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Original Novel



The promised world


第四話 穏やかな日

by 鳴海優





  チュン、チュチュン
 小鳥のさえずりで目が覚めた。カーテンの隙間から差し込む朝の日差しが眩しい。どこか詩的な朝の光景。
「…ん、んん〜」
 少し詩人の気分を味わい、私は体を起こした。
 どうせ、ディーはまだ起きていないだろう。ディーは朝が弱かった。低血圧らしい。
 私は立ち上がると、ベッドの側の窓を開けた。深呼吸して、朝の爽やかな空気で肺の中を満たす。
窓から外を眺める。ここは二階建てアパートの二階だから、通りを行く人々がよく見える。まだ、朝も早いせいか、人影は少ない。代わりに猫の姿がちらほらしている。なぜか、この街には野良猫が多い。と、言っても他の街を知らないので、本当に多いのかは知らないが。
さて、朝ごはんの準備でもしようか。
 台所へ行き、トーストを焼き、焼きあがる間にいくつか野菜を使ってサラダを作った。
 一段落終えた辺りで、玄関のドアをカリ、カリとこする音に気付いた。
「今日も同じ時間ですね」
 ミルクを底の浅い皿に注ぎ、玄関まで持っていく。
 玄関のドアを開けると、一匹に黒猫が待っていた。私はその猫の前にミルクを注いだ皿を置いてやる。
「おはよう、ユーン。さぁ、どうぞ」
 私が促すと、ユーンはミルクを飲み始めた。ユーンはこの辺りに住み着いている野良猫で、私が何度かエサをあげているうちに毎朝ここへ来るようになった。ディーにそのことを話すと、やれやれといった感じで笑っていた。
 やがて、自分のミルクを飲み終えたユーンは、ニャンと鳴き声を残し、またどこかへと去って行った。今日も街のどこかをのんびりと散歩するのだろう。
 穏やかな日。
 やさしくて、やわらかな日差し。
 だけど、私の胸はなぜかチクリと痛んだ。

第四話 終




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