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Original Novel



The promised world


第一話 闇夜の狙撃手(スナイパー)

by 鳴海優





「さて、エル、準備はいいか?」
 押し殺した声で俺は、隣の少女に問う。
 少女は無言で頷き返した。
 それを確認してから、俺は双眼鏡に目を当てた。
 視線の先は路地を挟んで向かい側のホテル。この街でも一、二を争うほど高級なホテルだ。
 そのホテルの一室に俺の双眼鏡は向けられている。
 カーテン越しに人影がうかがえる。
 俺の隣ではエルがその部屋の窓へとライフル銃を構えている。ドイツ軍制式のライフルを狙撃用に転用したものだ。ライフルの中でも相当ポピュラーな部類に入るものだろう。
 カーテン映る人影は、本でも読んでいるのか一定の姿勢のままほとんど動かない。
 好都合だ。
 エルに目配せをし、彼女にも見えるように指を三本立てた。
   三・・・
   二・・・
   一・・・
「よし」
 俺の声に続いて、カシュというくぐもった音。そして、カランと空薬莢の落ちる澄んだ音が響いた。
 カーテンに映っていた人影がゆっくりと倒れる。
 よし、成功だ。
「エル、片付けを急げ。逃げるぞ」
 俺が言うまでもなく、エルは片付けにかかっていた。
 俺も空薬莢を回収し、辺りを確認する。・・・証拠になりそうなものは何も残っていない。
 分解したライフルをケースに詰め込んでいるエルを横目に、ターゲットがいた部屋の様子をうかがう。騒がしい様子はない。情報どおり、ターゲットは一人だけだったようだ。
「ディー、片付け、終わりました」
「よし、行くぞ」
 そう言って、俺達は狙撃に使った廃ビルを後にした。
 ふっと、空を見上げれば、星のない夜空が広がっていた。

第一話 終





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