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Original Novel
NODOAME Presents



歌姫


第20話余談

神の第二回弁論



 ……何をしているの?
「お人形を作ってるの」
 そう。楽しい?
「わかんない」
 分からないのに……作っているの?
「わかんないから作ってるの」
 ……変な子ね、あなた。
「ねぇ。お姉ちゃん、だれ?」
 あたし? あたしは、そうね……あなたと同じよ。
「じゃあいつも夢を見ているのね」
 そうかもね。あなたのように、覚めなくはないけれど。
「……クリスミスティは悲しそうだったよ」
 あの子には何も出来ないわ。彼女は天使でも悪魔でもない。もはや、聖女ですらない……
「かわいそうだよ」
 本当に可哀想なのはあなたの方よ。
「わたし?」
 もう一度、問うわ。
 
 ……何をしているの?
「お人形を作ってるの」
 そう。楽しい?
「……つまんない」
 じゃあ、どうしていつまでもそんなことをしているのよ。
「知ってるくせに」
 知ってるわよ。でもそれが、真実とは限らないでしょ? だから直接、あなたの口から聞きたいの。
「……ユグドラシル」
 楽園? そうね……確かにあたしたちはそこからやって来た。
「あそこは嫌なの……」
 帰りたくないのね……だから、ここにいる。違う?
「お姉ちゃんはどうなの?」
 あたしも……そうかな。あなたと同じ、逃げ出したクチね。
「だったら、わかるよね? わたしを、そっとしておいて」
 ええ。ごめんね……痛かった?
「だいじょうぶ。お姉ちゃんが、そんなつもりで言ったんじゃないってことはわかってるから」
 それは過信よ。
「お姉ちゃんが本気でそう言ってるならそうかも」
 ……ふふ。そうね。ナンセンスだったわね、こんなのは。
「お姉ちゃん、優しいの」
 よく言われるけどね。大抵はお世辞だったり皮肉だったりするわけよ。
「優しいよ。クリスミスティとおんなじくらい……」
 あいつと? ちょっと癪だけど、下って言われるよりかはマシかもね。
「……ねぇ」
 何?
「わたしからも、聞いていい?」
 
「……何をしているの?」
 世界の終わりを見に来たの。
「それって楽しい?」
 楽しいわけないわ……ただ、あいつはそこんとこ、誤解してるみたいだけれど。
「終わっちゃうんだ……ここも」
 寂しい?
「…………」
 あたしと、一緒に来る?
「……ううん、いい」
 ……クリス?
「うん」
 そう……
「ごめんね」
 いいわよ、謝らなくても。今のはノリってやつだから。気にしないで。
「でも、いつか……」
 いつか?
「いつか……みんな一緒になれたらいいね」
 それは無理よ。
「そうなの……?」
 けど……そんな世界も、悪くはないわね。
「でしょうっ?」
 ふふ……それも全部、クリス次第だけどね。
「これから……お姉ちゃんはどうするの?」
 あたし? あたしは帰るわ。やることがあるの。
「終わりは? 見ていかないの?」
 見ようと思えばどこからでも見られるわ。だってここは、あたしの世界なんだもの。
「……うらやましいな」
 やっぱり、一緒に来る?
「えへへ、ごめんねぇ」
 いい子ね、あなた。好きよ。
「ありがと」
 じゃあ、もう行くわ。
「うん。またね」
 ええ。また会いましょう……アリス=リアルライズ。
 
 
 
 同時刻。
 神の弁論は、続いていた。



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