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Original Novel



The promised world


第五話 変わるということ

by 鳴海優





 昼時になって俺はようやく目を覚ました。
 起き上がり、リビングまで行くとすでに昼食が準備されていた。
「エルが作ったのか?」
「はい」
 エルはどこかうれしそうに答える。彼女も変わったものだ、そう思う。
 ここに来た当初は、笑顔を見せるようなことはまずなかった。それが、今では表情も大分やわらかくなり、口調にも多少の親しみが感じられるようになった。
 料理もエルが教えてくれ、というので教えてやったところ、パスタなどの簡単なものは作れるようになっていた。
「ん、このパスタ、なかなかうまいな」
「トマトとバジリコって相性がいいんですよ。だから、トマトとバジリコだけでシンプルに作ってみたんですけど、思ってた以上に美味しいですね」
 そう言って、エルも美味しそうにパスタを食べる。
 彼女は確実に変わってきている。
 それが、いい変化なのか悪い変化なのか俺には分からない。
ただ、変わらないということは、その場に留まったままということで、変わるということは何かに向かって歩んでいるということだ。
 彼女は歩んでいる。
 俺はどうだろう?
 その場で佇んだままなのだろうか?
 それとも何かを目指して歩いているのだろうか?
 自分のことを分かっている奴なんてどこにもいない、何かの本で読んだことだ。まさにその通りだと思う。その作者はその後にまだ、何か言葉を続けていた気がする。
 確か、こうだった気がする。
 だから人は皆、後悔する。後悔してまた後悔する。その繰り返しだ。そして、運のいい者だけが、その先の答えを知ることができる。
 救いも何もない、どうしようもない話だ。
 俺はぼんやりと昼食のパスタを口に運んだ。

第五話 終




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