と離れたくなかったけど、秋葉はちょっとしたいことがあるから、と云って、強制ボーナスのじゃんけんをしてから

すぐに、遠くに歩いていった。

 

 

あのとき、僕と秋葉は同じチョキを出して、福沢は予告どおりパーを出した。

秋葉は驚いた様子で僕を見ると、他人を信じるなと云ったのに、と苦笑した。

けれど僕は、秋葉がそれを云う前に、福沢が予告する前に、正確にはゲームが始まってすぐ、チョキを出そうと決めていた。

最初の対決で生き残ったお姉さんの手が、ピースしたまま凍ったように動かなかったのを見ていたから。

 

だから、秋葉が僕と同じものを出して、凄く嬉しかった。

生き残れたことを喜んだのは、それからちょっと経ってからだった。

 

 

僕は一人で取り残されて、不安だった。

結局あれから誰一人として勝負をしない‥‥と思っていたけど、どうやらそうじゃないらしかった。

既に強制ボーナスが終わってから、3人負けている。

ということは、3人勝ったということで、現在の残りは61人だということだ。

そして、その勝った3人のうちには、最初のじゃんけんで生き残った、お姉さんがいた。

そのお姉さんの肩を抱いていた男の人は、お姉さんに負けた。

 

 

体育座りで秋葉を待っていると、辺りが翳った。

顔を上げると、最初に見た女子大生のお姉さんが優しげな笑みをこぼしながら、膝を折って僕を覗き込んでいた。

 

 

 

「ぼく、ひとり?」

 

「‥‥」

 

 

 

僕が何も反応しないでいると、お姉さんは小さく笑って、僕の隣に腰掛けた。

 

 

 

「こんな小さいのに‥‥さっきのみんなでのじゃんけん、勝ったんだ。すごいね」

 

「‥‥」

 

「あたしはパーであいこだったんだけど‥‥ぼくは?」

 

「‥‥ちょき」

 

「ああ、勝ったんだ‥‥そっか‥‥凄いね」

 

 

 

ふうん、とお姉さんは頷く。

そして僕は、そのお姉さんを一瞬だけ盗み見て、すぐ目を離した。

 

 

 

「あたしね、ぼくを見て、思ったの。こんな間違ったことないじゃないかって思ってたんだけど、そうとも限らないって」

 

「‥‥?」

 

「こんなのに巻き込まれて、意味不明なのに周りの人が‥‥死んで、いって‥‥おかしくなりそうだった。

だけど、ぼくみたいな純粋なまなざしの子だけは、こんなところで死なせちゃいけないんだなって」

 

遠くを見るような表情で、お姉さんは続ける。

 

 

「だから‥‥あたしと、じゃんけんしない?」

 

「やだ」

 

「違うの‥‥ほら、あたし、まだ一回も勝ってないから、お金はないけど‥‥それでも、ぼくが生き残るために役に立てるなら、それでいいと思ってる」

 

「どうして? 死にたくないのに?」

 

「そりゃそうだけど‥‥あたしね、実は、自殺しようと思ってたのよ」

 

 

 

その、あまりに唐突な言葉に、どきっとした。

 

 

 

「ビルの屋上に立ってて、下見ると、風が上ってくるのよ‥‥降りれるものなら降りてみろ、って。

あたし、なんか、もうどうでもいいやって思って、飛び降りた」

 

 

 

 

その光景が目に浮かぶようだった。

お姉さんの瞳には、先ほどからずっと涙が溜まっている。

 

 

 

「けどね、気付いたら、ここにいた」

 

「生きてたの」

 

「そう。‥‥きっと、あたしみたいに死んでもいいような人間を集めたんだと思うな‥‥この‥‥ゲーム、は」

 

 

 

ゲーム、ととても云い辛そうにつぶやくお姉さんを見て、僕は思った。

 

 

 

「ぼく、死にたくないよ」

 

「だからよ」

 

 

 

お姉さんは僕に飛びつくように顔を近づけた。

 

 

 

「このゲームはきっと、あたしみたいな死にぞこないの中に、ほんのちょっとだけ、もしかしたらひとりだけ、

ぼくみたいに、この先を生きなきゃいけない人が混ざってるんだと思うんだ」

 

「‥‥そうなの?」

 

「でなきゃ、こんなくだらないゲームに、あたしとぼくがいっしょにいると思う?」

 

「わからない」

 

「きっとそうなの‥‥そしてこれは、この先ずっと生き続けるべき人が、その試練として授かった舞台なんだと思う」

 

「‥‥わからないよ」

 

「大丈夫、今はまだ判らなくても‥‥ただ、ぼくは、生きなきゃいけない。ママやパパにも会いたいでしょ?」

 

 

 

それを云われた瞬間、秋葉に会ってから忘れかけていた両親や兄弟、家族の姿が脳裏に蘇り、涙があふれた。

お姉さんは僕を優しく包み込むと、その胸に抱いて背中を叩いてくれた。

細くて、小さくて、少し冷たい彼女の手が、僕の顔をなでる。

 

 

 

「あいたい‥‥おとうさん、おかあさん‥‥おにいちゃん」

 

「お兄ちゃんもいるんだ‥‥どんな人?」

 

「おねえちゃんと同じくらいの年だよ」

 

「あたしと‥‥? そっか、大きなお兄ちゃんだね、お兄ちゃんのこと、好き?」

 

「うん。‥‥ときどきいじめるけど、いつもはやさしい」

 

「ふふ‥‥いじめるのも、ぼくが好きだからだよ、きっと」

 

「そうなの?」

 

「そう。可愛い弟なんだもの」

 

「‥‥」

 

 

 

お姉さんは僕の頭をなでると、耳元でささやいてきた。

 

 

 

「じゃんけん、しようか」

 

「‥‥でも」

 

「だいじょうぶ‥‥あたしは、グーを出すわ。殴られたり刺されたりはイヤだけど、首を絞められるのはまだマシ。

自殺しようと思ったとき、首吊りも考えたのよ」

 

 

 

僕が震えると、お姉さんはくすっと笑って僕を見た。

 

 

 

「ごめん、怖がらせちゃったね‥‥でも、ほんと。実はね、あたしにも弟がいるの。ちょうどぼくくらいの」

 

「‥‥ほんとう?」

 

「うん。とっても可愛くてね‥‥ぼくのお兄ちゃんがぼくを可愛がる気持ちが、凄くわかるのよ」

 

 

 

僕を連れて、デパートのレストランに入っていく兄の姿が思い浮かぶ。

目を輝かせて、お子様ランチ以外のものを頼めることに満悦だった僕を眺める兄の柔和な表情。

僕はこの年になってもお子様ランチ以外は頼ませてもらえなくて、

兄とふたりでレストランに行ったときだけそれができたから、兄が大好きだった。

この時間が大好きだった。

そして、僕がお人形売り場に兄を引っ張り込んで、恥ずかしそうにする兄の横顔。

以前、僕と一緒に行ったそこでたまたま学校の同級生に逢ったらしくて、凄く赤くなっていた。

 

両親共にいないことも多かったから、兄は僕の総てだった。

高校生は勉強で忙しいと聞いていたけど、兄がそれで忙しそうなところはあまり見ていなかった。

だからかどうか判らないけど、兄が両親にこっぴどく叱られているのを見て、悲しくなって母に泣きついたこともあった。

 

おにいちゃんを怒らないで、わるいのはゆきなの、と。

 

 

 

「もし生きて帰れたら、あたしの弟にも会えるかもね」

 

 

 

そのときはよろしく、とお姉さんが微笑んだ。

その瞬間、お姉さんが兄の笑顔と重なる。

涙が止まらなくなった。

 

 

 

「いやだ! おねえさん、死ぬのは、だめ!」

 

「‥‥ありがと」

 

 

 

僕の頭をゆっくりとなでるお姉さんの手が、少しだけ震えている気がした。

 

 

 

「でも、いいのよ‥‥ぼくにも、あたしと同じくらいは生きて欲しいな、せめて‥‥」

 

 

 

兄の言葉に聞こえた。

兄の声に聞こえた。

大好きだと、思った。

 

 

 

「いや!」

 

「大丈夫」

 

 

 

お姉さんはぽん、と最後に僕の頭を軽く叩くと、目尻をぬぐって立ち上がった。

そして、ジャッジメンのほうに向き直る。

 

 

 

「やります」

 

「双方合意の上が基本だ」

 

 

 

ジャッジメンの低い声がする。

お姉さんは、再び僕と同じ目線の高さに膝を折ると、僕の肩を抱いた。

 

 

 

「いいよね?」

 

「‥‥」

 

「ね?」

 

「‥‥ん」

 

 

 

念を押すようなお姉さんの表情と声に、思わず頷く。

そして次の瞬間、僕とお姉さんを中心としてスポットライトが炊かれた。

遠くでたくさんの雑音がする━━僕らを囲んでいる人だかりも、涙の向こうに見える。

 

ジャッジメンの声が辺りに響いた。

 

 

 

「ナンバー14、所持金20万!!」

 

 

 

後ろから声がした、どうやら僕のことらしい。

お姉さんを見上げる、彼女は女神のような微笑をたたえたままだ。

僕は心の底から、お姉さんに感謝した。

 

 

 

「ナンバー82、所持金40万!!」

 

 

 

ふと気付いて顔を上げる、まぶしい光の向こう、人だかりの更に向こうから、どこかで見た男の人がこっちに走ってくるのを見た。

なにかとても焦っているようだ。

そして僕はその顔をみたとたんに、最初にお姉さんが見せた笑顔を思い出した。

 

 

 

「尋常に、勝負!」

 

「じゃーん、けーん」

 

 

 

ジャッジメンの合図のすぐ後に、お姉さんがコールを始めた。

そして僕は、お姉さんが、グーを出すと云った事を、思い出した。

 

 

 

「ぽん!!」

 

 

 

僕の手は石を示していた。

そして一瞬の間があってから、

ごんっ、

という大きく鈍い音が頭に直接響いたような気がした。

 

 

 

「勝者、ナンバー14! 獲得合計60万!!!」

 

 

 

僕の顔に、生暖かい液体が飛び散っていた。

目を開けると、僕の足元に、後頭部に大きな穴を開けた人間がうつ伏せに眠っていた。

 

 

 

 

 

 

「よくがんばったな」

 

 

 

泣きじゃくる僕を、秋葉が抱きしめる。

あの後、何人かが僕と勝負をしたいというようなことを云ってきたらしいが、僕が泣き続けていることと、

秋葉が睨みをきかせていたことで、誰とも勝負をすることはなかった。

 

 

 

「ほんとによくがんばった」

 

 

 

秋葉の大きくごつごつした手が、心地よかった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

お腹が空けば、手にしているお金で食事ができる。

パン1枚5000円とかオレンジジュース1杯3000円とかとんでもない値段だが、

電子マネーに変換された小切手で何でも買える。

僕は、お姉さんから貰ったたくさんのお金で、秋葉の分もビーフシチューを買ってきた。

秋葉は目を丸くしたけど、僕を見るとありがとうと笑った。

遠慮されるより、貰ってくれるほうが嬉しいということを始めて知った。

 

 

秋葉は、シチューのお礼だと云って、僕に少しだけお酒を飲ませてくれた。

僕がせがんだからだが、ほんのひとくちの半分飲んだだけで、気持ち悪くなって眠ってしまった。

そんな僕を秋葉は笑ったけど、それすら気分が良かった。

 

 

ちなみに、これらのお金は総てが終わった後に請求されるらしい。

だから、結果的に1億円以上儲けた人間が払うわけだから、はした金には違いない。

とりあえず、今は、手持ちの金額分だけものがもらえるというシステムであることを知っていればいいだけだった。

 

 

人数が50人を切ると、30分ごとだったボーナスゲームがいきなり3時間ごとになって、みんなぴりぴりしなくなった。

けど、全員ゲームオーバーの制限時間は24時間に延びたのに、未だに1時間に2人くらい被害者が出る。

これでは、1日経つ前に全員が死んでしまう。

 

 

そして、人数が44人になったころ。

 

 

 

『ナンバー57、所持金720万!』

 

『ナンバー30、所持金450万!』

 

 

 

はじめて、1000万円の獲得者が出る試合が行われた。

ナンバー57は、最初の試合で生き残った、あの女の人だ。

もう一人のほうも、かなり修羅場をくぐっているらしく、戦いに迷いがない。

いまさら云う必要がないくらい、ここは狂っていた。

 

 

 

『ぽん!!』

 

 

 

ナンバー30と紹介されたほうの男の人が、首筋にはさみを刺され、ぴゅうぴゅう血を噴き出しながら倒れた。

勝ったほうの女性は、拳を高々と上げてガッツポーズをしている。

秋葉は苦虫を噛み潰したような顔で毒づいた。

 

 

 

「もう人間じゃねえ」

 

 

 

勝った女性の勝ち名乗りがされる。

 

 

 

『勝者、ナンバー57! 獲得合計1170万!!』

 

 

 

会場全体がどよめいたような気がするほど、凄まじい音がした。

 

 

 

『さあ! ついに! ついに! 獲得金額1000万円を超えるひとが現れました!

ナンバー57、なんと女性です!』

 

 

 

福沢の気合の入った声にあわせて、57番の女性が手を挙げる。

まるで水泳世界選手権の決勝のようだ。

 

 

 

『では、聞きましょうナンバー57、ドロップアウトしますか?』

 

「‥‥」

 

 

 

辺りが静まり返る。

なにせ、ドロップアウトにチャレンジすると、それに勝つだけでこの場から逃げることができる。

誰が見ても、魅力的な選択に思えた。

 

 

 

半日前の彼らにとっては。

 

 

 

「続けます」

 

 

 

女性ははっきりと、そう云った。

僕と秋葉は、僕はポッキーを、秋葉はタバコを取り落としそうになったけど、他の人たちは物凄く盛り上がっていた。

「よく云った!」とか「それでこそ強運の女神!」とか、よく判らない言葉が飛び交っている。

福沢も、それに呼応して叫ぶように云う。

 

 

 

『素晴らしい挑戦者です! これこそまことの勇者!!!』

 

 

 

おおおーーー!!!

 

とてつもない歓声が辺りを満たす。

57番の女性も30番の男性も、幾度かダブルアップをやってかなり儲けたみたいだから、盛り上がりもひとしおらしい。

 

 

僕の所持金は60万円のままだし、秋葉は教えてくれないけど、勝負したという話は聞かない。

43人の中で、多分僕らはダントツのビリなんだと思う。

けど、それでよかった。

誰も僕らに、見向きもしないから。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

そして、前回のダブルアップから3時間が流れ、生き残りが38人になったところで、スペシャルボーナスが始まった。

僕と秋葉は、もちろん、参加しないつもりだった。

僕は最初の強制とあのお姉さんとじゃんけんしたとき以外、全くじゃんけんしていない。

秋葉は、最初のときだけだと思う。

 

 

 

『さあ、始まりましたボーナス! 今回は少し趣向を変えて‥‥獲得金額は、なんと3倍!!!』

 

 

 

一瞬で、38人がざわめきを起こす。

 

 

 

『ですが、あまりにも高額な獲得者もいることですから━━』

 

 

 

57番のお姉さんはあれから更に儲けたらしく、今では1300万円を超えている。

 

 

 

『ランダムに選んだ4名のみの参加と致します!!』

 

 

 

再びざわめきが走る。

他のみんなが落胆している中、秋葉だけがごくっと息を呑んだ。

 

 

 

『厳正なる抽選で、4名を選択いたしましょう‥‥まず、ナンバー19!』

 

 

よっゃあああ! と、遠くのほうで声がして、立ち上がる人影を見た。

そしてそれにスポットライトが当てられる。

 

 

 

『続いて‥‥ナンバー77! なんとラッキーセブンですか、運がいいですねぇ』

 

 

 

沈黙。

僕の肩に置かれている秋葉の手が、ぎゅっと肩を握り締めた。

 

 

 

「あ、あきば?」

 

「‥‥」

 

 

 

秋葉が立ち上がると同時に、ライトが上から照らされた。

僕も巻き込まれて、まぶしくて思わず目をつぶった。

 

 

そのあと更にふたり立たされたが、僕は呼ばれなかった。

ひとりは19番のヒトと同じ男の人で、19番のヒトと仲がいいらしくにっこり笑っていた。

ナンバーは確か、8番。

もうひとりは、女性で、ナンバー42。

残った参加者の中では珍しく、顔を蒼白にしている。

秋葉はその女性を見て、つぶやいた。

 

 

 

「あの娘とは気が合いそうだな」

 

 

 

『では、いきましょう!  今回のヒントは、チョキ! わたしはチョキを出します!!』

 

 

 

今までの福沢の、ヒントと称した予告は、100パーセント正解だった。

10回くらいあっただろうか、その総てが正解だと、さすがに信じてしまいそうになる。

そこで僕は、ふと思った。

 

 

 

「あきば」

 

「ん?」

 

「ひとをしんじるな、って云ったのに、どうしてさいしょ━━」

 

「待ってな」

 

 

 

秋葉は僕の言葉をさえぎった。

そして、ほぼ同時に福沢の声がした。

 

 

 

『じゃーん、けーん‥‥』

 

 

 

僕ならグーを出す。

そう思ったとき、すでに勝負は決していた。

 

 

 

『おっと、勝ったのはひとりだけですね‥‥ナンバー42、これもまた女性。女の人、強いですね〜』

 

 

 

力が抜けたように、秋葉は座り込んだ。

その手はピースを示している。

最初に勝ち残ったあの女性と同じ手の形に、無意識のうちに戦慄した。

秋葉は僕に笑いかけて、云った。

 

 

 

「大事な勝負のときはチョキに決めてるんだ‥‥勝利のブイ、ってな」

 

「でも、かてなかった」

 

「死なないだけマシだろ」

 

 

 

司会者の男も、チョキを出していたから。

 

 

 

『あいこだったのもおひとり‥‥残りのおふたり、残念でした〜』

 

 

 

刺殺体が更に二つ増えて、ボーナスチャンスは終わった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

さっき勝ったらしい女性を、秋葉が連れてきた。

話が合うかもとは云っていたけど、本気で連れてくるとは思っていなかった。

 

 

「は、はじめまして」

 

 

そのひとは、遠慮がちにそう挨拶した。

 

 

「ま、そう硬くならずに。座れすわれ」

 

 

秋葉がそう云って、女性を落ち着かせるように肩を抱いた。

僕は、なんだか複雑な気分がして、ジュースを貰ってくるとその場を後にした。

 

 

よく判らない。

なんなのだろう、この気持ち。

不思議な、なんとなく気分の悪い、しかも対象は、なぜか秋葉とあの女性。

秋葉はともかく、あの女性が僕に何をしたわけでもないし、もちろん秋葉が僕に嫌なことをしたわけじゃない。

なのに、秋葉に嫌なことをされたような、そんな感覚がするのだ。

おかしくなったのだろうか、僕は。

 

 

ジュースを三つかかえて戻ろうとすると、目の前に知らない人が現れた。

 

 

 

「よう、嬢ちゃん。そんな大荷物抱えてどこ行くんだ?」

 

 

 

見上げる、やはり知らない顔だ、今時の若者という感じの、茶髪にピアスだ。

 

 

 

「重いだろ、持ってやるよ」

 

 

 

その男の人はそう云って笑うけど、秋葉とは全然違う。

そして秋葉を思い出して、腹が立った。

なんとなくだけど、仕返ししてやりたいと思った。

そのためには、この男の人を利用できると、何故だか思った。

 

 

 

「おもいよ」

 

「心配すんなって」

 

 

 

軽い口調で男の人はそう云って、僕からジュースのコップを三つとも取り上げた。

 

 

 

「嬢ちゃん、確かあの男と一緒にいたよな」

 

 

 

僕の顔を覗き込んで、男の人が云う。

あの男とは誰なのか、僕にとっては秋葉しか思い浮かばないけど、そのことを口に出すのもいやだった。

 

 

 

「しらない」

 

「おっ‥‥」

 

 

 

僕がぷいと横を向くと、男の人が笑うのが聞こえる。

 

 

 

「なあ、時間があるなら、ちょっと話しないか?」

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

男の人にコーラを貰って、僕はいきなり飲み干した。

ちょっとだけむせたけど、気にしなかった。

それくらい、腹が立っていた。

 

 

 

「どうしたんだ、そんなに怒って」

 

「おこってない」

 

「そうは見えないけどな」

 

「おこってないの!」

 

 

 

僕が云うと、男の人ははいはい、と苦笑する。

 

 

 

「ところで‥‥俺は船越竜矢ってんだ、嬢ちゃんは?」

 

「‥‥かたせ、ゆき」

 

「ゆき、か。いい名前だな。ゆきって呼んでいいか? 俺のことはリュウヤって呼んでくれればいい」

 

「‥‥」

 

 

 

空になったコーラのコップを眺めながら、曖昧に頷いた。

そういえば、僕のことを一言目に「嬢ちゃん」て呼んで、女だとわかってくれたのは、秋葉と二人目だ。

‥‥また秋葉が出てきた。

思い出したくないのに。

そこで、女子大生のお姉さんが僕のことをずっと男だと思っていたことを思い出す。

 

 

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「なんでぼくが女だって、わかったの?」

 

「‥‥なんだそりゃ」

 

 

 

くくく、と楽しそうに笑うリュウヤの横顔に、僕は無意識に兄を投影していた。

 

 

 

「一目でわかるさ‥‥俺の女センサーは特別だからな」

 

「おんなせんさー?」

 

「ま、簡単に云うと、可愛い女の子は逃がさないってこと」

 

「‥‥」

 

 

 

僕が首を傾げると、リュウヤはまたくくく、と笑う。

 

 

 

「ゆきは、可愛いって云われたことないのか?」

 

「あるけど‥‥」

 

「俺の云う可愛いってのは、女としてって意味だ。子供として、じゃない」

 

「‥‥?」

 

 

 

ゆきちゃん、かわいいね。

それはほとんどの場合、僕が男だと勘違いしていた人が僕の本当の性別を知って、その場を取り繕うときに云う言葉だった。

だから、かわいいという言葉にたいした意味などないと思っていた。

ただ、それを云われると女なんだなということを漠然と理解する程度のことで。

女といえばかわいいものだと思っていた。

 

 

 

「ゆき、じゃんけん強いな」

 

「え?」

 

「ほら、かなり前‥‥ってもまだ1日も経ってないが、年上の姉ちゃんとじゃんけんしたろ」

 

「‥‥」

 

 

 

頭の後ろに穴が開いて、そこから血と脳味噌が出てくる足元の肉の塊。

 

 

 

「あの女に、俺の友達もやられたんだ」

 

「‥‥やられた?」

 

「あいつ、嘘付いてたろ?」

 

 

 

頷く。

 

 

 

「じゃんけんしたことないって云ってたけど、ぼくよりお金もってたし‥‥」

 

「俺の友達も同じだった。試合開始のとき、互いの所持金を叫ばれたときに気付いたが、もう遅かった‥‥。

色仕掛けってヤツだな、あれは」

 

「いろじかけ?」

 

「オンナが使う反則技だ。それを使われると、男はどうしても勝てない」

 

「‥‥」

 

 

 

ふと、さっき秋葉が連れてきた女性のことが思い浮かんだ。

 

 

 

「そーいやよ」

 

 

 

リュウヤが続ける。

 

 

 

「ついさっきのボーナスで勝ったオンナいたろ、ナンバー‥‥42だったか」

 

「! ‥‥」

 

「俺、あいつと話したけど、なんだかヤバイよ、あれは。

云ってもゆきにゃ判らないかもしれないけど、カルト宗教のはまり方だな、きっと。

それに確か‥‥所持金が330万とか云ってたから、今回の3倍で990万か‥‥くく、ざまあねえぜ。

あと10万だけ足りねえの」

 

「10まん‥‥」

 

 

 

秋葉は一度も勝負に勝っていなかった。

ついさっきのあれのときも、あいこだった。

所持金は、最初と同じはずだった。

 

 

 

「結局いつも勝つのは女‥‥ん? どうした、ゆき?」

 

 

 

気付いたら、立ち上がっていて。

気付いたら、秋葉を探していて。

そして、遠く、遥か遠くで、スポットライトが落ちて、その中に男と女が対峙しているのを見た。

 

 

 

「!」

 

 

 

足が自然に駆け出していた。

けれどそれは、誰かの手で肩を押さえつけられたために、一歩以上進まなかった。

振り向く僕に、リュウヤが笑った。

 

 

 

「逃がしはしない」

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

正直云って、何をするのか、何をされるのか、わからなかった。

けど、Tシャツを破られて上半身がむき出しになると、何よりも先に羞恥が僕を襲った。

恥ずかしい、恥ずかしい、なんだこれ、なんだこれ、恥ずかしい。

その瞬間、僕の口から出た声は、僕の出せる音の限界を超えていた。

音域ではなくて、感情としての。

 

 

 

「いやっ!」

 

「‥‥ガキにしてはいい声だな‥‥ここで殺すのは惜しいくらいだ」

 

 

 

ゆき、牛乳好きなの?

今年のプール開きのとき、同じクラスのみほにそう聞かれたときは、何を云っているのかよく判らなかった。

けど、今なら判る。

確かに、そういう話も聞いていた。

牛乳を飲めば胸が大きくなるんだと、母が云った気がしていた。

そして、マッサージするといいよ、とみほは云っていた。

毎日お父さんにしてもらってるんだ、と、彼女が誇らしそうに云ったのを覚えている。

それが普通じゃないことを、今、ようやく、おぼろげながら理解した。

 

 

 

「くく‥‥発展途上ってやつか‥‥こういうのが一番だなぁ‥‥」

 

 

 

そう云えば、ジャッジメンはいるはずなのに、どうして助けてくれないんだろう。

涙目で辺りを見渡す僕からそれを察知したらしいリュウヤが、恐ろしげな笑みを浮かべながら云う。

 

 

 

「ジャッジメンか? 奴らはな、俺たちを見ていて、勝負するときに審判になるだけなんだよ‥他は何もしない、木偶の坊さ」

 

 

 

あの男たちに見られている。

そう思うと、余計に悲しい気分になった。

 

 

 

リュウヤは、僕の胸に口をつけてきた。

気持ち悪い、それだけなのに、リュウヤはお構い無しに、まるで赤ん坊みたいに僕の胸を吸っている。

いつしか、リュウヤの手は、僕の太ももの辺りをさすっている。

 

リュウヤの口は、僕の胸から少しずつ上がってきて、肩甲骨とか首筋の辺りを這うように動く。

ぞくぞくした。気持ち悪いんだと思った。思うようにした。

でないと、おかしくなりそうだったから。

手はゆっくりと太ももを上がって、ショートパンツの中に入ってくる。

なにこれ、なにこれ。

声を上げたかったけど、片方の手にふさがれて何もできない。

 

もうたまらない。

気持ち悪くてたまらない。

このまま抵抗しないで気を許せば、楽になれるのだと思った。

 

 

 

刹那。

僕の頭の中には、秋葉が連れてきた女性の暗い表情が満ちていた。

そうか。

あの表情は、これだったんだ。

なんという誤解をしてしまったんだろう。

あの人は、辛かったんだ。

こんな風にされて、悲しかったんだ。

だからあんな表情をしたまま、ゲームを続けていたのだろう。

 

そして。

僕は、決意した。

 

 

 

「リュウヤ」

 

 

 

声が出せない中、努めて冷静に、そうつぶやき、彼の瞳を見据える。

僕の視線に気付いた彼は僕を見ると、びくっとしたらしい。

僕が抵抗しないことに疑問を覚えたみたいだが、とりあえず口の拘束だけは外した。

 

 

 

「リュウヤ」

 

 

 

もう一度。

リュウヤは畏怖が覗ける瞳の揺れを隠しつつ、僕を睨んだ。

けれど、怖くない。

決意したんだ。

 

 

 

「リュウヤは、ぼくになにがしたいの。ぼくのからだをどうしたいの」

 

「! ‥‥見ての、通りだ」

 

「じゃんけん、しようか」

 

「なに?」

 

「ぼくはお金はないけど、ぼくのからだをお金のかわりにする」

 

「‥‥」

 

 

 

一度も口にしたことがないような言葉が、すらすらと出てくる。

なんだろう、この感覚。

総てが鋭敏で、総てが暗い、不気味な感覚。

 

 

 

「負けたら殺されるじゃねえか」

 

「だから、まけたら、ころされるかわりに、ぼくのいのちを好きにしていい」

 

「そんな勝手な」

 

 

 

『構いませんよ?』

 

 

 

目の前に、あの司会者がジャッジメンふたりに挟まれるように立っていた。

 

 

 

「司会者‥‥」

 

『福沢です。しかし、あれですな、あなたも飽きないひとだ』

 

「‥‥」

 

『えーと、ナンバー14でしたか、いいんですか、それで?』

 

「‥‥」

 

 

 

黙って頷く。

 

 

 

『この男、金持ってませんよ? ある人と同じような特別ルールで戦いましてね、自分が勝ったら、おまえの身体をよこせと。

そして、その代償に獲得金をすべてやる、そう云ったんです。で‥‥勝ちまして』

 

 

 

つまり、この男は、多分さっきのあの女性の身体を手に入れて、その代わりにお金を全部失ったということか。

男が負けたら金と男の命、男が勝ったら女性の身体‥‥どちらにせよ金は手放すつもりだったようだ。

 

 

 

「金を持ってなければ、ゲームに狙われることもないからな」

 

 

 

ルール上の最低金額である10万は手にしているものの、その他総てはあの女性に渡したらしい。

そして女性は、その代償に身体を売った。

勝負に負けたから。

 

 

 

『では、こういうことでいいですか。

ナンバー65が勝てば、ナンバー14の獲得金から身体まで総てナンバー65のもの』

 

 

 

ナンバー65‥‥リュウヤのことか。

 

 

 

『そしてナンバー14が勝てば、ナンバー65の総てはナンバー14のもの』

 

 

 

ゆっくりと頷く。

ふと視線を感じて振り向くと、秋葉と先ほどの女性が僕を見ていた。

僕は微笑む。

大丈夫、絶対に負けないから。

 

 

 

『参りましょう、じゃーん、けーん‥‥』

 

 

 

僕はまだ10歳だけど。

男の風上にも置けない、人間の最低ランクに位置するこのようなヤツにだけは、決して負けない。

そしてもう‥‥誰も、信じない。

 

 

リュウヤが背中をめった刺しにされ、散々苦しんだ後死んだ。

僕が指定した殺し方だった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

そのあと、僕は、秋葉ともその女性とも一言も交わすことなく、30人強の人の群れへと飛び込んでいった。

このゲームでは、残り人数が8人になると、『本選』と呼ばれるトーナメントに移行する。

今までのがバトルロイヤルと呼ばれる方法に対して、トーナメントはいやおうなしに戦いの場へと駆り出される。

僕は、8人の中に残った。

 

 

その頃には僕の獲得金額は4000万円を超えていて、気付けば第2位の成績だった。

第1位は、最初に生き残ったあの女性━━ナンバー57である。

その後1000万円前後の金額を所持している連中が連なって‥‥7位がナンバー42のあの女性、8位は秋葉だった。

秋葉の獲得金額を見て、驚いた。

冗談抜きで、本当に、10万円だった。

ある意味これは、勝ち続けることより難しいのかもしれない。

誰にも勝たないということは、誰とも戦わないということだから。

 

 

だから僕は、秋葉と決勝まで当たらないことを知って、複雑だった。

彼は云った、勝負は時の運だと。

とすれば、彼は、運を溜め込んでいるのだろうと思う。

運というものが溜め込めるものかどうかは当人によるだろうが、ともかく、そう信じているならそれは脅威だ。

真実や真理ではなく、我々現実世界の存在にとって大切なのは、いまこの場で起こる事実だけだからだ。

 

 

1回戦目に勝利して、金額が5450万円になった。

ドロップアウトするかと聞かれたが、断った。

足元に倒れているこの人間にも、1290万円分の人間の魂が篭っている。

そして僕は、5450万円分の人間の魂を背負っているのだ。

死に対する感覚なんか麻痺してきて、それを怖がる余裕はない。

ただ、ここで終わりにしたら、ここまで戦って勝ってきた意味がなくなるような気がする。

それは犠牲になったものたちへの申し訳なさであると同時に、生きることへの渇望でもあった。

 

 

事実として、100人の人間が殺しあって今、4人にまでなった。

42番の女性は57番のあの女に容赦なく殺された。

 

 

ところで、トーナメントでは負け方も一新された。

今までのように石ころとかハサミなんて生易しいものではなく、

グーに負ければ1トンの岩石に押しつぶされ、

チョキに負ければ両手首と頭をギロチンにかけられ、

パーに負ければプレス機にはさまれて紙のように薄っぺらくなる。

そしてこれらの処刑を、我々や本選になっていきなり現れた観客達に生放映する。

その観客達の歓声や悲鳴は、もはや僕にとって、気分を高揚させるスパイスにしかならなかった。

 

 

僕は決勝へとこまを進めた。

相手は、この試合で決まる。

ナンバー57と秋葉だ。

 

 

ナンバー57の金額は、すでに1億を突破した。

凄まじい量の怨念をかっているような気がして、その鬼気迫る表情に背筋が寒くなる。

だが、それと対峙した秋葉の至極冷静な立ち姿に、その数倍の恐怖を感じた。

 

 

秋葉の賞金は、2回の勝利で3000万近くになっているが、言葉どおり桁違いだ。

持っている金額も、殺した相手の数も。

それに秋葉は、じゃんけんするたびに、凄く苦そうな、辛そうなカオをする。

死にたくないなら浮かぶはずの恐怖や悲しみは、一切表れていない。

不思議だった、何故そこまで相手を悼むのか。

そんなにイヤなら辞退すればいいのに‥‥辞退すれば不戦敗ということでプレス機にかけられることになるが。

結局は、自分が大切なのか。

 

 

 

『では、準決勝を始めましょうーー!!』

 

 

 

観客がヒートアップする。

 

 

 

『今大会の本命といわれるナンバー57! 獲得金額14820万円! 31回の勝利は大会記録です!

凄いですね、ひとりで全参加者の1/3を殺してしまうとは! 驚きです!!』

 

 

 

続いて、秋葉の紹介をする。

 

 

 

『対するは、台風の目玉ナンバー77ラッキーセブン! 倒した数は僅かに2人に過ぎないその幸運はどこからくるのか!?

獲得金額、合計2840万円!!』

 

 

 

さあ、始めましょう。

司会者がそう告げる直前、ナンバー57が右手を高々と上げた。

そこには、ぎゅっと握られた拳が掲げられている。

 

 

観客が再び熱狂する。

予告のつもりなのだろう。

 

 

そういえば。

ふと、思った。

あのときの質問の、答えを聞いていないな、と。

 

 

 

(ひとをしんじるな、って云ったのに、どうしてさいしょ━━)

 

 

 

信じたのか。

 

 

未だに判らない。

何故だろう。

ともかく試合を見守ろうとした僕が目線を上げると、秋葉はナンバー57と同じように、手を掲げた。

そこには、チョキのしるし。

 

 

 

(大事な勝負のときはチョキに決めてるんだ‥‥勝利のブイ、ってな)

 

 

 

大事な勝負。

これに勝てても、僕がいるのに。

これに勝てなきゃ、僕とは戦えないから?

 

僕のそんな重いとは裏腹に、会場は大きな盛り上がりを見せた。

なにしろ、グーを掲げたナンバー57に対し、後攻の秋葉はわざわざ、それに負けるチョキを掲げたのだから。

 

 

 

『さー、面白くなってきました!』

 

 

 

他人を信じるな。

そう、秋葉は云った。

だったら、他人を信じないあんたは、いったいどうするんだ。

 

 

『じゃーん』

 

 

 

聞きなれた声の中、僕の心臓は聞きなれない鼓動を放っていた。

 

 

 

『けーん』

 

 

 

秋葉に勝って欲しいとか、負けて欲しいとかではなくて、唯純粋に。

 

 

 

『ぽーん!!』

 

 

 

歓声が僕の脳を包む。

次の瞬間、リングから一方の姿が消えた。

滑り台状の落とし穴に落とされて、死刑台へと向かったのだろう。

 

チョキを出して、ヤツは負けた。

そして僕は、グーを出して勝った秋葉と、決勝を迎えた。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

「わからない」

 

「?」

 

 

 

向き合う僕ら、僕はつぶやいた。

秋葉が首を傾げる。

 

 

 

「なにがさ?」

 

「ようやくわかった気がするよ‥‥あきばがたたかわなかった理由。でも、やっぱりわからない」

 

「‥‥」

 

「ぼくは‥‥ぼくはね、あきば」

 

 

 

秋葉は突然、僕に対してピースした。

‥‥いや、示したのだ、予告を。

掲げたのだ。

 

 

 

「あきば‥‥」

 

「大事な勝負のときは、チョキって決めてるんだよ」

 

 

 

そのカオが、久々に笑うのを、見た。

 

 

 

「‥‥だって、さっきは‥‥」

 

「さっきは大事な勝負じゃなかった‥‥本番を前に、手の内を見せるのはいいことじゃないからな」

 

「‥‥」

 

 

 

気付かぬうちに、僕は笑っていた。

多分、僕が一度もしたことがないような微笑みだった。

 

 

 

「他人を信じたら、負けだぜ」

 

 

 

秋葉が云う。

 

 

 

「でも、ひとをしんじられなくなったら、おわりだよ」

 

 

 

僕は云う。

 

 

 

「人間は、他人と競って生きてるんだぞ」

 

 

 

秋葉は云う。

 

 

 

「けど、やっぱりひとりじゃ生きていけない」

 

 

 

僕が云う。

 

 

 

「死は、負けだ」

 

 

 

秋葉が。

 

 

 

「それでも、死は、おわりじゃない」

 

 

 

 

僕は。

 

 

 

 

「いなくなれば、生きてた意味すらない」

 

 

 

秋葉。

 

 

 

「ぼくが、みんなの生きてたしょうこになる」

 

 

 

僕。

 

 

 

「そしてぼくも、ぼくがそうされたように、どこかのだれかのために死んでいく。

おわらないんだ‥‥死んでも。どこかに、だれかが、生きていれば」

 

 

 

「そのために死ぬ気になるのか、おまえは?」

 

 

 

「とりあえず、ぼくのために死んでいったひとたちのぶんはね」

 

 

 

じゃんけんをコールする声がする。

僕は、迷わない。

この選択が、必ずどこかに繋がっていると思うから。

 

そのために僕は、拳を高く突き上げた。

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 

参加者 100名

最終支出賞金総額  ¥176600000

 

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※