ケロQ『モエかん』より

小ネタ集

 

 

 

 

 

-----リニア-----

 

 

「あれ‥‥」

 

リニアは貴広の胸ポケットに手を触れる。

 

「ポッケがふくらんでますね‥‥これ‥‥なんですか?」

 

「ああ‥‥これな‥‥」

 

貴広は胸のポケットから懐中時計を取り出す。

 

「この、機械は‥‥なんですか?」

 

「ああ、時計だ」

 

「時計ですか‥‥この子が‥‥」

 

「ああ、隷が渡してくれたんだ‥‥、俺の忘れ物だって‥‥」

 

「隷さんが‥‥」

 

リニアはやさしく、手で触れてみる。

 

「すごく‥‥古いですね‥‥ずっと、ずっと前からあるのですか‥‥?」

 

「ああ、俺が生まれる前より、お前が生まれる前より、ずっと、ずっと昔からある時計だろうな‥‥」

 

「この子、昔は時を刻んでいたのですか‥‥」

 

「ああ‥‥こんな形だが、時計だからな‥‥昔は時を刻んでいた‥‥」

 

「もう、動かないのですか‥‥」

 

「ああ、動かない‥‥、たぶん永久に‥‥」

 

「‥‥」

 

リニアはその時計に頬をつけてみる。

 

「‥‥そんな事ありませんよ‥‥この子、動きますよ‥‥」

 

「‥‥」

 

リニアは貴広を見つめる。

 

「えへへへ‥‥、なんとなくなんですけどね‥‥」

 

「なんでそう思う?」

 

「時計は、みんなの時間を一緒にするために世界にあるのですよ‥‥」

 

「なんだそりゃ?」

 

「リニア、貴広さんが持ってきてくれた詩集を読んでいたんです。おじいさんの時計っていう‥‥」

 

 

My grandfather's clock was too large

 

So it stood ninety year on the floor

 

It was taller by half than the old man himself

 

Thought it weighed not a pennyweight more

 

It was bought on the morn of the day

 

And was always his treasure and pride.

 

But it stopp'd short, Never to go again,

 

When the old man died.

 

 

「‥‥おまえ平井堅のファンだったのか」

 

「今更そのツッコミはどうかと思うのですよ‥‥」

 

 

 

 

 

-----霧島-----

 

 

「‥‥さてと」

 

「そろそろ‥‥お昼でちゅね‥‥」

 

「ああ‥‥そろそろな‥‥」

 

「所長‥‥これ‥‥」

 

「ん? これ‥‥」

 

「そうでちゅ‥‥社員食堂でもっとも人気のあるドラムの食券でちゅ」

 

ドラムとは萌えっ娘島の社員食堂でもっとも人気がある伝説のメニューである。

700円という低コストでありながら、

ハンバーグとチキンソテーと粗挽きウインナー2本が一皿にのせられたボリューム満点な定食である。

 

「この食券は昼一に食堂に行かなければ食べられないもの‥‥その券を二枚も‥‥」

 

「食券を食べる気でちゅか?」

 

「言葉のアヤだよ‥‥しかしお前も俺も説明台詞だなあ。霧島のなんかあからさまに恩着せがましいし」

 

「そうでもしないと判らないじゃないでちゅか!」

 

「誰に」

 

「‥‥」

 

 

 

 

 

-----かずさ-----

 

 

「かずさ‥‥どうしたこんなところで?」

 

貴広の声に、かずさは窓をしめてこちらを向いた。

髪の毛を下ろしているので、いつもと違った印象を受けた。

 

「おや? 旦那、まだ仕事だったの?」

 

「まあな。いまやっと終わったところだ」

 

「ご苦労様」

 

「で、かずさはここでなにしてるんだ?」

 

「ちょっと、月のエネルギーを取り込んでたのよ」

 

「月のエネルギー?」

 

「そ、月光浴ってやつ。陰の気を取り入れてるの」

 

「ふーん、どこかで聞いたことがあるな、太陽は陽の象徴で月が陰の象徴ってやつか。女性は陰の気だったかな?」

 

「そう。‥‥ブルーツ波のエネルギーが17000000ゼノを超えるとね、大猿に」

 

「おまえ化け猫じゃねぇか」

 

 

 






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