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Original Novel
NODOAME Presents



歌姫に願いを


2nd



亀裂。
 ガラスを素手で殴ったように、私を中心に波紋が拡がる。鮮血を周囲を飛び散らせながら。
 世界を映す鏡。ココロ。各々の内にある、世界の認識。アナタの心。
 亀裂。
 つまり、その『少女』の終わりである。

 私。ワタシがいる。どこに?
「あなたはここにいる。それを見ているあなたがいる。でも、ひとつにはなれないの」
 ふたりの私……どっちが本物なの? 嘘は消えて。
「真実の多重化。存在の連鎖。独り言の合唱。報われない幸せ」
 あなたは……だぁれ?
 私は……だぁれ?
「最も近くにいながらにして、最も不条理な生命。実存と不実在。同一の価値を有した心とココロ」
 つまり、私。では、この亀裂は何?
「あなたと、あなたの心を包含する夢。終わらない夢」
 心がイタイの。
 気持ちワルイの。
 ……どうして?
「終わるからよ」

 真っ赤。血のように赤い。一面の赤。他には何も見えない。
 赤は嫌い。だって、痛そうだもの。
 私がいる。ふたり。私と私がいる。
 ……私、何してるの?

「終焉」
 私は、追われていた。
 何十人もの私と同じ姿をした者たちに。長く、果ての見えない廊下を、がむしゃらに私は走り抜けた。
 彼女たちは皆、『弓』を持っていた。光り輝く、『弓』……どこかでナクシタ、アナタのココロ。
「選択。全ての世界の『終わり』。『弓』の喪失。『矢』の現出」
 そして、彼女らの顔に瞳は無い。黒い空虚な空間が、眼窩の奥に広がっている。
 その奥に見えるは、無数のワタシ。精子のように踊る、小さなワタシたち。
 ……笑っている。
「クリスミスティ=キャロル。聖歌の名を冠する女よ」
 彼女たちが、一斉に『弓』を引く……空間が、弾ける。
 ワタシを貫くワタシのココロ。たくさんのココロに貫かれたワタシとココロ。
「これが、あなたのイメージ」

「それも危険な」
 私が、私の首を締めてる。足が宙に浮くぐらい、強く。強く。強く。
そのままの姿勢で、私の眼球に食らいついてる。痛い。痛い。痛い。
「……オナカスイタノ?」
 ……………………………………………………嫌。

 嫌。殺さないで。誰も殺させないで。
 私、どんな顔してる……? 私は…………

       (無表情)

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ワタシとココロとアナタとイタイ。
 つまり、その『少女』の終わりである。

《つづく》


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